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北京の水道に「長江の水」

 

文=島影均

慢性的な水不足に悩まされてきた北京に、はるかかなたの長江の水が運ばれ、水道水として利用され始めました。中国語では「南水北調」と言います。「南船北馬」がよく知られていますが、古来、長江から南は水が豊富で水運が盛んでした。その豊かな水を水不足の北方に運ぼうというアイデアが生まれたのは新中国成立間もない1952年でした。昨年末に通水式が行われましたが、北京の市内各紙は「南の水がとうとうやって来た」と北京市民の歓迎の気持を代弁していました。

長江支流の漢江で取水し、湖北・河南省境の丹江口ダムに貯めた水を約1300㌔の明渠、暗渠を通し、北京郊外の数カ所の浄水場に運びます。15日間かかるそうです。ここで浄化し、水道水として水質基準をクリアさせてから、水道水として2115万人(昨年)の市民に提供するのです。万里の長城、大運河など巨大な建造物に驚かされますが、この「南水北調」も21世紀の大事業の一つに数えられるでしょう。

北京では年間36億立方㍍の水道水が必要で、2000年には配水量が40億立方㍍に達したそうです。これに対して給水量は21~22億立方㍍ですから、大幅に不足し、近隣の河北省から「もらい水」をしていました。通水が始まった「南の水」は今年末には年間10億5000万立方㍍に達し、「もらい水」をかなり減らすことができそうです。

ちなみに東京都は約1300万都民に利根川、荒川、多摩川水系に建設された多数のダムでせき止めた水を年間約15億立方㍍配水しています。

ところで、「南水」の記事を読んでいた時、突然「水軟」という言葉が目に飛び込みました。「南水は軟水」なのかと早とちりしてしまいました。そんなはずはなく、「北方の水質に比べて軟」と意味でした。

北京の水道水は「硬水」、日本は「軟水」ですから、日本人には実は「水が合わない」のです。北京に長期滞在する日本人の間でよく出る水の話に、石けんが泡立ちづらい、ご飯がおいしくたけない、肌が荒れる、緑茶の風味がでないなどがあります。

筆者が四半世紀前に北京に滞在していた当時、単身赴任の男たちの酒飲み話で「メシをうまく炊く方法」が真剣な話題でした。中には「オリーブオイルを入れて炊く」という根拠がよく分からないアイデアもありました。

北京の日本人は飲み水にするために水道水を湯冷ましにしたり、飲用水を買って飲んでいます。筆者も米をとぐ時は水道水ですが、炊く時は飲用水を使っています。最近では飲用水を18㍑25元(約500円)前後で配達してくれますから便利になりました。

昨年12月末、北京の団城湖明渠で「南水」が流れ込む瞬間を見守る関係者ら(新華社)

 

人民中国インターネット版 2015年2月

 

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