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第七回  夏カゼに『藿香正気散』

 

「藿香正気散とは」

藿香正気散は、宋代1151年出版の「太平恵民和剤局方」で発表された処方です。「燥湿和胃剤(そうしつわいざい)」という分類に属します。消化器の不調、胃腸のあたりにジメジメとしたような「湿」や、にごった「濁」があるような停滞感を取り除き、滞った気の流れを正します。香り高い芳香成分の生薬を入れることにより、湿気を取り除き、消化機能を活発にして正常に戻し、食欲を回復させます。

主薬は藿香。日本名「かわみどり」という日陰の山地に育つ多年草です。暑さによる症状を取り除く、除湿、嘔吐を止める、胃腸に対してのケイレンや痛みを止める、胃液分泌を促進し、消化力を増強、気の動きを正常にする、などの効能があります。その他に、蘇葉(シソの葉)、白芷、半夏、陳皮(ミカンの皮)、白朮、茯苓、厚朴、大腹皮、桔梗、甘草の計11種類の生薬で構成されています。利尿作用の生薬が入っているのが特徴です。さらに胃腸の調和を保つように、大棗(なつめ)と生姜(ショウガ)を配合する場合もあります。藿香正気散は、とくに以下の症状がある方にお勧めできます。

夏カゼにかかった人で、舌が大きく膨らんでいて、白い苔がついている。脈に軽く触れただけで脈動を感じ、細くて弱い。濡脈(細くやわらかい感じ)または滑脈(脈の流れがなめらかで、珠がコロコロと転がっているような、横に流れているような感じ)が特徴です。

「藿香正気散の種類」

藿香正気散は粉末ですが、その他に、カプセル、液体、丸状の剤型があります。方剤の最後の漢字が「散」とつくのは、生薬を乾燥粉末にしたもの。そのまま水と一緒に飲みます。「胶囊」はカプセル、「水または口服液」は液体、「丸」は生薬の粉末を蜂蜜、蜜蝋、酒などで固めた球状です。「丸剤」の場合は、体内の吸収は遅いが、効果は長続きします。ちなみに、生薬を煎じて服用するものは「湯」がつきます。この「湯剤」は体内の吸収が速く、効き目も速いです。

液体タイプの藿香正気口服液 

藿香正気散は、一般的に3日間~1週間の服用です。中国では、保健薬として、または予防のために服用している人もいます。日本では、薬局や通信販売で日本製のものを購入できます。医師、薬剤師に相談の上、購入しましょう。

丸薬の製法

藿香正気散は、夏場の消化器の不調に効果を発揮します。中医学でいえば、「脾」と「胃」の気の乱れを正します。次回は、中医学にみる「脾」と「胃」についてです。

(校閲協力=中日友好医院中西結合循環器内科主任医師、杜金行)

 

馬島由佳子

静岡市出身。

外務省在職中に赴任先の北京で中国医学、特に中薬に魅了され、2001年帰国退職後、財団法人交流協会で働きながら東京・本郷にある北京中医薬大学日本校で学び、2008年に国際中医師の資格を取得した。

現在、『人民中国』インターネット部に勤務。

 

 

人民中国インターネット版 2011年7月

 

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