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生徒の成長を糧に粘り強く 聴覚障害者学校の教師

 

王焱=文・写真

1990年代、中国の聴覚障害者教育は急速に社会的注目度を高めるようになり、聴覚障害者のための職業高校、普通高校が登場、より多くの人が聴覚障害者教育の実践と研究に携わるようになった。

粘り強く継続する覚悟

北京啓喑実験学校は、2010年に二つの学校が合併してできた大規模な聴覚障害者教育学校だ。同校の劉瑞連党支部書記によると、毎年多くの新卒大学生が教師に応募してくるという。

「面接にあたって、私たちはその話しぶりを通して相手がどんな人なのかに注目します。一時的な熱情から応募してきたのか、それとも粘り強く続けていく覚悟があるのかを知りたいのです」という劉書記は、「一人前の聴覚障害者学校の教師を育てるには、本当に長い時間がかかるのです」と感慨深げに話す。

手話は応募の必要条件ではない。聴覚障害者教育に携わって22年のキャリアを持つ同校高校部の国語教師・盧寧先生によれば、学校で手話の訓練も行うが、「初めて授業で教壇に立つ時が、本当の手話学習の始まり」なのだという。「授業で新しい言葉が出てくると、黒板に書いて生徒に手話を教えてもらうのです」

古文の名文として知られる北宋の儒学者・周敦頤の『愛蓮説』を学ぶ生徒たち。盧先生が解説し、生徒はそれを「聞き」、手話で自分の意見を発表する 特殊教育に携わる教師は、生徒のコミュニケーション能力を高めるためにより多くの時間と精力をつぎ込む必要がある。多くの生徒は職員室より、明るく開放的なラウンジで先生と話すことを好む

普通学校以上の難しさ

盧先生によると、聴覚障害者学校の教師は、普通学校の教師をはるかに上回る仕事量をこなさなければならない。「毎回の授業では、その日の学習内容の準備だけでなく、関連知識を手話で表現できるようにしておかなければなりません。聴覚障害者教育では重要な手段となっているパソコンによるプレゼンテーションも、生徒の特殊性のため、一般の教材をそのまま使うことはできません。すべて自分で作る必要があるのです」

授業では、手を動かし、大きくよく通る声で話し、口の形もよりはっきり、標準的にしなければならない。そうすれば生徒たちの読唇の練習にもなるからだ。さらに、大きな通る声で授業を行うことは、生徒たちの発声訓練に対する刺激になり、聞こえなくても話す力を持つチャンスにつながる。「生徒たちは遅かれ早かれ社会に出ていきます。手話に頼ったコミュニケーションだけではいけないのです」と盧先生は理由を説明している。

しかし、ベテラン教師でさえ完璧な授業は難しい。盧先生は「授業中最も悩ましいのは、知っていることをもらさず生徒に伝えるのが非常に難しいことです。手話で伝えられる情報量は口で話すにはほど遠く、筆談では時間がかかってしまいます。時には、とても力を費やしたのに、多くのものが心の中に残ったままと感じることもあります」

生徒の成長が大きな活力に

いかに深く生徒たちとコミュニケーションを取れるかも、聴覚障害者学校の教師にとって重要なポイントとなる。盧先生は、他の先生の授業時間でも担任するクラスに出向き、授業中の生徒たちを観察している。昼休みには、職員室で何かを話しに来る生徒を待つ。携帯電話も生徒たちの気持ちを導く重要な道具になる。盧先生は、「放課後には、携帯のショートメッセージが生徒とのコミュニケーション手段となります。時には、一晩に6、70通のメッセージを送ることもあります」と話す。

また、「聴覚障害者はより多くを視覚に頼っています。ジェスチャーや表情によるオーバーな表現やユーモアは、たやすく生徒たちに誤解を生じさせます」という事情もあり、教師は常に身なり、動き、表情を正す必要がある。「細かな動きや表情も、生徒が先生の気持ちを推し量る手がかりになるのです」

聴覚障害者学校教師の給与は、国の政策による特別手当もあり、普通学校より25%ほど高い。しかし盧先生は、教師のモチベーションを高めているのはむしろ生徒たちの成長なのだと話す。「ある生徒は美術の分野で業績を上げました。ある生徒は大学卒業後、聴覚障害者学校の教師となりました。卒業生が社会に役立つ人に成長したことを耳にするたび、私は幸福感を味わうことができます」

 

人民中国インターネット版 2012年2月29日

 

 

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