日中経済交流に新潮流
(財)国際貿易投資研究所(ITI) チーフエコノミスト 江原規由
今年上半期の日中貿易(注1)は、1631億5000万億㌦(前年同期比17.9%増)で、上半期では過去最高でした。輸出が782億3000万㌦(14.3%増)、輸入が849億5000万㌦(21.4%増)で、東日本大震災の影響で輸出の伸びが鈍化したと分析されています。世界経済が低迷するなかで、日中貿易が過去最高となったのは両国経済関係の緊密度が更に高まっている証左といえます。
進む水平貿易化
輸出入品目を見てみましょう。各品目の増減にはそれぞれ特徴がありますが、上記分析から、注目したい品目がいくつかあります。
まず、輸出では、
■中国の労働コスト上昇、人手不足への対策などから、産業用ロボットの対中輸出の伸びが大きかったこと。
■スマートフォンの世界的な需要拡大にともない、その中国生産用関連部品(フラッシュメモリーなど)の対中輸出が伸びたこと。
■震災で被災した工場の部品生産が滞ったことなどから、自動車・同部品の対中輸出が減少したこと、など。
また、輸入では、
■スマートフォンの普及拡大により通信機の輸入が急増したこと。
■震災後対策として、扇風機、発電機、電池、ポータブルラジオが急増したこと。
■価格が上昇したことでレアーアース、レアーメタルの輸入が大幅増となったこと、など。
以上6点から、上半期の日中貿易のキーワードは、コスト(価格)上昇、スマートフォン、震災などが指摘されます。今後、日中貿易は相互依存(相互補完)が高まり、水平貿易化が進んでいくと考えられます。
貿易関係は当事国間の経済交流を映す鏡といってよいでしょう。その増減には投資関係が大きく反映されます。日本の2010年の対中直接投資(FDI)は、42億4000万㌦に達しました。これに対し、中国の対日FDIは、2009年までの投資残高で見ると、中国のFDI全体のわずか0.3%(6億9000万㌦)に過ぎません。