ビッグヒットになるか!?『画皮Ⅱ』
文・写真=井上俊彦
2011年には131億元の興行収入を記録するなど躍進を続ける中国映画。大作化、3D化が進む一方で、ローバジェット作品から大ヒットが生まれるなど、目が離せません。また、大都市から地方都市までシネコンの整備もこのところ急速に進んでおり、快適な映画館が増えています。そこで、実際に映画館に足を運び、北京の人たちとともに作品を楽しみ、作品に関連する話題からヒットの背景、観客の反応なども紹介していきます。
これまでの興行成績を書き換える出足
ポスター
日本でも『画皮 あやかしの恋』がこの8月に公開されるそうですが、中国では早くも『画皮Ⅱ』が公開されました。公開初日の6月28日にはゴールデンタイムの座席稼働率がほぼ100%という驚異的な数字をたたき出し、初日興行成績は7000万元と、これまでの国産映画の記録を書き換える出足となりました。
ジョウ・シュン、ヴィッキー・チャオ、チェン・クンという人気俳優3人がまたも勢ぞろいした作品は、どうやら前作をはるかに上回る大ヒットになりそうですが、作品の出来以外のヒット要因を勝手に分析してみました。まず、『2』ということで早くから作品情報が行き渡り期待度が高かった。ハリウッドものにしろ国産にしろこの数週間大作がなかった。ちょうど卒業式シーズンでこの週末から夏休みに入った学校も多かった。ビッグスター共演で純愛、ホラーの要素を持ち、3Dという付加価値もあった。つまり、彼女をデートに誘うにはもってこいの作品だったというのが大きな理由では、というのが私の見方ですがどうでしょうか。
私は公開4日目となる日曜日夕方の回を見に行ったのですが、2時間後の回でも端の方の席しか確保できませんでした。博納影城朝陽門旗艦店では1日23回の上映を行っているにもかかわらずです。若いカップルに混じってチケット・カウンターに行列しましたが、私は「団購」と呼ばれる共同購入でチケットを確保してありました。というのも、今回は3D作品でかなり料金が高いからです。博納はそれでも100元と抑制ぎみの価格設定ですが、他の映画館では120元から130元、中には150元というところもありました。
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1日に23回の上映をしているにもかかわらず、直近の上映回はすでに満席。続くいくつかの回も良い席はすでに予約されている状態だった |
ロビーに置かれた宣伝用巨大ディスプレー |
この機会に、中国での映画チケット共同購入の流れを簡単に説明しておきましょう。まずネットの共同購入サイトで目的のチケットを探しますが、いろいろな映画館のチケットがあり、値段や含まれる内容、条件が違います。特に3D作品の場合は使えない、もしくは追加料金が発生するなどの条件がついていることがありますので注意が必要です。私が購入したものも3D作品は5元の追加料金がかかるものでした。購入が成立すると、携帯電話にショートメッセージで番号が送られて来ます。この番号を映画館のカウンターで見せると係員がそれを入力して確認し、座席券が発行されるのです。現場での手続きは極めて簡単で、係員との込み入ったやり取りも不要ですので、中国語会話に自信のない日本人でも問題ありません。カウンターを見ていると、多くの人が係員にケータイを見せていましたので、共同購入の観客がかなり多かったようです。
ネット上に広がる賛否両論
さて、久しぶりに満員の大ホールで鑑賞しましたが、やはり大勢の人と一緒に映画を見るのは楽しいものです。ベテラン歌手のクリス・フィリップス(費翔)が怪奇メークで登場すると、緊張の場面なのに会場いっぱいに笑い声が響くなど、思いがけない観客の反応も直に感じられます。
物語は怪奇部分はそれほど多くなく、純愛に重点が置かれているなど、第1作とはかなり趣を異にします。それもそのはず、今回は監督にウーアルシャンが起用されているのです。昨年、安藤政信、キティ・チャン(張雨綺)主演の『ブッチャー・シェフ・アンド・ザ・ソーズマン ‐肉屋とシェフと剣客と 刀見笑』を見て、その時から独特な感覚を持った監督だと感じていましたが、その感覚は今回の作品にも反映されていたと思います。前作と同じパターンを期待した人をがっかりさせた面もあるようですが、私は、これはこれでまあ面白い作品だと思いました。
チケット売り場をはみ出し、隣接するグルメ街にまで伸びた長蛇の列 |
ちょうどこの日の深夜に、サッカーのヨーロッパ選手権決勝が行われるということで、映画館の入る悠唐生活広場ではイベントも行われていた |
前作とは独立したストーリーなので、ことさら両者を比較して評論する必要もないかと思いますが、ネットには賛否両論があふれており、細かな点をあげつらい批判する意見も多く見られました。確かに、「あれ、あのキャラクターはどうなったの?」というストーリー上の疑問もありましたが、まあそれは本筋ではないので我慢しましょう。1つだけ言わせてもらいたいのは、3Dがあまり効果的ではないと感じたことです。中国では3D映画は通常作品の倍近い料金を取るわけですから、制作側はそれに見合うだけのクオリティーを出すべきだと思います。
さて、その後の報道によると、私が見た日曜日まで4日間の興行成績が約3億元となったそうです。これは、国産映画としては史上最速、ハリウッド映画を含めても過去3位の好成績だそうです。
【データ】 画皮Ⅱ Painted Skin:The Resurrection 監督:ウーアルシャン (烏爾善) 出演:ジョウ・シュン(周迅)、ヴィッキー・チャオ(趙薇)、チェン・クン(陳坤)、ヤン・ミー(楊冪)、ウィリアム・フォン(馮紹峰) 時間・ジャンル: 135分/怪奇、ファンタジー、愛情 公開日:2012年6月28日
北京博納影城朝陽門旗艦店 所在地:北京市朝陽区三豊北里2号悠唐生活広場B1 電話:010-59775660 アクセス:地下鉄2号線朝陽門駅から徒歩7分 |
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プロフィール |
1956年生まれ。法政大学社会学部卒業。テレビ情報誌勤務を経てフリーライターに。 1990年代前半から中国語圏の映画やサブカルチャーへの関心を強め、2009年より中国在住。 現在は人民中国雑誌社の日本人専門家。 |
人民中国インターネット版 2012年7月3日