日中経済交流に新潮流
成熟度の試金石
日中両国の経済交流は、貿易で水平化が進展し、投資では双方向の時代を迎えつつあり、良好な関係を維持しているといえるでしょう。こうした関係を維持、発展させる上で注目すべきなのは、目下、中国が重点産業として育成・発展している文化産業(注3)における日中交流の行方にあるといえます。最近の状況を見てみましょう。
■2010年10月、日中合弁の中国出版東販株式会社が東京に設立。
■2011年5月、中国で日本映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説』が全国公開、上映1カ月で、これまで中国で上映された日本映画の興行収入を更新。2011年第2四半期の輸入映画興行収入ランキングで10位入(ジェトロ通商弘報、2011年8月8日)。
日中合作アニメ『チベット犬物語』のポスター |
■日中アニメウィークで、温家宝総理が開幕式に出席後、日中合作アニメ作品『チベット犬物語』展示コーナーを訪れ、自ら作品制作の状況を尋ねた(注4)。
■中国語映画の日本での上映計画(『サンザシの樹の下で』、中米合作大作『SHANGHAI』が日本で上映など)が目白押し(注5)。
■中国の共同購入サイト「満座網」がドラえもんをイメージキャラクターに採用(注6)。
■パナソニックは8月1日、中国のインターネットショッピング大手・淘宝商城の電器城に進出し公式ブランドの旗艦店舗を開設(注7)。
■『源氏物語』や『枕草子』『伊勢物語』『十三夜』の中国語訳本が訳林出版社から出版。中国大陸で初めて(注8)。
■半年前、コスプレ会や日本のアニメ試写会が開催される「メイドカフェ」が北京市朝陽区に開店、目下、北京の街に新たな風を吹き込んでいる(注9)。
■2011年9月3日、北京で開幕した第16回北京国際ブックフェアに出展した日本の大手出版社が対中進出しマンガ雑誌、アニメなどを制作すると発表(2011年9月4日テレビ東京)。
文化産業での日中交流はこれまで活発とはいえませんでしたが、今後、大きく発展する可能性を秘めています。文化産業の交流が増えれば、日中間の相互理解の促進につながり、両国間経済交流の深化・発展につながるとする識者は少なくありません。
文化交流の拡大で、日中貿易・投資関係はさらに深化を遂げつつあるわけです。
注1 日本貿易振興機構が財務省発表の円建て貿易統計をドル換算し発表したもの。
注2 『中国経済』2011年6月号、ジェトロ。
注3 メディア、アニメ、映画、レジャー、ゲーム、観光、教育、インターネット、情報サービス、音楽、演劇、博物館活動など。
注4、注5、注6、注7、注8、注9 2011年人民ネットからで、それぞれ6月17日、27日、30日、8月2日、11日、16日より。
(財)国際貿易投資研究所(ITI) チーフエコノミスト 江原規由 1950年生まれ。1975年、東京外国語大学卒業、日本貿易振興会(ジェトロ)に入る。香港大学研修、日中経済協会、ジェトロ・バンコクセンター駐在などを経て、1993年、ジェトロ大連事務所を設立、初代所長に就任。1998年、大連市旅順名誉市民を授与される。ジェトロ北京センター所長、海外調査部主任調査研究員。2010年上海万博日本館館長をを務めた。 |
人民中国インターネット版 2011年10月