People's China
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中国の温泉、日本の温泉

島影均 1946年北海道旭川市生まれ。1971年、東京外国語大学卒業後、北海道新聞社に入社。1989年から3年半、北京駐在記者。2010年退社後、『人民中国』の日本人専門家として北京で勤務。
春節(旧正月)の連休中に、北京市内の温泉に行ってきました。中国の温泉は、海南島の三亜南田温泉などで経験していますから、「郷に入っては郷に従え」で、水着を持って出掛けました。

私が行った「順景温泉」の敷地面積は、13万平方㍍、東京ドーム2.7個分です。ギネスブックに登録されている「世界最大の室内温泉」で、同時に5000人が入浴できるというのが宣伝文句。この源泉は3500㍍まで掘って湧出させたそうで、平均温度66度、フッ素、マンガン、鉄などのミネラルが多いそうです。残念ながら懐かしい硫黄の香はありません。

中国の温泉は水着着用ですので、100%男女「混浴」です。ただ日本人の「入浴」のイメージとはまるで違いますから、「浴」という漢字を使うのはふさわしくないかも知れませんね。温泉プールに近いでしょうか。

この中で一番広いエリアでは家族連れやカップルが浮き輪やマットで楽しそうに遊んでいました。この他に、全部で95種類の浴槽(便宜的に「浴槽」とします)があるそうです。さすが漢方薬の本場ですから、各種の薬湯があり、小さな魚が古い皮膚を食べて掃除をしてくれる「ドクター・フィッシュ」の浴槽などいろいろあります。「日式」というエリアもあり、木桶の浴槽もありました。小さ目の浴槽は十人も入れば超満員です。水着を着ているとは言え、全員女性のところへはなかなか入りづらいものです。何となく女性トイレにちん入してしまった気分になりました。

温度もいろいろあります。概して、高温の温泉はすいていました。高温と表示していても私にはちょうど良いくらいですので、ゆったりつかっていると、後から来た人が足先を入れて「アチッ」と言って敬遠してくれます。

漢字で書くと日中両国語とも「温泉」ですが、実は大違い。日本の温泉地で中国人観光客はマナーを知らないといって顰蹙を買っていますが、裸になって、よく洗ってから、浴槽にそろりと入る日本流と、体は洗わず、水着でざぶんの中国流の温泉とでは本来似て非なるものなのです。

「日中辞典」、「中日辞典」で「温泉」を引くと、発音は違いますが、どちらも説明は「温泉」です。同じ漢字を使う単語は数えきれませんが、例えば「裁判員」を「中日辞典」で引くと、「スポーツ競技の審判、レフリー、アンパイア」と、説明してあります。ところが辞書では「温泉=温泉」なのです。

安徽省合肥の郊外の露天温泉。家族で春節休暇を利用して、ゆっくり温泉を楽しんでいる

百聞は一見に如かず。日本の温泉に入ったことのある中国人、中国の温泉に入ったことのある日本人は、辞書でも説明していない「温泉違い」をよく分かっています。あとは好き好きです。中国人の知人から、日本の温泉は好きだが、中国のはせわしないし、清潔でないからいやだ、という感想も良く聞きます。

私はどちらも好きです。北京の温泉では、若い夫婦と子どもがいっしょに遊び、中年夫婦が老夫婦の手を引いて、薬湯に入る微笑ましい光景を何度も見かけました。これも水着着用の効用でしょう。

 

人民中国インターネット版 2011年5月

 

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