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家乡的土炕

故郷のオンドル

 

  对于老家人来说,炕并不只作为睡觉休息的地方,炕还是家里人会客、吃饭的地方,是父亲抽旱烟和母亲做针线活的地方。母亲总是一有空闲就在炕头纺线、缝衣、纳鞋,缝缝补补忙个不停,无数次夜里醒来,在炕头做活的母亲都笼罩在暖暖的光晕里,有人说母亲是孩子心里的佛,那时候端坐在炕头油灯光芒之中的母亲就是我们心里的佛。

実家の者たちからすれば、オンドルは眠って休む場所であるだけでなく、客間でもあり、ご飯を食べる場所でもあり、父親が刻みタバコを吸い、母親が針仕事をする場所でもある。母はいつでも暇さえあればオンドルの上で糸を紡ぎ、服を縫い、布靴の靴底に刺し子を施し、手を休める暇もなく裁縫していた。夜中に目覚めたときに幾度となく、オンドルに座って針仕事をしている母が暖かな光に包まれているのを見て、母親は子どもにとって心の中の仏であると言う人がいるけれど、その時オンドルに座ってオイルランプの光の中にいる母は、まさしく私たちにとって心の中の仏だった。

 

 除此之外,炕还是孩子们学习、写作业的地方,老人讲故事、邻居谝闲传的地方,到了天冷时,炕也是发馒头、包饺子的地方。尤其在冬天,家里来客人,一般都是先招呼到炕上,把暖和地方留给贵客。现在家居,卧室是最私密的地方,而在农村的炕正好相反,往往成了公共活动的场所。若用现代意义上的家庭空间划分,老家的炕兼具了客厅、餐厅、起居室、工作间等全部功能,完全是家里暖人心窝的一处多功能场所。

これ以外にも、オンドルは子どもたちが勉強し、宿題をする場所であり、老人たちが子どもたちにお話を聞かせ、ご近所さんがうわさ話に花を咲かせる場所でもある。寒くなると、オンドルはマントウの生地を発酵させたり、餃子を作ったりする場所にもなる。特に冬には、家にお客がやって来ると、ふつうはまずオンドルの上に呼び寄せ、暖かい場所をお客に分け与える。今の家では寝室は最もプライベートな場所だが、農村のオンドルはちょうど反対で、しばしば公共活動の場所ともなる。現代的な家庭空間区分でいえば実家のオンドルは、客間であり、食堂であり、居間であり、仕事場であり、すべての機能を兼ね備えており、全くもって家の中で人の心を温める巣ともいえる多機能の場所である。

 

 小时候在炕上的时候多,大人总要求我们要盘腿坐炕,那种有板有眼、正襟危坐的坐姿像极了佛教的一种打坐,双腿交叉,四平八稳,也许正是从这种自小习惯了的修行姿态中我们才慢慢悟到了生命的从容,渐而有了踏实而努力的人生。我对老家的炕满怀眷恋,它见证了我的成长,抚摸过我的肌肤,我们彼此熟悉,互相接纳,回到炕上,就躺着也舒坦,睡得也踏实,烦恼忧愁了无痕迹。

小さな頃は、オンドルにいることが多く、大人はいつでもわれわれにオンドルの上であぐらをかかせたものだが、背筋をピンと伸ばし端座するその姿は、仏教の一種の座禅、両足を組んで安定した姿勢を取っているみたいで、もしかしたら小さな時から修行の姿勢に慣れ親しむ中で、われわれは生命の悠揚迫らぬさまを次第に悟って、地道で努力を怠らない人生を歩んでいったのかもしれない。私は実家のオンドルを非常に恋しく思う。これは私の成長を見届け、私の肌をなで、お互いを知り尽くし、相受け入れているもので、そこに戻って横たわるととても気持ちよく、ぐっすりと寝ることができ、悩みも憂いも跡形なく消え去るのだ。

 

节选自2015年8月14日《新华每日电讯》刊载 李耀岗作品《家乡的土炕》

2015年8月14日付『新華毎日電訊』掲載、 李耀崗「故郷のオンドル」より

 

 

 

◆翻訳にあたって◆

 

「オンドル」とは、台所で使った火から発生する煙を回して住居の床を暖める床下暖房設備のことで、朝鮮半島で昔から使われていたものである。中国北方ではこれに類似した暖房設備として、土やレンガで造られた高い寝台のような形の“炕(kàng)”や“火炕”“土炕”と呼ばれるものがあり、この“炕”も、ふつう日本語では「オンドル」と呼ばれる。日本の「囲炉裏端」のような感覚のものなのだろうが、今やほとんど使われることのない日本の囲炉裏とは異なり、“炕”はいまだ現役で使われている。(福井ゆり子)

 

 

 

人民中国インターネット版  2015年12月

 

 

 

 

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