初めての転校生
松本瞳美
私が初めて中国とかかわりを持ったのは小学生二年生のときでした。私のクラスに中国からの転校生がやってきました。その子は男の子で、中国人のお母さんと日本人のお父さんがいる、いわゆる中国と日本のハーフの子でした。最初に先生と一緒に教室に入ってきて、先生が紹介したときに名前が日本人の名前で全然中国人っぽいという感じがなく、普通に会話ができるものだと思っていました。しかし彼は生まれてからずっと中国で暮らしてきたために、日本語は全く知らない状態でした。小学校に入って初めての転校生でしかも日本ではなく外国からやってきたということに私の中ではとても新鮮でワクワクしていたのを覚えています。彼の紹介が終わり私の後ろの席に座ったところで、そのまま授業が始まってしまい話しかけようにもかけられませんでした。授業が終わりやっと話しかけられる!と思い後ろを振り返ってみたものの、彼には日本語が通じないのだということに気づき何も話しかけられずただ微笑みかけることしかできませんでした。クラスのみんなは中国から来た彼と仲良くしようと彼の机に集まり、積極的に話しかけていました。
しかし彼との間にはひとつの壁がありました。それは文化の違いでした。ある日の授業中、先生にプリントを提出するときにみんなが教卓に並んでるところを彼は普通に割り込んでいました。割り込むことが当たり前になってしまっていて、このほかにも給食の時間も一列になってご飯をもらうときも割り込んでいるのを見かけました。日本ではいけないこととされているので私も含め大人数で攻めてしまいました。悪いことという認識がないため最初はわかっておらず日本語で攻められていて機嫌が悪そうでした。こうしたトラブルもありお互い意思疎通をするのが難しい状態が続いてましたが、彼はコツコツ頑張って日本語の練習をしていました。授業が終わりそのまま家に帰る子もいれば校庭に遊びに行く子もいたりするなか、彼は放課後に日本語の先生と一緒に図書室で日本語の勉強をしていたのです。毎週さぼらずに図書室へ行っていたので半年くらいには一緒に授業に参加し、みんなと変わらず同じ内容の勉強もしていました。日本語の勉強でも大変なうえに、授業の内容も理解しなくてはならなくて必死についていこうと熱心で頑張り屋さんなんだなという印象を受けました。一年後には日本語を理解していて、すっかり学校に慣れていました。一年しか同じクラスになりませんでしたが別のクラスになっても仲良くしてくれていました。そして無事にその小学校を一緒に卒業しました。
中国と聞いてやはりよくない印象があり、当初は割り込み事件もあり自分の中ではやっぱり中国だからなというマイナス感情を抱いてましたが、実際関わってみないとわからないなと感じました。彼は中国で生まれ育ち、何も知らない日本で毎日過ごしていくのは大変だったと思います。ですが彼なりに馴染もうという頑張りもありいつの間にか仲良くなっていました。実際仲良くなってみると日本の子供と全然変わらず一緒に同じことをして楽しむことができます。また彼はとても努力家で学校の成績もよかったので私だけでなく多くの友達が彼に刺激を受けていたと思います。変な固定概念にとらわれている」のではなく積極的に関わっていくことで多くの学びがありそれが異文化交流にとって大切なのだと幼いながらにも学ぶことができました。大きく中国という国単位で括ってしまうと日本とずっと良くない関係にありどうしても反中・反日の言葉が先走ってしまいます。ですが小さい単位で、人同士で関わってみたら新たな発見ができそうな気がします。今まで感じていた印象と違いプラスの関係にもっていけるのではないかと考えます。こうした考えにしてくれたのは私にとって初めての転校生のおかげです。