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日本語トライアスロン

 

ロンドン五輪が近づいています。日本国民が東京五輪(1964年)に続くメキシコ五輪に注目したように、4年前に北京五輪を成功させた中国国民は、ひときわワクワクしてロンドン五輪を待っているようです。五輪種目の中で過酷さで一二を争うのがトライアスロンです。水泳、自転車ロードレース、長距離走の3競技に一人の選手が挑戦する超人的な種目です。

5時間に及ぶ「激戦」のあとで行われた閉会式。選手の前であいさつする傅頴国際放送日本語部長

さて、先日、筆者がひそかに「日本語トライアスロン」と名付けたコンテストの審査員を頼まれました。中国国際放送局(北京放送)と北京語言大学が共催した第一回全国日本語アナウンス・通訳コンテストです。日本語の作文コンクールやスピーチコンテストの審査を頼まれることはありますし、前回、北京に滞在した20数年前には大学対抗日本語カラオケ大会の審査を頼まれたこともありました。そうしたコンテストの中で、今回は最高レベルと言っていい日本語能力が求められました。

この決勝レースに出場したのは予選を通過した15大学の代表選手で、男子はふたりだけ。第一関門はニュース原稿のアナウンスで、15人全員が同じ原稿を読み上げます。東日本大震災後、中国人ツアーが初めて福島県に到着したという内容です。空港を「クウコ」と発音するなど、中国人が苦手な日本語の長音に難点はありましたが、ほとんどの人がなめらかな日本語でした。第二関門は日本語から中国語、中国語から日本語への通訳。プロのアナウンサーが読み上げる内容を即座に通訳します。時間制限があり、もたもたしていると「チーン」とベルが無情に鳴り響きます。完全失業率とか、円と人民元の直接取引といった硬いニュースもあれば、「草食系男子の定義は、恋愛に縁がないわけではないのに、積極的ではなく肉欲に淡々とした男の子です」などというのもありました。

第二関門で6人が落選。残る九人が最終関門へ。全員女子。最後はコンテスト名には入っていませんが、模擬実況中継です。2時間前に示された3枚の写真の中から一枚選び、スクリーンの大画面を見ながら、マイク片手に「北京マラソンのゴール地点からお届けします」と実況放送をするわけです。

皆さん、物怖じせず、よどみない日本語で、にこやかにリポートしていました。日中5人ずつ、合わせて10人の審査員は順位を付けるのに苦労しました。

優勝したのは北京語言大学大学院3年の曹逸氷さん(23)。彼女は国際放送のインタビューに「中学生のころ、アニメや漫画で日本語に興味を持ちました。卒業後はフリーの通訳になりたいと思います」と、答えていました。

さて、中国の日本語教育ですが、1100余ある4年制大学の4割以上の466大学が日本語科を設けており、第二外国語で選択している学生や日本語学校に通っている人を含めると、百万人以上が日本語を勉強しているそうです。

日本でも中国語を専攻する学生が増え、日中経済交流が拡大するにつれ、サラリーマンにも中国熱が広がっているようですね。双方で言葉の障壁が少しでも低くなればいいと思います。日本でも「中国語トライアスロン」を試してみてはいかが?

島影均

1946年北海道旭川市生まれ。

1971年、東京外国語大学卒業後、北海道新聞社に入社。

1989年から3年半、北京駐在記者。

2010年退社後、『人民中国』の日本人専門家として北京で勤務。

 

人民中国インターネット版 2012年8月12日

 

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