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「私の裏庭」北海公園

 

 

島影均 1946年北海道旭川市生まれ。1971年、東京外国語大学卒業後、北海道新聞社に入社。1989年から3年半、北京駐在記者。2010年退社後、『人民中国』の日本人専門家として北京で勤務。
家の近くから路線バスに乗って小一時間で北海公園に着きます。ここを私は勝手に「私の裏庭」と決めています。中国語で言う「後花園」をちょっと拝借しました。かつて皇帝や皇后が好みに合わせて造営させた「プライベート・パーク」のことですが、今では運動好きの北京市民が近くの公園やお気に入りの公園を「私の後花園」と呼んで朝な夕なに通っていると聞き、私もそれにならいました。

北海公園は世界最古の皇室庭園で世界遺産にもなっています。遼、金、元、明、清の各王朝が約千年にわたって、憩いの場、信仰の場として来たそうです。今では、近くの故宮、景山公園とともに観光名所で特に週末の日中は、国内のお上りさん、修学旅行生の他に外国人観光客も多く、ごった返しています。「私の後花園」として最適の時間帯は、夕方です。午後十時まで開いていますから、時間はたっぷりあります。

水辺でおしゃべりに夢中の少女が二人。対岸から湖水を見守る白塔は北海公園のシンボル

最近、気に入っているのは、西門から入って、北海を右側に見ながら有名な九龍壁とか五龍亭がある方向にぶらぶら歩くルートです。昼間の喧騒が嘘のように静かなたたずまいに一変し、カップルや友だち同士など若者が圧倒的に多く、水辺で何をか語り合っています。湖水にはボートが浮かび、こちらは夕涼みの家族連れが目に着きます。

かつてご紹介した成都の望江楼公園もそうでしたが、各地の公園で車椅子の人々をしばしば見かけます。老夫が老妻を乗せて押していたり、その反対だったり。また子供か孫らしい若い人が押している光景も珍しくありません。ここでも夕方、何組もの車椅子散歩の人々に会います。

湖水の対岸は中島の瓊華島で、山頂には公園のシンボルになっているチベット式仏塔の白塔があり、どの方向から見ても変わらず静かにそびえています。晴れた日に白塔まで登ると、故宮の甍群と高層ビル群を一望できます。

のんびり歩いている脇を速歩で追い抜いて行く人たちは、健康管理、体力増進のために公園に来ている人たちでしょう。運動派は老若男女さまざまです。夫婦と思しき中年太りのカップルや息を弾ませながら巻き舌の北京語を連射している若い女性の二人組みも。中には後ろ向きに歩いたり、太極拳風の動作をしながらゆっくり歩いている人もいます。

夕方の早い時間帯ですと、5元(約60円)の渡し船が運行していますから、これに乗って約十分ほどで対岸の瓊華島に渡ります。今度も右側に湖水を眺めながら歩きます。途中にある回廊の欄干は社交場です。将棋を指している人、岡目八目を楽しんでいる人も。

永安橋を渡ると南門に出ます。ここが定番の散歩ルートの終点ですが、橋の手前の水辺にあるレストランがまた捨てがたいのです。湖水を眺められる席に座り、ぐっと飲む生ビールは格別です。仕上げは北京名物・炸醤麺(ジャージャーメン)。(朗読=光部 愛)

 

人民中国インターネット版 2011年8月

 

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