People's China
現在位置: 中日交流中国と私 日本と私

地元と協力し  緑化推進を目指す

 
 

 

鶴田 惇 (つるた じゅん)

1990年、群馬県生まれ。京都大学農学部卒。京都大学農学研究科修士課程在学中に中国政府から奨学金を取得し、2013年より北京林業大学に留学。最近はまっていることは、中国人の友達から教わった百人一首競技カルタ。好きな食べ物はギョーザ。

 

今年4月、環境NGO「緑の地球ネットワーク(GEN)」の緑化ワーキングツアーに参加するため、山西省大同の黄土高原を訪れました。GENの活動に参加するのはこれで3回目です。現地では、一面が黄土色の高原に植林します。ここに木が成長し根を張ることで、雨で流される土砂と風で飛散する黄砂を減らせます。この地域はかつて森でしたが、人間活動によって緑が消失したまま現在に至るそうです。そんな地域に私たちは地元の方々と共に木を植えます。木が育つには数十年という歳月がかかるので、緑化活動では植林よりも後の管理が重要です。なので地元の方々の理解を得て、彼らと協力することは何よりも大切です。そのため植林以外に、白酒を飲みかわす食事会や地元の小学校で子どもたちと交流する機会もしっかりと用意されています。

私が環境問題に興味を持ち、北京留学を決めたきっかけもこの緑化活動でした。1回目は大学3年生の春、国際的な環境問題の活動現場を見てみたいと思い、この活動に参加しました。日本にはない黄土高原の風景に驚くとともに、この活動が緑化以外の他の問題ともつながっていると感じました。地元の村と協力して行うので、その村の貧困問題や水問題が見えてきます。村の人々が毎日の生活だけで精一杯な状況では緑化は難しく、緑化を成功させるにはその村に余裕がないといけません。緑化は植林だけと思っていた私には思ってもみなかった発見でした。

私は農村や山村が好きで、大学は農学部を選びました。今思えば、その頃は人の多い所が苦手だったので相対的に農村や山村が好きだったのかもしれません。大学入学後に現地へ行き、実際に農業や林業を手伝うことで、自然と上手に暮らしている人を尊敬し、人間ってすごいなと思える深い人間味を感じるようになりました。日本と黄土高原では全然環境が違うので生活も全く違いますが、現地で村人と交流した時も、自然と上手に暮らす(負けずに暮らす)彼らから深い人間味を感じました。緑化活動を通してこうした形で人の役に立てるのなら、もっと積極的に取り組みたいという気持ちになりました。

その後、再度GENの緑化活動に参加し、環境問題への取り組みを通して自然と共に暮らす人たちの生活を守りたいという思いが強まりました。ただ、実際に何をどうすればよいかはわかりません。緑化活動をもっと知るためにも、また大気汚染や水問題など他の環境問題を知るためにも、いろいろな環境問題が取り上げられている中国に長く滞在してみたいと思い、留学を決意しました。実際に留学を始めて半年以上が経過して中国語も少し話せるようになり、今回の緑化活動ではGEN大同事務所の中国人の方々と交流を深めることができました。村人との交流もより充実し、今まで以上に現場の状況を理解できたと思います。また北京での生活では、日々の暮らしで大気汚染に接し、大気汚染がどんなものか、渦中にいる中国人はどう考えているのかといったことを肌で感じることができました。

環境問題への取り組みを通して、自然と共に暮らす人たちの生活を守りたいという思いは変わりませんが、環境問題に取り組むことの難しさも見えてきて、これから先どのような人になろうかとますます迷うばかりです。環境のことを一人で考えても仕方がないので、中国でも日本でも多くの方と話をし、よりよい社会や環境のため自分に何ができるのか、これからも悩んでいきたいと思います。

 

 

人民中国インターネット版  2014年6月

 

 

 

 

 

同コラムの最新記事
法律サポートで友好の懸け橋
積極的な交流は中国語上達のチカラ!
歴史散歩のすすめ
運は一瞬、縁は一生
初めての異文化体験