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日本のファン増やしたい

 

昨年9月のある日、東京都世田谷区の祖師ヶ谷大蔵駅近くの喫茶店で、張春祥さん(51)にお会いした。笑みをたたえて迎えてくれた張さんは、優しい教師のように見えたが、その鋭く輝く目つきから、筋金入りの京劇の男役の本領も垣間見られた。「今では、京劇俳優でもあり、京劇教師ですね」と、笑顔で話し始めた。
京劇俳優であり京劇教師でもある張春祥さん(写真提供・本人)

「女房は日本人で、彼女と結婚してから日本に来たのです」。1989年、28歳だった張さんは北京での京劇の仕事を辞め、東京にやって来た。当時は、日本経済が好調で、さまざまな公演依頼は絶え間なくあり、ステージ経験が豊かな張さんは仕事に事欠かなかった。日本の舞台劇『魔笛』『夜会』などに出演したのが縁で、中島みゆきさんはじめ有名な俳優たちとも知り合った。しかし、ずっと一つの夢を抱いていた。京劇の魅力を日本の観客に広く知ってもらうことだった。

1996年、新潮劇院を結成し、自前のステージを持つことができるようになった。再び京劇の衣装を身につけ、顔に隈取りを描き、リズミカルなどドラや太鼓の演奏に合わせて、刀や槍を振りまわす立ち回りを演じ、大好きな関羽や趙雲、孫悟空を演じた。日本の観客がもっと京劇を受け入れられるように、趙さんは伝統的な京劇をアレンジした。ストーリーを日本人にも分かるように書き換え、四川省の川劇の「変臉」(隈取りを瞬時に変える演技)や日本舞踊の要素を織り込み、日本の観客の興味と共感を引き起こした。

次第に、彼のステージを見に来る観客が増え、ファンも増え始めた。「京劇の華麗な衣装、すばらしい技量やしぐさが彼らを引き付けたのでしょうね」と、説明してくれた。ファンの希望に応じて、京劇教室を開設し、自ら教え始めた。「皆さん勉強する意欲にあふれ、京劇の目つきから身ぶりまで、真面目に学んでいます。中国語の分からない皆さんにとって、最も難しいのはセリフです。そこで、セリフにローマ字で読み方をつけ、暗記するしか方法はありませんでした。その一生懸命に取り組む姿に感動させられましたよ」

ある時、コミュニティーセンターでの公演で、出演する俳優の都合がつかないことがあった。その時、まだ一年しか経験を積んでいない21歳の工藤文子さんにその役を振り当てた。客席で観劇していた中国から来ていたベテラン京劇俳優でさえ工藤さんのすばらしい演技を見て、初心者だとは思えないと言ったそうだ。石山雄太さんというもう一人の自慢の弟子がいる。彼は今、中国京劇院で唯一の外国人俳優だ。

日本のステージで関羽に扮している張春祥さん(写真提供・本人)

近年、日本経済が不振で、公演のチャンスは減っている。それでも「以前とは比べものになりませんが、京劇教室にやって来て厳しい練習に励んでいる日本人の京劇ファンを見ると、嬉しいですよ。中国を代表する演劇の京劇が日本で盛んになるように、また熱心な日本人の京劇ファンのために、これからも頑張りますよ」と、張さんの初心は少しも揺るがない。

 

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人民中国インターネット版 2013年3月26日

 

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