水の生態環を守り 都市にオアシスを
何晶=文
万博会場は大都市の中心部にあるため、人々の自然へのあこがれの思いも強い。
会場はまた上海市内を貫流する黄浦江の両岸に建設されていることから、水とのかかわりが深い。黄浦江に沿って万博公園、後灘公園、白蓮涇公園がつくられたが、この三つの公園は万博閉幕後も残され、上海中心部のオアシスとして市民の憩いの場所になる。
大都市の中心部に緑地を新たに造るにはたいへんな費用がかかるが、もとからある水辺などを修復するなら、コストも多くかからず、都市の生態環境の維持と改善にも良好な結果をもたらすことができる。
上海市は今回の万博開催に際し、都市中心部における環境保全の面で絶妙な措置を行った。
工場跡地が公園に
後灘公園は黄浦江沿いに1.7キロ近く続く緑地で、もとは上海鉄鋼工場があった古くからの工業区であるが、汚染のひどかったこの一帯が、いまでは木々が茂り草花が咲きそろう花園に生まれ変わっている。冬には湿地帯でカモなどの野生の水鳥が遊ぶ姿も見られる。
「ここが、もとは鉄鋼工場だったと想像できますか。市中心部の貴重な緑地に変わりました」と万博事務協調局で緑地公園部門を管理する孫旭さん。
都市の緑地はヒートアイランド現象を緩和するだけでなく、都市から排出される二酸化炭素の排出量を減らす役割も持つ。公園の敷地は移転時に発生した産業廃棄物を埋め立てて造成されており、運輸方面の経費を節約できただけでなく、廃物を宝に変えることもできた。
ここにはもともと2ヘクタールほどの自然の湿地が存在していたが、公園の建設にあたっては、この湿地をそっくり残し、さらに周囲に広げるとともに湿地に合わせた公園の設計を工夫して、都市の真ん中に保存されてきた湿地帯を中心に、新しいタイプの都市公園が誕生したのである。現在の公園敷地は13ヘクタールにも及ぶ。
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黄浦江の水を浄化
後灘公園では黄浦江の水も浄化して利用している。水処理場では一般の処理工場で用いているような化学薬剤はいっさい使わず、万博会場内の他の施設と同様「完全な天然水処理方法」が行われている。孫さんの紹介によると、黄浦江の水は毎日汲み上げられ、一次ろ過と沈殿を経てから、さらに5段階の処理が行われるが、この段階には水生植物と微生物による水質浄化の過程も組み込まれている。この大規模で徹底した天然浄化によって毎日2400トンの水が公園に提供され、園内の用水や灌漑・洗浄用水として利用される。
湿地内では食物連鎖の回復も進められている。合理的な設計に基づき、数十種類の動植物が運び込まれたが、水辺にはアシやショウブなどの水生植物が移植され、水中には富栄養化による汚染を防ぐために「食藻虫」が導入された。こうした措置によって水の生態保全機能や自浄機能が格段に高められた。
孫さんは、「園内にはトウモロコシやヒマワリなどの農作物も植え、さらには多くの木を植えることで生物による自然コントロールを進めてきました。このため湿地の生態環境は大幅に改善され、公園内を歩けば、自然が呼び戻した鳥類やトンボなどを多く目にすることができます」と語っている。
後灘公園の水環境修復を中心になって進めた張飲江上海海洋大学教授は次のように語っている。「この一連の技術の最大の特色は、すべて生態を第一義に考えているということです。化学的な方法はいっさい用いていません。ここの湿地環境は訪れる人々に大自然の力を感じさせることでしょう」
人民中国インターネット版 2010年8月31日