「報亭」にも新聞離れの影
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島影均 |
1946年北海道旭川市生まれ。1971年、東京外国語大学卒業後、北海道新聞社に入社。1989年から3年半、北京駐在記者。2010年退社後、『人民中国』の日本人専門家として北京で勤務。 |
未曾有の巨大地震でした。北京の新聞スタンド「報亭」で販売されている各紙の一面は地震発生翌日の十二日以降、震災の惨状を伝える写真で埋まっています。
震災に関する中国の反響は本誌の特集をお読みいただくことにして、北京の街角でよく見かける「報亭」を話題にしましょう。
新聞、雑誌を買うときは「報亭」で |
日本では家庭の玄関先まで届ける宅配が新聞購読の常識ですが、中国では「報亭」で販売される部数がかなり多いようです。郵便局で手続きをすれば、宅配購読もでき、郵便配達員が郵便物と一緒に届けてくれます。
私は長年新聞社に勤めていたせいで、朝、新聞を読まないと落ち着きません。毎朝、アパートから雑誌社に向かう途中にある「報亭」で何紙か買って出勤しています。帰りがけにも、夕刊紙を二、三紙買って帰ります。愛読しているのは北京の地元紙の『京華時報』『新京報』『晨報』です。天気予報と生活情報が最大の関心事ですが、交通機関やライフラインに関する情報は外国人の北京生活に欠かせません。
ところで早朝、新聞が「報亭」に届くと、店員さんは大忙しです。別刷りや折り込み広告を本紙に挟みこむ作業をしなければならないからです。経済成長が著しい中国では、不動産、車に関する広告特集がほとんど毎日折り込まれています。本紙は二十㌻程度ですが、読者の手に渡るときには倍以上の分量になっています。
私の愛読紙のほかに、二十紙を超える日刊紙、隔日紙、週刊紙、季刊紙が並びます。さすが文字の国だけあって豊富ですね。日本ではコンビニや駅構内の売店で新聞を縦にたたんで並べるところが多いですが、「報亭」では平積みにしています。週刊紙では『中国国防報』とか『健康報』またピンク色の紙を使ったゴシップ専門の新聞もあります。「報亭」は新聞の他に、雑誌も二、三十種類並べています。また、携帯電話のカードのチャージもここでできますし、飲料水を売っているところもあります。
日本では新聞購読者が加速度的に減少し、どこの新聞社も生き残りに必死の戦いをしていますが、中国でも若者の新聞離れは深刻です。二十年前に滞在したころ、真夏の暑い夜、電柱の灯りの下で、新聞を熱心に読んでいる人をよく見かけ、感心したものです。今では、私が通う「報亭」でも、新聞を買うのは中高年が多数派で、若者はあまり見かけません。
「ニュースは携帯電話で月三元(四十円弱)で読めますよ」と、知人の若い中国人は博物館の化石を見るような顔をします。
「報亭」の常連客の私は店番のお兄さんに大事にされています。時々、端数をおまけしてくれますし、大地震の翌朝は、衝撃の紙面を見ながら、「大変だね。家族は大丈夫?」と案じてくれました。
人民中国インターネット版 2011年5月