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『中国残留日本人孤児の研究―ポスト・コロニアルの東アジアを生きる』

浅野慎一 佟岩 著

本書は、長年にわたり中国残留孤児問題を研究している著者たちがオーラルヒストリーの方法で著した実証的な研究書である。

1931年の「九・一八事変(柳条湖事件)」後、中国東北三省(黒龍江省、吉林省、遼寧省)に移り住んだ日本人の子どもで、日本が「ポツダム宣言」の無条件降伏を受け入れると宣言した45年前後の混乱で両親と別れ、現地に置き去りになった人たちは残留孤児と呼ばれ、現在、その多くは日本で暮らしている。本書は、そうした人々の人生と闘いの記録である。彼・彼女たちは、帝国主義、東西冷戦、グローバリゼーションといった地球規模の巨大な歴史的社会変動に翻弄されつつ、それでも自らの生活と社会を主体的に創造・変革し続けてきた。

著者の浅野慎一氏は1956年生まれ、神戸大学大学院教授・社会文化環境論専攻、北海道大学大学院博士後期課程修了。中国「残留日本人孤児」を支援する兵庫県の会代表世話人。同氏は2000年以降、中国・日本において約450人の残留孤児、残留婦人およびその家族に直接聞き取り調査を行ってきた。本書はその中から、兵庫県に住んでいる45人の残留孤児のインタビュー、彼・彼女たちの生の言葉、著者の考察で構成されている。

「本書を通して戦争の悲惨さを知ることができるのに加えて、日本政府が日本人との関係においても戦後責任問題を残していること、さらには国家と国民の問題は、時代が推移することにより改善されるものではないということが強く印象づけられた。中国残留孤児問題を知るための最良の本として、本書が多くの読者に読まれることを期待したい」と、2016年10月28日発行の新聞『週刊読書人』は紹介した。

本書のもう1人の著者である佟岩(トウ・ガン)氏は1965年生まれ、神戸外国語大学ほかで非常勤講師。西日本華文教育者協会理事。

 

(御茶の水書房 8900円+税)

 

人民中国インターネット版 2017年2月

 

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