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日中経済交流に新潮流

 

双方向投資時代

最近の中国企業の対日投資を見ると、2010年には比亜迪汽車(BYD自動車)が世界最先端技術を有する金型大手オギワラの工場を買収、山東如意科技集団がレナウンの株式40%を取得、湖南科力遠新能源集団が大手家電メーカー傘下の自動車用ニッケル水素電池事業を買収、中国の投資ファンドが日本の株式市場に進出し、日本企業34社の大口株主になった(『朝日新聞』2010年8月25日)。また、2010年1~9月の対日M&A(企業の合併・買収)のうち、中国企業が関係する案件が3割で対日M&A件数でトップになった(レコフ社)と、報じられるなど、中国企業の対日進出が目立ってきています。2011年に入っても、こうした流れは変わらず、中国投資有限責任公司が米国の投資ファンドと共同して日本の不動産ローンを買収(2月)。中国の肉まんの老舗である「狗不理包子」(本店は天津)が池袋の大手百貨店内でオープン(6月)、そして、海爾(ハイアール)社がパナソニック・三洋電機の洗濯機と冷蔵庫事業を買収し話題となりました。今や、中国企業の対日進出分野は製造、サービス、流通、レストランと多岐にわたりつつあります。

2010年の外資の対中投資(省・自治区・直轄市別、実行金額)の前年比伸び率を高い順に見ると、上位10傑のうち、4位の海南省、8位の遼寧省以外は、すべて内陸部で、上位から順に貴州省、四川省、寧夏回族自治区、海南省、重慶市、雲南省、山西省、遼寧省、河南省、安徽省が並んでいます。日本はどうでしょうか。例えば、ヨロズが三井物産と共に湖北省武漢市に、NTNが河南省の洛陽LYC軸受有限公司と、また、クボタが安徽省で合弁会社を設立、JFEスチールが四川省のPYP社へ出資する(注2)など、中国内陸部は日本企業にとっても新たな投資先として期待が高まっています。また、ジェトロ(日本貿易振興機構)が武漢事務所を新設、中国内陸部の最重要拠点である重慶市が日中産業パーク(重慶両江新区内)の建設に意欲を示しているなど、日本企業や日本製品の中国内陸部への展開に関わる環境がこれまで以上に整いつつあります。

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