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中日経済交流の現場から見たヒト、モノ、カネの流れ

 

環境、省エネへの新展開

 

EUROFO集団代表と握手する日立(中国)有限公司の長野晄史・総経理(右)

 中国へ家電製品を輸出してきた日系企業は、1980年代から、それを中国で生産するようになった。1990年代からはその延長線上で、パソコン、プリンターなどのIT関連の生産も中国で行い、同時に紡績、食品加工、産業機械の生産も中国で展開するようになった。2000年以降は、自動車産業が目立つようになったが、今後はさらにどんな展開を見せるだろうか。

 

日立(中国)有限公司の長野晄史・総経理(4月1日から日立執行役常務、同公司董事長に昇任予定)は「中国の環境改善に日立(中国)は全力を挙げて協力していきたい」との目標を語った。

 

第3回日立省エネ環境保護技術交流フォーラムが今年1月21日、北京で開催され、中国各地から300社以上の企業がこのフォーラムに参加した。日本は1960、70年代に公害問題に悩まされた過去があり、それを乗り越えて世界屈指の省エネ、環境技術を持つに至った。その技術のなかには、コストさえ合えば、中国で十分使えるものが数多くある。

 

日立は、中国国家発展改革委員会などと連携して、雲南省における電機システムの省エネ、余熱余圧利用モデル・プロジェクトを、同省の製鉄会社や化学工業会社との間で推進していくことに合意し、これをフォーラムの席上で公表した。

 

中日省エネ・環境保護の総合フォーラムで、中日両国は協力協定に調印した



 日立グループは昨年12月にCEnO(最高環境戦略責任者)を設置したが、CEnOに就任した八丁地隆氏は本誌の取材に対し「日立グループの製品は年度時点で、一億トンのCO排出量を抑制することを目指している。中国でもCO排出量を減らす仕事を大いにやっていきたい」と述べた。

 

総合電機メーカーの東芝も、環境ビジネスに力を入れている。東芝は、発電プラント、変電送電装置を生産する技術をもっており、効率的に発電送電する技術に対し、中国は関心を持っている。また、今後の電力における原子力発電の比率を現行の1%強から4%まで引き上げたいとする中国電力関係者は、東芝の原子力発電技術に大きな関心を寄せいている。東芝の西田厚聡社長が、原子力発電によるCO2排出量の減少効果について語ったことが、中国のマスコミに何度も掲載されている。

 

2010年には、日立は、中国での事業規模が約130億ドルになると見込んでいる。東芝も百億ドルになると見られている。中国経済の成長とともに日系企業も成長して行く。

 

日系企業のこれから

 

 兄弟縫纫機(西安)有限公司の生産工場
  日系企業の今後の展開は、地理的には中国内陸部や東北部へ向かい、さらに金融の面での比重を強めていくだろうと思われる。

 

ブラザー工業株式会社は、深センと珠海にプリンターや家庭用ミシンの工場を持っているが、工業ミシンの工場は西安に置いている。兄弟高科技(深セン)有限公司の永井毅・董事長は、「プリンター部品の調達のやり易さから見れば、深センは最適地であり、我々の工場の近辺に、アジアでもっとも優れた部品ベンダーがある」と語った。

 

また、珠海兄弟工業有限公司の浅野正康・董事長は、物流のよさ、「改革・開放」政策を実施して以来の外資に対する理解度の深さから、「珠海での家庭用ミシンの生産はきわめて順調。ここ数年、生産量は大きく増加してきた」と満足げだった。

 

しかし、中国沿海部への労働力の供給は次第に頭打ちとなり、工場用地の不足も目立ってきた。新規の投資は内陸部へ転換して行かざるを得ない。ブラザー工業の兄弟ミシン機(西安)有限公司の森井敏・董事長は「内陸部と沿海都市の間に鉄道や高速道路が整備されてきたので、工業ミシンを組み立てるための部品調達はさほど不便を感じません。むしろ西安あたりの労働力は豊富であり、労働力不足に対する心配はありません」と、陝西省に立地したメリットを語る。

 

兄弟縫纫機(西安)有限公司の森井敏・董事長
  中国東北部も日系企業の注目を集めている。すでに大連に自動車用の配線などを生産する工場を持っている三菱電線株式会社の五十嵐寿彦社長は、中国自動車市場の急速な成長に着目して、今後は大連を拠点にして中国市場の開拓を考えているという。東北の工業生産技術、大学などの研究開発能力などは再評価されており、内陸部の進出にともなって、東北部も日系企業の新しい投資対象になりつつある。

 

一方、日本の資金力を背景にして、中国で新しいビジネスを開始しようとする企業も現れている。北京に長年滞在した経験を持つ東亜キャピタル株式会社の津上俊哉社長は、2010年には中国の環境保全、省エネへの投資需要がピークを迎え、中国国内企業の力だけでは資金的に不足を生じるだろうと考えている。

 

津上社長は東京のオフィスで「日本企業は技術などを持っており、中国に市場があるが、金融の面で十分なサポートができたら、日本企業も中国企業も十分なビジネスができる。福田首相が訪中した際、環境の面で日中両国の協力を約束したし、今春の胡錦涛総書記の訪日で、両国の共通の利益になる環境事業について再度話し合われることになるだろう」と語った。環境保護への金融面からの支援があれば、中日間の経済交流の展開は新たな段階を迎えるだろう。

 

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