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中日経済交流の現場から見たヒト、モノ、カネの流れ

 

上海の新しいシンボル

 

上海・浦東の陸家嘴の金融貿易区に建設されている「上海環球金融センター」は、2008年秋にオープンする予定。もっとも背が高い「金茂大廈」を抜く。地上101階、地下3階、高さ492メートル

  黄浦江を見下ろす上海・浦東に、新しい上海のシンボルが出現しつつある。森ビルが1000億円を投資して建てている「上海環球金融センター」である。外観はすでに完成し、内装を施してから2008年秋にオープンする。

 

高さは492メートル。その百階の観光フロアからは、浦東のシンボルであるテレビ塔の「東方明珠」を眼下に納め、黄浦江越しに歴史的な建物が並ぶ外灘(バンド)や高層ビルがそびえる新しい市街地の風景を一望できるようになる。

 

中国には、日本のゼネコン(総合建設会社)のような概念はない。だから上海で中国一の高層ビルをつくるに際して、設計、建設、品質管理などの面で、森ビルには勇気が必要だった。「上海の高層ビルの総数は、東京や大阪よりも多い。高層ビルを建設する経験は、地元の建設会社のほうが持っている」と、金融センターの建設仮事務所で、森ビルの監督責任者は明かした。

 

工事は最終的に、中国建設工程総公司と上海建工(集団)総公司の連合体が請け負った。中国建設工程総公司の責任者は「これによって我々の建設技術は、一大ジャンプができた」と誇らしそうに話した。さらに森ビルから、最新のビル建設の管理ノウハウなども手に入れることもできるという。

 

日本企業が発注して中国の建築連合体がビルを建てるケースだけではない。上海の街を歩くと、中国企業が発注して日本のゼネコンが請け負って建てているビルにも出会う。ビル建設の業界でも、中日の相互乗り入れが広がっているのだ。

 

 

日系企業と「中国のデトロイト」

 

一汽豊田銷售有限公司の毛利悟・総経理

  上海、北京、広州などの中国大都会では、日本ブランドの車がますます多くなっている。1980年代から90年代にかけて、ドイツ系のフォルクスワーゲンが中国産自動車のシェアの七割を占めていた。国内で製造する車といえば、フォルクスワーゲンのサンタナであり、日本メーカーは四川、天津、北京などで細々と製造してはいたが、シェアから見ると、日本車の比率はあまりにも低かった。

 

「日系自動車メーカーは中国市場を軽視していた。投資を誘致するために日本に行っても無駄に終わるだけだった」という批判に対して、自動車評論家の賈新光氏の見解はまったく違う。「日本の自動車メーカーは大衆車を生産するのが得意であり、大衆消費の時代がやってこないと、中国へ投資に来るはずもなかった」と反論する。

 

中国の人口対乗用車の保有台数(普及率)は、2008年に3~4%になり、年間の販売台数は日本を超え、世界第二位になった。まだ普及率は低く、自動車の大衆消費の時代に入ったとはいえないが、年間販売台数800万台という数字は、企業にとって大きなビジネスチャンスであることを示している。

 

しかし、中国を制覇したフォルクスワーゲンは、上海を「中国のデトロイト」にする考えをまったく持たなかった。サンタナなどは、役人や企業経営者が使う車であると見なされ、20年間、ほとんどモデルチェンジをしなかった。米国のビッグスリーも、中国で本気に自動車を生産する考えがなかった。武漢、天津などで細々と乗用車をつくっていた日系企業の中から、1999年にホンダが広州で、撤退したフランスのプジョーの工場跡地に進出し、年間1万台の生産を始めた。

 

プジョーが撤退したのに、ホンダが出て、成功する保証はなかった。しかし21世紀の到来とともに、中国でも自動車が爆発的に売れるようになると、日産、トヨタも広州に進出し、2007年には日系3社の生産能力は百万台(ホンダ42万台、日産36万台、トヨタ20万台)まで成長した。

 

トヨタ自動車は2010年までに、中国での自動車販売台数を百万台にする計画だ

  トヨタは、米国でのシェアは13%前後であり、中国でも同様のシェアを得たいと考えている。一汽豊田銷售有限公司の毛利悟・総経理は北京のオフィスで「2008年に40万台の乗用車を販売したい」と語った。2003年の販売台数は4万3000台だったから、わずか5年で9倍以上の増加を目指しているわけで、高すぎる目標のように見える。実際、07年の販売は28万1000台だった。

 

しかし2010年には、中国の自動車生産量は1000万台に成長する見込みである。広州トヨタが40万台の生産量を持つようになると、南北二つのトヨタが中国では10%のシェアを持ち、100万台の販売量を達成することは、慎重に行動するトヨタにとっては、そう難しい目標ではない。

 

中国に自動車消費のブームがやってこようとするとき、広州を拠点にして乗用車を製造しているのは、日系企業である。広州は現在、「中国のデトロイト」になっており、生産量の面では、GM、フォクスワーゲン、スコダなどの欧米企業と国産の栄威が集まっている上海と拮抗している。

 

北京、上海、広州などの大都会で日本ブランドの車が今後はさらに増加していくことは、間違いないだろう。

 

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