第五回 「中医薬養生文化園」に行ってみよう
馬島由佳子=文・写真
唐の僧・鑑真和上は12年で5回渡日を試み753年、6回目に成功。日本に仏教を伝えるとともに、 生薬を携え中国医学と薬の知識を伝えました。
馬島由佳子 静岡市出身。外務省在職中に赴任先の北京で中国医学、特に中薬に魅了され、2001年帰国退職後、財団法人交流協会で働きながら東京・本郷にある北京中医薬大学日本校で学び、2008年に国際中医師の資格を取得した。現在、『人民中国』インターネット部に勤務。
日本では大陸から伝わった医学をもとに日本で独自に発展した医術を「漢方」と呼び、その薬を「漢方薬」と呼んでいます。中国では、数千年の歴史を持つ中国の伝統医学を「中医学」、薬を「中薬」と呼び、日本と共通のものも数多くありますが、呼び方や人々の関わり方も違います。
本連載は、北京で活躍する中医師のとっておきの話を中心に日本の薬局でも購入できる中薬(漢方薬)を紹介します。さあ、中国の人々の健康を支えている中医学にふれてみましょう!
北京市内には多くの“公園”が点在しています。北京の公園は、日本の町内にある子どもたちの遊び場のような小さな面積ではなく、どこも新宿御苑のように広く、四季を感じられる庭園にも似た造りになっています。
地壇公園内に「中医薬養生文化園」があります。中医学の理論に基づいて建設された園内は、平日はお年寄り、休日になると家族連れでにぎわいます。
今回は「中医薬養生文化園」の見どころをご紹介しましょう。
公園内で中医学を学ぶ
2010年5月、北京市東城区にある地壇公園内に、国内初の中医薬をテーマとした養生園、「中医薬養生文化園」が完成しました。ではまず、地壇公園の入園券2元(約28円)を買って公園に入りましょう。北東角にあるのが養生園です。ここを巡ると、中医薬(中医学)の文化と養生法を学ぶことができるようになっています。面積は2.5ヘクタール。阪神甲子園球場のグラウンド面積が1.3ヘクタールなので、公園の一角とはいえ、甲子園球場グラウンドの約2倍もの面積があります。園内の道と渓流は人体の経絡(気や血の流れる道)の配置をなぞらえ、空から見れば、人体の内経図(人体の臓器図)になっているのが確認できる造りです。
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園内地図 |
園内は、中医学の「五行学説」である、木、火、土、金、水の5つに分けられています。この5つのエリアは人体の五臓に対応し、それぞれの臓器の養生方法をパネルや看板で説明し、中医学の知識を学ぶことができます。中国語で展示されていますが、日本人は漢字が読めるので、ところどころ理解できるところもあり、十分楽しめるでしょう。
水(腎)エリアは、石を「陰陽学説」の“陽”、水を“陰”と表現した造りになっています。金(肺)エリアには、健康歩道があります。小石を道に埋めこんだ、おうとつのある石の道を裸足で歩き、足裏のツボを刺激すれば、マッサージ効果があります。
木(肝)は、お勧めエリアです。“生薬園”を内包しています。“杏林問茶”では、中薬を含むお茶を味わうことができます。“養生坊”では、定期的に北京市内の病院から中医師を招き、無料診察をしています。回廊には、養生茶のレシピをプレートにして展示したり、名医などの像が置かれています。
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土(脾)エリアにある養生広場 |
各所にパネルで説明があります |
<取材を終えて>
今回ご紹介した「中医薬養生文化園」は、日本人には、まだあまり知られていないようです。
園内は、随所に座って休憩できるところがあり、空気も新鮮で、とてもリラックスできます。花が咲き乱れ、緑があふれる春から夏にかけての来園をお勧めします。私は冬にも行ってみましたが、園内は、草花が発芽するのを待つ、眠っている状態でした。
毎年5月には中医薬健康文化祭が開催されます。
北京に短期間の観光旅行でいらっしゃる方も、1時間もあれば園内を回れますので、訪れてみてはいかがでしょうか。
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人民中国インターネット版 2011年5月26日