田福利 チベット館館長に聞く
何晶=聞き手
自治区内では、巨大なタンカ(チベットの仏画)を広げてチベット仏教の盛大な儀式が執り行われることも(CFP)
――多くの人が心の中に描くチベットは、遠い所にある聖地といったイメージが強いと思います。チベット館は、どんな素晴らしい展示でチベットを全世界に開示しようと考えましたか。
チベットはたいへん美しい所です。その美しさは、神秘的な自然の風光にも見られますし、独自の魅力を持つ特色ある文化にも見られます。「世界の屋根」にたとえられる高原で暮らす人々の幸せな生活の中にもありますし、チベット自治区の各民族の人々が万年雪をいただく神々しい山々のふもとに作り出したこの世の奇跡の一つひとつにも見て取ることができます。それぞれが国内外からいらっしゃった来館者の皆さんの関心の集まる所であり、興味を抱かれる所でもあるでしょう。チベット館では、そのチベットの美を中心に展示しました。
具体的に申し上げますと、テーマは「天上チベット」です。このテーマのもとに、チベットの発展と人々の生活、新しい変化を中心に展示し、「生態環境の保護、民族文化の伝承、幸せな生活の創造、持続的な発展の促進」を展示の理念にしています。この展示を通して、近年来のチベットの経済と社会の発展がもたらした偉大な成果とチベットの独特な文化の魅力、そしてチベットの人々が祖国に思いを寄せ、奮闘して向上をはかる時代精神を来館者に知ってもらいます。またチベットの各民族が二〇二〇年までに実現する「いくらかゆとりのある生活、平和で調和の取れた社会、生態が保全された環境」という壮大な目標を明らかにし、チベットの人々のより良い生活へのあこがれを知ってもらいたく思います。
そのため、私たちは、世界が注目する「青海―チベット鉄道」と低所得層向けに低価格で住宅を提供する「安居プロジェクト」を具体的に紹介し、あわせて今日のチベットとチベットの新しい生活を反映した短編映画も上映することで、来館された皆さんのご期待に応えることにしたのです。
――チベット館は万博会場内でもたいへん人気がありますが、いまお話くださった展示とは別に何かイベントも開かれていますね。
館内では、民族の特色が濃い小型の出し物をお見せしています。長い歴史のあるチベットの地方劇「蔵戯」、チベット東部に伝わる弦楽器を伴奏にする舞踊「蔵東弦子」、「ヤクの舞」、チベット民謡などです。最近、無形文化財の伝承者による実演も加わりました。チベットを代表する長編叙事詩『ケサル王物語』の朗唱やチベット絵画芸術の集大成とも言うべき「タンカ」などですが、どれも来館者に好評です。チベットウィークには、無形文化財の実演も含むチベットの代表的な文化・芸術の粋を皆さんにお見せする豊富多彩な文化活動を繰り広げます。
――チベット自治区の人々の暮らしは日を追って豊かになり、外部との行き来も頻繁になってきていますが、人々は上海万博にどんな関心を示していますか。
上海万博は国を挙げた一大事業ですから、中国国民の誰もが関心を持っていますが、チベットも例外ではありません。上海万博にたいへんな関心と熱意を示しています。新聞、テレビ、ネットなどを通じて上海万博の様子を知り、チベット館を含め自治区がどうかかわっているのか、その状況もよく分かっています。一つ例をあげましょうか。私たちは自治区内の舞踊団を始めとする各文化・芸術団体の中から万博会場で公演するのにふさわしい団体を選ぶことになりましたが、どの都市、どの町の団体も自分たちの出し物をぜひ万博会場で上演したいと、一番いいものを推薦してきました。選ばれて万博会場で公演することは名誉であり、誇りであると、どの都市もどの団体も考えています。多くの普通の人々が、機会があれば上海に行って万博を参観し、自分たちのチベット館を見たいと願っています。
――チベットでの都市住民の生活は、現在どのようになっていますか。上海万博のテーマ「より良い都市、より良い生活」はどのように理解されているのでしょう。
チベットは封建農奴制の社会から生まれ変わりましたが、人々のかつての生活はとてもひどいもので、加えて遊牧の生活が主でしたから、住まいは分散し、厳しい気候条件のもとで、苦しい生活を送ってきたのです。平和解放のあと、とりわけ民主改革と「改革・開放」を経て、経済と社会は日に日に発展し、都市化の流れも加速されました。人々の生活レベルも格段に向上しています。この数年、「安心居住プロジェクト」に代表される新農村の建設が進み、農村での居住環境が大きく改善されただけでなく、先祖代々、水と草を追い求めて移動するという生活を余儀なくされていた多くの牧畜民も新しくできた町の新居に定住できるようになりました。子どもたちは安心して町の学校に通え、老人たちは移動テントでの不便な生活をせずにすむようになったのです。中国政府の優遇・富裕化政策が功を奏し、豊かになったチベットの各民族は、いま、かつては夢にも思わなかった幸せな生活を送っています。
都市化が加速化されるなかで、より多くの人々が都市生活がもたらす便利さを知り、「より良い都市、より良い生活」を実際に体験しています。特にお話しておきたいのは、チベットでは、都市、農村を問わず、太陽エネルギーの利用が広く普及していることです。多くの農村でソーラーシステムによる発電が行われています。また多くの家庭が太陽エネルギーを利用したこんろで煮炊きをし、太陽熱温水器で温めた湯で風呂に入ります。人々の科学意識、環境保全意識、持続可能な発展でなければいけないという認識も高まっています。党中央と政府関係機関が話し合う第五回チベット工作座談会では、「二〇二〇年にはチベットも全国と同様、いくらかゆとりのある生活を全面的に実現する段階に入る」ことを明確に提起しました。この壮大な目標が提起されたことは、チベットの人々の素晴らしい故郷を建設し、より良い生活を創造するという雄雄しい志をいっそう鼓舞しています。
――上海万博にかかわり、チベットを全世界に開示するという今回の取り組みで、館長が得た最大の収穫はどんなことでしょう。
最も深く体得したのは、上海万博はチベットを世界に知らしめる得がたい機会であり、また中国を知らしめる絶好の機会であるということです。
チベットは天高く土地麗しくグリーンで、環境は保全され、生態は破壊されていません。上海万博が提唱している環境を保全し、二酸化炭素の排出を減らすという理念は、自治区政府、そして各民族の人々がともに願う「真っ青な空と澄み切った水を子々孫々に残す」という発展理念にぴったりと符合します。チベットの人々の立場からすると、上海万博はこの理念をいっそう強化し、しっかり銘記するよい機会であるだけでなく、チベットの経済を発展させ、人々をより豊かにするためのまたとない機会であるということです。この機会を生かしてチベットはその特色ある産業とグリーンな産物をより広く国内外の市場に押し出したいと考えています。私たちは、より多くの人々がチベットのグリーンで、環境汚染のない、エコロジカルな生活がもたらす素晴らしさを共有して欲しいと願っているのです。
人民中国インターネット版 2010年9月8日