劇場版が登場!『痞子英雄之全面開戦』
文・写真=井上俊彦
2011年には131億元の興行収入を記録するなど躍進を続ける中国映画。大作化、3D化が進む一方で、ローバジェット作品から大ヒットが生まれるなど、目が離せません。また、大都市から地方都市までシネコンの整備もこのところ急速に進んでおり、快適な映画館が増えています。そこで、実際に映画館に足を運び、北京の人たちとともに作品を楽しみ、作品に関連する話題からヒットの背景、観客の反応なども紹介していきます。
台湾テレビ発の大型刑事アクションが銀幕に
|
ポスター |
そんな中、ドラマ『流星花園』(台湾版『花より男子』)のツァイ・ユエシュン監督が2009年に大ヒットさせたテレビシリーズ『痞子英雄』(ブラック&ホワイト)を、自ら劇場映画化した大型アクション作品『痞子英雄之全面開戦』が6月19日から大陸部でも公開されました。
ストーリーは、銃撃戦に巻き込まれた新人刑事(マーク・チャオ)が、やむを得ず下っ端ヤクザ(ホアン・ボー)と行動をともにすることになり、新型爆弾をめぐる国家ぐるみの陰謀に気づいていくというものです。2人はドタバタを繰り返すうち次第に理解し合うようになり、協力して事件に立ち向かうチームになっていきます。定番のパターンではありますが、やはりワクワクする展開です。
『ハーバー・クライシス〈湾岸危機〉Black & White Episode 1』のタイトルで今年年9月8日(土)から日本でも公開されるとのことですので、ストーリーにはこれ以上触れませんが、文芸作品イメージが強い台湾映画にあって、この作品は娯楽に徹しています。設定や展開はいささか荒唐無稽ですが、まじめで無口なヒーローと、気が小さく口の達者な相棒という組み合わせで随所に笑いをふりまきながら、台湾映画とは思えないド派手な銃撃戦やカーアクションをこれでもかと見せてくれます。笑ったり緊張したり忙しく、相当に長い映画ですが、退屈する場面はまったくありませんでした。
この作品を見たのは公開初日の夜の回でしたが、若者からお年よりまで幅広い層の観客が訪れていました。大陸部でもヒットとなるか、注目していきたいと思います。
マーク・チャオの成長ぶりに驚き
この作品では、やはり主人公・呉英雄を演じるマーク・チャオに注目しました。テレビシリーズでは“相棒”がヴィック・チョウ(周渝民)でしたが、劇場版ではこのコラムでもたびたび紹介してきた人気コメディアンのホアン・ボーが務めています。イケメン2人組をでこぼこコンビに変えたことで、役割分担がよりはっきりしています。マークは新人ながらタフで、多少融通がきかないところもありますが、正義感と人情味を併せ持つ刑事を好演しています。
チケット売り場もゆったりとしている。月~水は全日40元(休日、3D作品を除く)など多くの観客サービスを実施。また、建物には喫茶店、ネットカフェ、CD・DVDショップなども入っている |
地下のホールへ向かうエスカレーター付近の壁には有名映画のシーンなどがデザインされており、気分を盛り上げてくれる。売店ではコーラ(大)が他のシネコンより2~3元安い5元で販売されているなど庶民的。 |
劇場版では時間設定をテレビシリーズの前に置いていますが、マーク自身はこちらの方がぐっと大人な感じがします。ヒーローですがスーパーマンではなく、真っ直ぐでタフですが人情味もあるキャラクターを、まるで地のように自然に演じています。彼は大陸部でも人気急上昇中ですが、このところの演技の成長には目を見張るものがあります。実は数日前に見た『第一次 First Time』という純愛映画でもangelababyと共演していましたが、こちらでは心優しい若者を感動的に演じていました。ジャンルの違う2作を続けて見て、ヴィッキー・チャオ(趙薇)初監督作品『致青春』(今年末公開予定とか)もぐっと楽しみになりました。
【データ】 痞子英雄之全面開戦 Black & White Episode I 監督:ツァイ・ユエシュン (蔡岳勳) 出演:マーク・チャオ(趙又廷)、ホアン・ボー(黄渤)、angelababy(楊穎)、テリー・クアン(關穎) 時間・ジャンル: 155分/アクション・犯罪 公開日:2012年6月19日 |
|
|
東四西大街に面した大きな牌楼が隆福寺の目印、この北側に長虹影城がある |
長虹影城は、総面積7000平方メートル、VIPホールを含め6つのホールがあり、800人収容の規模を持つ。 |
|
映画館の正面には「小吃店」(軽食店)が並び、いつもにぎわっている |
長虹影城 所在地:北京市東城区東四隆福寺街75号 電話:010-84014100 アクセス:地下鉄5号線東四駅下車、西へ徒歩4分
|
プロフィール |
1956年生まれ。法政大学社会学部卒業。テレビ情報誌勤務を経てフリーライターに。 1990年代前半から中国語圏の映画やサブカルチャーへの関心を強め、2009年より中国在住。 現在は人民中国雑誌社の日本人専門家。 |
人民中国インターネット版 2012年6月21日