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新疆・ハミの太陽と風と…

 

「ハミ瓜はどんなところになっているのだろう」――新疆ウイグル自治区の区都ウルムチ(烏魯木斉)市からハミ(哈密)市に向かう車中で想像をめぐらしました。窓から見えるのは天山山脈の灰色に近い茶褐色の荒涼とした景色ばかり。休憩で車外に出ると、ギラギラと太陽が照りつけ、爽やかとは言いがたい熱風が吹き、空気はカラカラに乾燥していました。はるかかなたに、万年冠雪の高山も。

広々としたハミ瓜畑。地元の味は食べてみないと分からない
このあたりがシルクロードかと思い、少し前、見物した西安の記憶と重ね合わせてみました。長安と呼ばれていた時代、もう一つの大都会ローマとの物流はいかに困難だったことか。

3泊4日のドライブの総走行距離は約2000キロ。新疆の面積は中国の6分の1、日本の4倍以上もあり、天山山脈の東側のハミ地区だけで、北海道の1.5倍もあることは調べてありました。車で走ってみて、これが中国語の教科書によく出て来る「地大物博」なのだ、と実感しました。「土地が広大で資源が豊富」と辞書には書いてありますが、文字通り百聞は一見に如かず。

茫漠とした車窓の風景に時々生き物が登場します。遊牧民に追われる羊群。ゆったりとわずかしかない草を食む牛や馬。ラクダの群れも見かけました。荷物は積んでいませんでしたが…。

単調な景色に突然、林立する風車群が現れました。風力発電です。ハミ地区を象徴する言葉のひとつが「風庫」―「風の倉庫」です。風向、風力がほぼ一定している風は風力発電に適しているのですね。風車は日本でも見かけますが、ここのは半端な本数ではありませんでした。

もうひとつ「光谷」―「太陽光の谷」という言葉も案内の人から聞きました。大地を干からびさせるほど強烈な太陽光線もパネルで集めると電気に変わる貴重な資源です。この地区はもともと石炭が豊富で、長い間、列車で人口密集地に運んでいましたが、これを火力発電所で電気に変えて、隣の甘粛省はじめ河南省などの消費地に送っています。それに風力と太陽熱が加わって「電源地」になっているのです。

いよいよ期待のハミ瓜農園です。日本で輸入が解禁されたのは20数年前でしたが、どこかのデパートが1個1万円で「シルクロードの味と香り」と銘打って売り出し、爆発的な人気を呼んだことを記憶しています。名産地のひとつイウ(伊吾)県のハミ瓜農家は「似たようなのがあるが、ここのとは比べ物にならないよ」と、自信満々。取材団に畑の脇で採りたてを振る舞ってくれましたが、完熟して亀裂ができているハミ瓜の味は、日本や北京で口にするのとは「モノが違う」と感じました。

「サクサク、とろり」とした食感で、ガリガリではありません。口いっぱいに甘みが広がります。筆者も一個分くらいはいただきました。試食させてもらったのは重さは2~4キロで、地元では1個10元と言っていましたから、120円くらいですね。108種類あるそうで、その内の何種類かを食べ比べましたが、味覚は微妙に違いました。

新疆人口約2200万人の60%前後が47の少数民族です。ハミ地区は少ない方ですがそれでも約30%を占めています。ウイグル族の民族ミュージカル「ムカム」をハミ市の伝承館で初めて見せてもらいました。軽妙な打楽器と弦に合わせて歌い、踊るムカムは遊牧の疲れを癒す集落の団らんだったのでしょう。

島影均

1946年北海道旭川市生まれ。

1971年、東京外国語大学卒業後、北海道新聞社に入社。

1989年から3年半、北京駐在記者。

2010年退社後、『人民中国』の日本人専門家として北京で勤務。

 

人民中国インターネット版 2012年11月7日

 

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