中国人の万博客は 「新」「動」「大」に関心
1950年生まれ。1975年、東京外国語大学卒業、日本貿易振興会(ジェトロ)に入る。香港大学研修、日中経済協会、ジェトロ・バンコクセンター駐在などを経て、1993年、ジェトロ大連事務所を設立、初代所長に就任。1998年、大連市旅順名誉市民を授与される。ジェトロ海外調査部中国・北アジアチームリーダー。2001年11月から、ジェトロ北京センター所長を務めた。 |
すなわち、
○参加型
○気ままに遊べる空間が多い
○写真撮影に向いている
○新奇性に富み、奇抜さがある
○テーマ性、ストーリーがある提 案型
にまとめることができます。
例えば、展示されている車に試乗でき、滑り台など子ども向きの遊興空間や着席空間があり、一緒に写真に納まりたくなるようなスポットが多いこと。さらに、ハイテク機器などざん新な何かがあって驚きと近未来を感じられ、しかも、大きく、動きがあることなどが、中国人に関心を持たれる有力な条件ではないかと感じました。一言でいうと、エンターテインメント型が受けているようです。
日本館も人気パビリオンの一つとなっていますが、その秘訣をあげるとすれば、ハイテク性、テーマ(日中協力、環境保護)とストーリー(朱鷺物語・ライブショー)があって、近未来の生活空間の一端がのぞけることではないでしょうか。日本館はエンターテインメント型ではありませんが、特に、マスメディアからの関心には大きなものがありました。
どこでもいつも携帯電話
万博会場で多くの中国の人を見ていて、中国人らしさを感じる瞬間があります。まず、多くの皆さんが携帯電話マニアであるということです。どこでもお構いなしに大声で話しているのをよく目撃します。エチケットに欠けると眉をひそめたくなることもありますが、周りの人にプライバシーを公開してもいいのかと思えるような会話を耳にすることもしばしばありました。
数年前、中国で『手機(携帯電話)』という小説が話題になり、その後、映画化、TVドラマ化されました。この小説は、多かれ少なかれ誰もが経験したことのある携帯電話に潜むワナに焦点を当てています。その小説の中で、主人公はこう述べています。
「携帯電話はわれわれ各人の必需品になりました。各種の真偽の定まらない情報が発信されています。食事、睡眠、出勤、交友、麻雀などいろいろなことで携帯電話なしではやっていけなくなりました。誰でも携帯電話には人に知られたくないちょっとした秘密があります。それらが公開されたら社会的不安や家庭崩壊につながりかねません」
万博会場にいると、毎日、携帯電話に会場案内やさまざまな情報がお知らせ音とともに自動的にいきなり入ってきます。
例えば、高温注意報が出ると、「今日は日中摂氏四〇度に達するとの予報です。日差しを避け、水分を多目にとり、時々休憩し、気持ちよく過ごしましょう。気分が悪くなったら、ただちに医者にかかりましょう。上海博覧会事務局より」
誰もが携帯電話で情報交換し、それに基づいて行動します。生活全般のナビゲーターである所は日本と中国ではあまり違いはありません。発信者にとっては実に都合のよい情報伝達手段ですが、受信者には大きな便利さが得られる反面、プライバシー侵害が起るリスクも少なくないはずです。携帯電話は等身大の中国のいろいろな側面を映す鏡のようです。
携帯電話同様、中国人のカメラ好きには目を見張ります。撮るのも撮られるのも大好きなようです。携帯電話が生活必需品なら、カメラはレジャー必需品でしょう。共通点は「場所とプライバシーをあまり構わない」といったところでしょうか。因みに、中国人来場者が携えていたのは、ほとんどが日本製のデジタル・カメラでした。
衣・食・住は生活の基本ですが、中国ではこれに「行」が加わります。国内外旅行の「行」のことで、レジャー、ドライブ(マイカー)、そして、エンターテインメントも含まれます。
中国では、豊かさを実感する人が増えて来ています。今後、この「行」の中に、中国人の行動・思考パターンや嗜好などが濃厚に出てくると考えられます。上海万博見学もこの「行」に入るでしょう。
携帯電話、カメラ好みのほか、「世界最大」「世界初」好みの中国人は少なくありません。例えば、上海万博では、サウジアラビア館が大いに人気を博しました。世界最大の3Dシアターを見るために、最長八時間待ちの行列ができたほどです。
日本の新技術に関心
また、最先端技術が好きな人も多いようです。最先端の環境・省エネ技術やバイオリンを弾くロボット、未来の壁などの実演に関心が集まり、日本館も人気館の一つとなりました。カメラについては、世界最先端の各種性能を備えたデジタル・カメラが実演されています。「あのカメラは市販されているのか」といった質問をよく受けました。
日本館参観者のアンケート調査で、「日本人は好きではないが、日本の技術は好き」という回答がありました。日本の技術に対する中国人の評価が高いことは、日本館にいていつも痛感させられました。
人民中国インターネット版 2010年11月