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中国のハラール(清真)菓子

 

アジア各国を旅行中にマレーシアで撮った友人との1枚(真ん中が筆者)

 

飯島典子(いいじま のりこ)

一橋大学博士課程修了。文教大学・和洋女子大非常勤講師を経て、現在広島市立大学准教授。著書に『近代客家社会の形成-「他称」と「自称」のはざまで』風響社(2007)、『江西と東南アジア-真空教と帰国華僑を中心に』『変容する華南と華人ネットワークの現在』(共著)風響社(2014)などがある。専門分野の研究以外に、まだ日本に知られていない中華菓子の地位を高めるのが夢。

 

中国滞在中の楽しみは、豪華な海山の珍味を尽くした中華料理という向きは多いだろうが中華菓子、それもスイーツ専門店の高価な菓子ではなく、ごく普通のスーパーで売っている菓子にも目を向けると、多民族国家ならではのこの国の食文化の一端が見えてくる。

スーパーで菓子(酒のつまみ)を目にしたら、是非パッケージにアラビア文字か、もしくはモスクのような「ロゴ」や「表示」がないか探してほしい。イスラムを連想させる何かが印刷されていればハラール(中国語では清真と書く、イスラム教徒が口にしてよいという)食品だ。中国のイスラム人口は2009年の時点で2167万、13億を超す人口からすればごく僅かな少数派だが、スペインのほぼ半数に匹敵する人口といえば分かり易いだろうか。

多民族・多文化国家の中国としては、イスラムの戒律を尊重することは重要な課題なのだ。清真菓子の材料の中でも当然ながらラード(豚の脂)は NGであるが、他にも鱗のない海鮮類が御法度で蝦、蟹が使えないため、エビせんべいも不可だ。

具体的な例を見ていこう。

 

 

一見、何の変哲もない小さなかぼちゃケーキのようであるが、(餅というのは円盤状の物を指すので、餅米から作る日本の「餅」とは用法が異なる)右上にモスクの絵があり、清真食品であることを示している。ラード以外の油脂を使っているということなのだろう。

次は中華菓子の定番とも呼べる沙琪瑪(サチマ)

 

 

沙琪瑪(サチマ)はいわば、かりんとうの飴絡め、つまりおこしのようなものだと言えばよいだろう。あくまで中華菓子なのだが、イスラム教徒にも配慮しているわけだ。 料理と違って菓子をハラール仕様にするには、ラードを使用しなければよいのだからさほど難しいことはない。中華あんまんの場合、小豆餡には通常ラードが入っているが、これを他の油に替えれば良いだけのことだ。筆者も北京に留学中、大学の近くにあった小吃店(軽食を扱う食堂、大概メニューにあるものはテイクアウトも出来る)で「清真」とある中華まんを買ってみたら、中にゼリー菓子のようなものが入っていた。イスラムの戒律にのっとった食材だけが使うことを許されるハラール食品などと大仰に構えなくても、東アジアの菓子はそもそも餅米や小豆が材料であることが多いのだから、中華菓子とイスラム教徒の間に存在する垣根はさほど高いものではない。

清真との関連でいえば、日本と異なるのは大都市なら大抵モスク(中国語では清真寺)がある点だ。当然ながらその周辺には清真食堂が並んでいることが多い。中国での国際空港となれば当然、清真食堂も必要なのであろう。

昨年9月13日に上海埔東空港で

 

清真食堂といっても筆者が知る限り、特に中東料理を出すわけではなく、豚(ラード)、蝦、蟹、イカ、牡蠣などの不使用を除けば、ごく普通の中華を出している所が大半で、もちろん非イスラム教徒でも利用できる。甲殻類にアレルギーを持っている方にはお薦めかもしれない。

 

人民中国インターネット版 2015年1月4日

 

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