魯迅のひ孫は北京留学中
文=島影均
魯迅のひ孫で、日本人の双子姉妹・田中華蓮さんと悠樹さんの2人と久しぶりに北京の魯迅博物館を訪ね、魯迅にまつわるエピソードや、北京の大学生活などについて話を聞きました。
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魯迅博物館の前庭でくつろぐ田中華蓮さん(右)と悠樹さん |
魯迅の一人息子の周海嬰氏(1929~2011年)が母方のおじいさんで、お父さんはこのコラムでも紹介したことのある魯迅博物館の専属カメラマン・田中政道さんです。ということで魯迅の血筋を引く4代目に当たるわけです。
2人は東京都・武蔵野市で保育園から中学校まで過ごし、高校と大学は北京という日中半々の教育を受け、現在、華蓮さんは人民大学でメディア論を専攻し、悠樹さんは北京大学で中国文学を専攻し、昨年4年生になった2人は、共に日本のマスコミ、出版業をターゲットに就活中です。中国語も流暢でうらやましい限りのバイリンガルです。
「魯迅の血を感じることある?」と尋ねると、声をそろえて「全然ありませんよ」と笑顔で答えてくれました。元新聞記者の好奇心で「例えば筆跡が似ているとか?」と二の矢。ところが「魯迅は達筆ですが、私たちは・・・」と、期待したような奇跡的な話は聴けませんでした。
物心ついた頃には「魯迅のひ孫」ということを聞き、小学生の頃、江沢民国家主席(当時)が訪日時に、魯迅ゆかりの仙台市を訪問した際には、記念行事に両親と共に招かれたこともあるそうです。魯迅の作品を初めて読んだのは中学校の教科書に載っていた『故郷』。
北京に留学してからは、中国語でも作品を読んだそうですが、感想を聞くと、華蓮さんは「難解の一言に尽きます。大まかなストーリーを読むことはできるのですが、読み終わったら、必ず、さてどういうことだったのかと常々疑問に思います」。悠樹さんは「魯迅の作品は希望にも似た不安を解消してくれることはなく、ただ影のように不安を見守ることしかないような気がします。それをどう思うかは自分たち次第です」と、それぞれ魯迅文学の本質の一面をついています。
お父さんの手ほどきで中学生時代から始めたゴルフはかなりの腕前。今でも悠樹さんは大学のゴルフクラブのメンバーで教える側。年に何回かコンペに参加するそうですが、2人ともコンスタントに90台をキープするスポーツ・ウーマンです。
日本も中国も「就職氷河時代」と言われていますが、2人が希望通りの就職先を見つけることを願っています。
人民中国インターネット版 2015年1月