南北の技術を融合 伝統の青磁に新風
龍泉市における文化財の全面調査によって、青磁を焼いてきた古代の窯遺跡が同市には約360カ所あることが明らかにされ、これらの青磁の歴史的な体系を伝える青磁窯を総称して「龍泉窯」と呼んでいる。龍泉窯は、中国陶磁器史上で最も古く、最も広く分布し、製品の質が最も高く、生産規模と海外販売エリアが最も大きな青磁の名窯だ。
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上鎮「曾芹記古窯坊」の龍窯は清の光緒年間(1875~1908年)に建てられ、今でも伝統工芸で磁器を焼成している |
「曾芹記古窯坊」龍窯の内部 |
歴史上、龍泉青磁はすべて龍窯で焼き上げられた。これは半連続式の製陶窯で、決まった角度の斜面を利用して築かれ、腹ばいになっている龍のような形が名前の由来になっている。龍窯は最初、戦国時代に現れ、自然の風を利用し、柴や松の枝などの植物を燃料とし、炎が窯の内部を窯床と平行して流れるようにしてある。龍窯の最も大きな利点は温度の上がり下がりが速いことだ。早く焼成できる一方、青磁の製造に必要とされる還元炎(酸素供給が不十分なために、一酸化炭素・水素などが含まれた炎)の状態を維持することもできる。それ故に、龍窯は青磁の揺りかごと呼ばれている。
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伝統工芸の龍窯で焼く場合、木材を燃料とすると、20~30時間焼き続ける必要があり、窯焼き職人は、「火照」で温度を調べ、火加減がいいと思ったら火を封じる。内部の温度が下がると、窯口を開き磁器を取り出す |
伝統的な龍窯は点火する前に、龍窯を祭る儀式を行う。窯焼き職人は窯の焚口に窯の神様を祭り、美しい磁器の焼成を祈る |
現在、時代の発展とともに、新型の焼成技術と手法が出現してきた。例えば、ガス窯、電気窯、燃料油窯などがある。しかし、従来の龍窯も依然として青磁を焼き続けている。現代化した窯に比べ、龍窯の焼成をコントロールできないことなど、不確定要素があり、焼成の過程で 炎の性質や釉薬の含有物質などが原因で予期しない釉色・釉相を呈する「窯変」を起こし、この世にふたつとない青磁ができることもあるそうだ。したがって、柴を焼く龍窯には、火加減や温度把握のノウハウがなにより大切だ。記者は宝渓村に住む窯焼き職人・金品氏(79)の龍窯を訪ね、今でも伝統的な「火照」(温度測定のための挿し具)を使って龍窯の火加減を調整していることを見た。
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中国陶磁器工藝大家の張紹斌氏(右)。親子3代が青磁に取り組んでいる |
張紹斌氏の作品『問天壺』 |
中国陶磁器芸術の大家・張紹斌氏(55)の家は渓口村にあり、この青磁の名門の家に一歩入ると、80歳近い張氏の父親が古青磁を作っている最中で、びっくりさせられたのは、彼がすでに広く使われている電動ろくろではなく、昔ながらの足で回転させる「蹴りろくろ」で胎土を引き上げていることだ。
青磁は今日まで発展を続け、人々は古代の芸術品を模倣するだけにとどまらず、多くのオリジナル工芸も産み出してきた。例えば、国家無形文化財(人間国宝)に登録された龍泉青磁の唯一の伝承者である大家の徐朝興氏の名作、国宝・哥窯産『52㌢迎賓大掛盤』がそうだ。この作品は、工芸も技術の難しさの面でも過去最高だと専門家が公認し、現在は北京の政治の中心・中南海にある紫光閣に収蔵されている。また、中国工芸美術大家の夏侯文氏は、初めて哥窯と弟窯の特徴を結びつけた新種の磁器を作り出した。中国古代陶磁器の専門家らは、「夏侯文氏は哥窯と弟窯の融合や、素焼きに絵を描き、釉薬を重ねて浮き彫り効果を出す『堆彫り』などの技法を利用し、龍泉青磁にユニークで現代的な芸術美感を与えた。これも哥窯史上の大きな成果だ」と高く評価した。
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親子3人とも大家だ。中国工芸美術大家の夏侯文氏(左)の2人の息子も青磁制作で大きな成果を挙げている。長男の夏侯輝さん(中央)は浙江省工芸美術大家で、次男の夏侯水平さん(右)は麗水市の工芸美術大家だ |
夏侯文氏の作品『双魚洗』 |
現在、龍泉青磁界には、中国工芸美術大家三人、中国陶磁器芸術大家六人と浙江省工芸美術大家14人がいる。彼らの手から、伝統を受け継ぎ、そこに新風を吹き込んだ工芸が湧き出ている。例を挙げれば、釉薬の色では赤銅色釉、高温黒色釉、虎斑色釉、粉茶色釉、烏金釉、天青釉など、また工芸としては薄地青磁、青磁玲瓏、青磁下絵付け、象形貫入、文武貫入、青白の融合、哥弟窯の融合など……数知れないほどある。
人民中国インターネット版 2012年5月