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最新型「和諧号」の運転手に

中国鉄道館の館外には自重40余トンの高速鉄道機関車「和諧号380A型」の実物大模型が展示されているが、この機関車は現在、世界最速の営業運転速度を誇る機関車である。そして、館内には、この最新型「和諧号」をシミュレーション運転できる操縦席と、同じ「和諧号」の貨物列車けん引機関車の操縦席が設けられていて、来館者に大人気だ。

スタッフの説明によると、どちらも「CRH3型和諧号」機関車の運転室を完璧に再現したもので、客車をけん引する「和諧号」は北京―天津間を走るものが、貨物列車をけん引する「和諧号」は武漢―広州間を走るものが、それぞれ、そっくり再現されている。ハンドルだけでも20万元はするという本物の運転室だ。室内設備だけでなく、操作の仕方も本物と同じようになっており、違うのは前方の車窓が3Dの映像画面であることだけなのだ。この画面には実際に走る「和諧号」の運転席から見える窓外の景色が映される。村や町、田や畑、駅のホーム……。

開発進む高速鉄道

広東省からやって来た戚さん夫妻は11歳になる息子の大斌くんを連れて25分間並び、順番がやってきて運転室に入った。戚さんは奥さんと相談して、この千載一遇の機会を息子に譲ることにし、運転席には大斌くんが座った。彼は小学生ながら大の鉄道マニアなのだ。

大斌くんは背筋をまっすぐ伸ばし、指導員の指示に耳を傾ける。足で金属ペダルを踏み、左ハンドルを向かいに目いっぱい押し倒し、右手には主ハンドルをしっかり握って、こちらも向かいに押し倒すと、列車はゆっくりと動き始め、ホームを離れる。すぐにスピードが上がり、メーターのスピード表示はやがて時速320キロに。車窓に映し出される緑のスロープ、木々、そして建物があっという間に後ろに遠ざかる。大斌くんの運転ぶりを見つめる指導員が「君の運転する列車は、いま、毎秒百メートルの速さで走っているんだよ」と教えると、ピューッという空気音とともに白い光が車窓を駆け抜けた。複線の線路を、ほんの1秒間で対向列車が通り過ぎたのだ。

運転席を囲んで見守る来館者たちの一人が、「どんな感じ?」と大斌くんに声をかけると、彼は前方をしっかり見つめたまま、「運転中は、運転手に話しかけないでください」とまじめに答えた。人々から笑い声がもれるが、大斌くんは真剣そのものだ。5分後、列車は静かに駅のホームに停車、「和諧号」の運転は終わった。

「僕はついに和諧号を運転したんだ。こんどはもっと長く運転して、アメリカにいるおじいちゃん、おばあちゃんに会いに行くぞ」と大斌くん。

「大斌は初めて高速鉄道の機関車を運転して、ほんとうにうれしかったのでしょう。僕の人生の最終目標は鉄道エンジニアになることだ、と胸を張って言ってのけましたよ」とお父さん。

中国の高速鉄道技術の発展は早い。あと10年足らずで、高速鉄道の運営路線距離は1万キロに達するだろう。

 

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