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四川被災地に小学校を寄贈する建築家迫慶一郎氏

 

四川被災地に小学校を寄贈する建築家迫慶一郎氏

 

迫慶一郎氏と綿竹市春溢街の小学生たち

北京の「建国門外SOHO」など、中国で数多くの建築を設計している日本人建築家の迫慶一郎氏は、昨年から四川省綿竹市剣南鎮春溢街で小学校の寄贈プロジェクトを展開している。

この「綿竹市春風中日友好小学」と名付けられた小学校は、去年の11月9日に着工式が行なわれ、「薄板鋼骨工法」という日本の耐震技術が用いられている。

四川大地震の1周年に際してチャイナネットは、迫慶一郎氏に小学校寄贈プロジェクトの進展や中国での事業展開について話を聞いた。

1、設計のヒントは福建省にある客家の土楼

----このプロジェクトを始めた理由について。

去年の四川大地震の発生後、多くの建物が壊れ、たくさんの子供が亡くなったのを知り、本当に心が痛みました。そしてお金を寄付をしようとも思ったのですが、何百元かを寄付するよりは、もっと大きなことができないだろうかと考えたのです。

私は、中国を拠点に建築を始めた日本人建築家の中で一番古いと思います。このプロジェクトの実施は大変なことで、私自身も経験したことがないし、それでなくてもいつも忙しいのに、もっと忙しくなるのだろうかと思うと少しためらいましたが、やはりこれは自分の使命だと思い、そういう気持ちも強くなって始めることにしました。

----小学校の設計は教室が教室が中庭を取り囲むように建てられている集中型配列方式ですが、このモチーフのヒントは?

小学校がいったいどういう場所なのかということを根本に考えました。小学校という場所は、6歳から12歳までの子供たちが初めて社会生活を学ぶ場所で、そのための学校とはどういう形であるべきなのか。そのために参考にしたのは、福建省にある客家の土楼や、世界中にある原始的な集落です。

原始的な集落の真ん中には必ず広場があり、その周りに家が並んでいます。情報交換のない何百年前から人類はみんな同じようなことをしてきました。ということは、人が集まって生活するという基本的な構造や基本的な配列は、原始的な集落にあるのではないかと考えたのです。ですからそれを今回の小学校のデザインしました。日本の小学校にもあまり見られない珍しい形です。

2、被災地再建の様子

綿竹市春風中日友好小学の模型写真

----四川大地震1周年を迎えますが、小学校プロジェクトの進展のについて。

工事は3期に分かれ、1期は6棟の普通の教室とお手洗い、2期は回廊、食堂、職員室、受付、3期はその他の部分です。今は第1期工事がちょうど始まったところで、8月の末までに終わらせ、9月1日からの新学期の授業をスタートできるよう進めています。

----今の被災地再建の状況について。

5月9日に四川省に行きましたが、個人住宅のほうはあまり再建が進んでいないようで、まだみなさん仮設住宅に住んでいる状況です。道路を含むインフラ工事や、部分的に学校の建設は行なわれていますが、進んでいる分野もあれば遅れている分野もあるという状況です。

----プロジェクトの資金面などの具体的な状況について。

全体の所要資金は1600万元ですが、まだ850万元の資金が足りません。そのため第2期工事に入ることもできないし、第3期もまだ今のところ実現の可能性はありません。ですからこのプロジェクトをできるだけ多くの人や企業に知ってもらい、参加してもらいたいのです。

今回のプロジェクトは、中国と日本の企業の共同事業なので、中国の企業の参加も歓迎しています。今のところ中国の企業は少ないでが、何社か参加していただいています。

最初は、日本の最新技術を用いて、子供たちのために安全性の高い校舎を作りたいと思ったのですが、やはり日本の企業だけの援助で建てるのは難しく、6月上旬に中国企業が援助してくれました。その時から日中合作にしたほうがよりいいと考え、それに日中友好にも役立つのではないかと思ったのです。これからはできるだけ中国の企業にも参加してもらい、日本と中国の民間企業が力を合わせたプロジェクトになれば、それは本当に意義深いと思います。

日本政府にも資金援助してもらっていますし、今後は四川省の政府にもお願いするかもしれません。民間と政府、中国と日本が力を合わせて作る学校をぜひ実現したいと思います。

3、「鳥の巣」の評価

----北京にはここ数年、「鳥の巣」や「国家大劇院」などランドマーク的な個性のある建築物が建てられているが、今後、こうした大きなプロジェクトへの参加について考えているか。また設計のコンセプトについて。

 毎回作るべきものが違い、コンセプトも毎回違うというのが自分のスタイルで、その敷地に建てられる建物がどういう役割を担うのかということをまず考えます。

建築を依頼された時、ランドマーク的なものにするよう言われたことがありますが、もしその地域に本当にランドマークが必要だったら、ランドマーク的な建築にします。最初から派手なものを作ろうと考えているわけではなく、それぞれのプロジェクトの中で、どう設計すればこのプロジェクトが一番成功するかという考え方からスタートするのです。ですから結果的には派手なものになるかもしれないし、すごく落ち着いた形になるかもしれない。

「鳥の巣」は評価しています。オリンピックに合わせて作られた建物ということと、とても特徴ある建築であるということです。中国の13億の人たちにとって、オリンピックが行われた場所があの建築だったという認識も強くなり、もし普通の建物で個性のない建物だったら、みんなオリンピックに対して、気持ちや熱情がそんなに高まらなかったと思います。

建築というのは、ある時、ある目標など、ただ単純に機能だけを考えるのではなく、それ以外の役割も担うことがあると思います。ですから「鳥の巣」はそういう意味で、中国13億人たちの心を一つにする形として十分に機能したと思います。

4、中国で設計する場合は期待感が強い

----中国での設計と日本での設計の違いについて。

中国では建築一つ一つに対する期待がすごく大きいです。あとは建築家の作る建物と周りの環境、新しいものを作るということがすごく期待されます。住宅を変えたいと思う人も、いい環境の場所で住みたいという期待感も相当強く、中国で仕事をしていてそこがとても面白いところです。

----中国で設計した作品の中で最も満足している建物は?

今までの建築は全て自分の子供のようなものなので、この子が好きでこの子が嫌いというのはなかなか言いにくいですが、何が代表作かと聞かれれば、北京の西四環広場です。内装の仕事としては蒲蒲蘭絵本館。今、私のオフィスがあるSOHOも私にとってとても重要な代表的ですが、山本事務所にいた時に設計したものなので、自分の作品とは公に言うことはできません。

----これからの仕事の拠点について。

今、北京では、東五環のさらに東にある朝陽北路の大きな住宅地の建物を担当しており、内装のプロジェクトは浙江省の杭州など、江蘇省の蘇州や遼寧省の瀋陽、天津でもしています。

仕事があってこそ自分の考えを実現できます。ですから今後もやはり中国を拠点に仕事をしていきたいと思っています。

 

「チャイナネット」 2009年5月12日

 

 

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