歌に日中友好の願いを込めて
『有一个姑娘』が賞に輝き、親友たちと喜びのポーズ |
竹野俊美 (たけの としみ)
1989年12月生まれ、山口県出身。東京女子大学を卒業後、北京に留学。半年間中国語を学び、現在は清華大学大学院2年生。父親が中国人、母親が日本人のハーフ。
「歌唱大会があるけど、応募してみない?」という友人からの誘いで、私は北京で開かれる「第37回CRI紅白歌比べ」に出場することになりました。最初は応募する気などなかったのですが、友人から「優勝したら旅行がプレゼントされるよ」と聞き、賞品に釣られて軽い気持ちで、翌日カラオケBOXで自分の歌声を録音し、応募しました。この歌唱大会のテーマは日中友好で、両国どちらかの国籍を有し、中国人は日本語で、日本人は中国語で歌うことが条件でした。応募したのはいいものの、私が歌える中国語の歌は1曲だけでした。
私は日本で生まれ育ち、小学校から高校受験の時期まで、毎年夏休みと冬休みは広東省で父の家族と一緒に過ごしました。その頃、中国では『还珠格格』というドラマが大ヒットしていました。街中で「还珠格格」のグッズが売られていて、ドラマの時間になるとテレビの前は人だかりになりました。私も「还珠格格」が大好きになり、毎日楽しみに見ていました。当時、私は中国語が全くわからなかったにも関わらず、ヒロインの「小燕子(ヴィッキー・チャオ)」が歌う『有一个姑娘』を自然と覚えました。当時はこの曲が10年以上も後に、自分の人生でこんな形で生かされるとは思ってもみませんでした。
思いがけず一次選考、二次選考と進み、ついにテレビ出演決定の通知が来たときは、正直焦りました。人前でステージに立って歌ったことがなかったですし、心の準備が全くできていませんでした。通知が来た当日は、そのことが頭から離れず夜も眠れませんでした。しかし、やるからには全力で完成度の高い歌をお客さんの前で披露したい、何よりも大好きだった「还珠格格」のイメージを絶対に崩したくないという強い気持ちから、バックダンサーをつけて、「还珠格格」に仮装し、また歌にも演技を加えたパフォーマンスにして、私が大好きだった「小燕子」を演じ切ろうと決意しました。清華大学の友人4人にバックダンサーをお願いし、本番まで週2回、19時から23時までダンスのレッスンをしました。歌に関しては、メンバーの一員である中国人の親友がまるで我が事のように私の発音を直してくれました。
メンバーを決めたその夜に、私はダンスの構成をまとめました。最初のダンスは私が考えたものでしたが、ダンスのレッスン中にメンバー全員が意見を出し合い、みんなで作品を完成させました。メンバー全員が仕方なく協力するのではなく、心から楽しみ、本気で参加してくれたおかげで、納得のいく作品に仕上がりました。
大会本番は、中国国際放送局でスタジオ収録の形式で行われ、日本から母も応援に駆けつけてくれました。スタジオ内はスポットライトのまばゆい光に照らされ、アナウンサーの方やADの方などがいて、出演者にはプロのメイク担当者がついてくれたので、まるで芸能人になったような気分でした。審査員の方も有名な方ばかりで、ステージに上がる前はとても緊張していましたが、曲が始まった瞬間、今まで練習してきた成果を出し切ろうと思い、満面の笑みで演じることができ、最優秀表演賞を頂きました。歌唱中は日中両国の審査員や観客の方々の笑顔を見て、とてもうれしくなり、歌唱大会に参加して本当によかったと思いました。中国国際放送局のスタッフの方々もとても友好的で優しく、そんな雰囲気だったからこそ力を出し切れたのだと思います。中国だからこそ精一杯楽しんで取り組むことができた貴重な経験でした。
今、日中関係は良好とは言えませんが、両国民が心を通わせて、みんなが笑顔で楽しく過ごせる日々が一日も早く訪れるようにと願っています。
人民中国インターネット版 2014年7月