中国─日本 友好の絆⑦ 瀋 陽
張春侠=文 劉世昭=写真
映画『非誠勿擾(狙った恋の落とし方)』は、中国で北海道観光への火付け役となった作品だ。そして、それよりさらに前の1980年に、当時中日友好協会会長を務めていた廖承志氏の多大な尽力により、北海道の県庁所在地である札幌市と瀋陽市は正式に友好都市提携を結んだ。
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瀋陽市街(写真提供・瀋陽市観光局) |
30年以上にわたり、両都市は経済貿易や科学技術、教育、スポーツ、環境保護などさまざまな分野で交流と協力を深め続けてきた。双方の経済的な互恵と共栄に留まらず、両市民は互いに友情を深め合ってきた。
30社を超える企業が瀋陽で業務取引
札幌と聞くと、真っ先に思い浮かぶのはラーメンだろう。日本中で大人気のこの料理は中国各地でも好評だ。
瀋陽市の中心部にある高層ビルが立ち並ぶ繁華街で、ある細い路地に入ると目立たない小さな店の玄関が見えてくる。独特の飾りに「八八八ラーメン」と大きく書かれた看板があり、一目ですぐに日本料理の店だと分かる。31歳の年若い店主、宮本征史さんは瀋陽に来てまだ2カ月ほどで、以前は札幌と九州のラーメン店で働いていた。宮本さんは、「この店は開店して5年になり、瀋陽の『八八八ラーメン』一号店です。瀋陽には支店がさらに3店舗あります。瀋陽以外に長春、北京、武漢、杭州にも支店があります」と語った。さらに「日本のラーメン店には普通、ラーメンやチャーハンぐらいしかありませんが、お客様の選択肢を増やすために、丼物や一品料理などの日本料理も用意しています」。話をしている間に、だんだんお客が増え、あっという間に満席になった。「店の周りには、日系企業やオフィスビルが多く、一日の来店数は百人くらいです」
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札幌ラーメンの専門店「八八八ラーメン」 |
「八八八ラーメン」のように瀋陽に拠点を構える札幌の企業は少なくない。これら企業の多くは、北海道銀行瀋陽駐在員事務所(以下略して事務所)の紹介により進出した。38歳の渋川隆彦副所長は瀋陽に駐在するようになって7年目に入った。彼は2004年に初めて瀋陽に来て調査研究を行った時のことを今でも覚えている。「当時の瀋陽には高層ビルなんて全くなかったです。正直なところ、あまり発展していないと感じていました。しかし今になってみると、瀋陽を選んだのは正解でした」。また渋川副所長は、「北海道の製造業は比較的弱く、経済的な発展も限られていました。そこで中国との親交と協力を深める必要がありました。海外発展による需要が日ごとに増加していく中で、取引先のニーズに応えるため、2003年に北海道銀行は中国室を設立し、2004年には北海道長城会を設立しました。中国での貿易業務を希望している北海道の企業に向けた中国ビジネスについての情報提供を専門にしています。2011年9月までに、会員の企業数は240社になりました」と語った。
瀋陽のさらなる発展性を考慮し、北海道銀行は2006年、ついに瀋陽に現地事務所を設立した。設立の目的は、北海道の企業に瀋陽のビジネス情報を提供し、取引先が中国の市況を把握するのを助けるためだ。事務所の開設前、瀋陽に拠点を構える北海道の企業はわずか2、3社だったが、現在では30社を超える企業が瀋陽で業務取引をしており、そのうち約70%の企業は北海道銀行の取引先で、木材や水産、IT関連の業務に携わっている。「当時は辛い時期でした。商談会を組織するため、私たちは一軒一軒企業を訪問して資料を届けました」と渋川副所長は笑いながらそう語った。後にその努力は報われ、現在では30社を超える北海道銀行の取引先各々が、毎年瀋陽で運用する資金は1億円に達し、さらに毎年5~10%の割合で増加している。
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2011年に開催された瀋陽・札幌ビジネス商談会(写真提供・北海道銀行瀋陽駐在員事務所) |
日中経済協会北京事務所札幌経済交流室の角田貴美室長は、瀋陽と深い縁で結ばれており、2000年に初めて訪れた中国の都市が瀋陽だった。事務所に来て仕事を始めて以来、彼は頻繁に北京と瀋陽を往復していくうちに、瀋陽と札幌の経済貿易の往来について、この上なく熟知することができた。角田室長によると、札幌市は毎年瀋陽で貿易商談会を開催しており、すでに7、8年の歴史があるという。また、札幌と瀋陽は道路建設や下水道の整備と管理などの分野で技術交流と協力を行った。「前年に私たちはすでに調査研究を開始し、寒冷地での工事技術を瀋陽で普及させたいと思っていました。他にも、両都市は環境保護の分野でも交流と協力を深めていました」