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農業問題専門家 徐祥臨中央党校教授
農地流動で農業現代化を

 

沈暁寧=聞き手

昨年11月に開かれた中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)で改革の全面深化に関する任務が確立された中で、農業の分野では農地流動(中国語は農村土地流転)の奨励が提起された。これは新時代の農地改革に関する重要政策だと考えられるが、中国農業の発展、農民生活にどのような変化をもたらすのだろうか。農業問題専門家の徐祥臨中国共産党中央党校教授に見解をうかがった。

――3中全会で農地流動の扉が開かれましたが、なぜ国はこの政策の実行が必要なのでしょうか

徐祥臨氏 「農地流動」は農家に各自の農地経営権を移譲させることによって、分散している農地を集中し、農業生産の集約化、大規模化を推進しようということです。農地の流動は一つの現象として、1980年代にすでに存在していました。30年余を経て、国はこれを一つの政策として正式に打ち出しました。

改革開放の初期、農家が請け負い農地の経営権を持つ「生産高リンク請負制」が行われました。これは農民の生産意欲を高めただけでなく、農地流動の基礎を提供しました。ここ数年、都市に流入する農村の生産年齢労働力の人数が増加し、農村に残された老人、子どもでは負担が大きい農作業をやって行けず、農地利用率の低下を招いています。広東省で現地調査した際に、水田の20%が荒地になっていることを発見しました。そこは二期作、三期作が可能な水田でしたが、今ではわずかに一期作しかしていません。こうした現象は中国の他の地方でも起きています。中国は食糧需要の10%を輸入で賄っていますが、一方で、農地利用率は低いのです。そこで、農地利用率を高めるために、農地を流動させることが良い解決法なのです。

この政策をうまく運用すれば、農産物の必要量を自給自足でき、習近平主席がおっしゃる「自分の手でご飯茶碗を持つ」ことが実現できます。これは中国の食糧安保を確立し、世界の食糧危機を解決するために積極的な役割を果たすでしょう。

――それでは、農地流動政策はどのように運用すべきであり、また農民の利益にどのような影響を及ぼすのでしょうか

徐 党中央は農地流動政策の制定に当たって、法律によって、自発的に、有償で行うことを明確に規定しました。ここで言う「法律によって」というのは経営権が流動して移った後の農地は農業生産に使用されることを保証されなければならない、ということです。また「自発的」というのは、請け負っている農地を流動させるか否かは農家が自主的に決定するということで、政府と部外者はどのような方法によっても農家を無理強いできないし、多数決の原則もあり得ない、ということです。「有償」に関して言えば、流動後の農地経営者は農家に賃貸料を支払い、その賃貸料は双方が市場価格主導で、交渉で決めるということです。

多くの農民は農地流動に積極的です。少し前、私は広東省英徳市の葉屋村で、農民がみんなで相談し、分散していた農地、水田を集めて、魚を養殖し、クワを植え、果物を育てることによって、農地利用率を高めただけでなく、農家収入の増加も実現したケースにお目にかかりました。農地を集中させた結果、全村の一人当たりの年間収入はそれまでの2000元から1万5000元に増えた、と当地の人々は話していました。かつては60人以上の村民が出稼ぎに行っていましたが、今ではわずか十数人で、次第に前より多くの村民が故郷に残り、営農するようになりました。農地流動が村民に与えた直接的な利益は農業生産収入の向上だった、と言うべきでしょうね。

この他、農民は農地経営権の移譲によって、賃貸料収入を得られるようになり、農業生産から解放され、都市に行き非農業生産に従事し、収入増を図れるようにもなりました。

長期的に見ると、農地流動は農民の農業専業化を支援することができ、農民の経済収入、文化的素養、社会的地位を向上させ、都市部と農村部の間にある生活水準の格差を縮小し、社会的平等の実現を促進できます。そうなれば、「農民」という言葉は中国では身分の呼称ではなく、職業の名称になるでしょう。

――農地流動では誰が農地を集め、賃貸営農をするのでしょうか。彼らはそこから何を得るのでしょう

徐 3中全会で強調されたのは新型の農業経営主体―大規模農家、農業企業、家庭農場と合作社―の育成です。彼らは資金、技術、労働力を擁し、農家の農地経営権の賃借によって、農地利用の総合計画、規範的な管理、大規模生産を実現できます。彼らこそ将来の実質的な農業経営者であり、大型投資、大量生産を行い、市場運用モデルに照らして、利益を手に入れ、またリスクも引き受けるのです。

――農地流動に取り組む際に、他国のどのような経験が参考になりましたか。例えば、農業現代化国家としての日本モデルは中国にどのようなヒントを与えたのでしょうか

徐 日本は1961年に「農業基本法」を制定し、農地改革に着手しました。その目標は二つありました。その一つは、農民の社会的、経済的な地位向上で、これは1972年までに実現しました。もう一つが、農業生産を主たる収入源とする専業農家の育成でしたが、この目標は今日でも完全に達成できたとは言えません。目下、日本では農家の78%が非農業生産に従事して主な経済収入を得ています。こうした状況は中国とよく似ており、特に、この農業生産モデルの経験が中国台湾地区、韓国で推進され、成功したことによって、その多くの点で中国の参考になりました。

現在、中国は新型農業経営システムの構築を提起しています。その中には二つの側面が含まれています。その一つは前にお話しした、新型農業経営主体の育成です。もう一つは農業に対する社会的なサービスの提供で、この面では日本の農業協同組合(農協)制度が手本になりました。

日本各地にある農協組織は農民利益を代表し、農民に生産資材、技術指導から農産物の販売に至るまでの恐らく全方位と言って良い規範化されたサービスを提供しています。これは農民の生産活動に発生する実際的な問題の解決の助けになるばかりか、農産物の品質も保証しています。日本の農協の成功体験は中国の農業現代化実現に多大な影響をもたらしたと言えるでしょう。

ただ、日本の農業発展にも弊害があります。それは主に日本の土地私有制が農地の集中を困難にしている点に現れています。一つには日本の農家が私有地を手放したがらないことであり、もう一つは政府の土地貸出制限がかなり厳しく、賃貸料が低く抑えられていることです。これが日本での大規模農業経営の実現を妨げています。著名な農業問題専門家の金沢夏樹東大名誉教授はこの現象に対して、一貫して批判的な態度を堅持しています。

こうした状況は中国には基本的に存在しません。なぜなら、中国の農家は請け負い農地に対する経営権は持っていますが、所有権は国家と集団に帰属しているからです。そこで、中国の農家は集団的な利益の最大化を目指すという基礎の上に、協議を通じて自らの利益向上を図っています。土地集中において、中国は制度的に日本より有利な立場にあるということです。

中日両国は農業発展の面で多くの協力できる分野があり、互いに長所をもって短所を補い、共同で経営すれば、両国人民に相当な利益をもたらすでしょう。

徐祥臨氏

1957年10月、遼寧省葫蘆島市生まれ。

1983年人民大学農業経済管理学部卒。

1986年修士号を取得。中国共産党中央党校経済学教育・研究部教授、博士課程指導教官。しばしば東京大学農学部、同経済学部に赴き、農業・農村経済発展問題を研究

 

人民中国インターネット版 2014年5月

 

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