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太極拳風?ラジオ体操

 

「北京秋天」の下で体操をして、深呼吸するのは気持ちがいいものです。筆者は昨年春から職場の中庭で中国人の同僚と一緒に毎日午前10時と午後3時の二度、中国版のラジオ体操をしています。小学生のころ、夏休みになると、毎朝6時半に家の近くの空き地に出掛けて、NHKのラジオ体操をしたことを思い出して、中国版のラジオ体操に挑戦しています。

北京五輪開幕3周年を記念して、2011年8月8日、第9次ラジオ体操を披露する北京体育大学の学生ら(新華社)
見よう見まねで試してみて、「どこか太極拳に似ているな」というのが第一印象でした。

ラジオ体操第一は戦後1952年に復活して以来、内容は変わっていないようですが、中国では1951年からスタートし、現在は第9次バージョンです。筆者が昨年始めたころは第8次でしたが、昨年夏、14年ぶりに国家体育総局が新バージョンを発表しました。

日本版は「伸びの運動」から始まって「胸をそらす運動」「腕を上下に伸ばす運動」など13項目ですが、中国版は第8、第9とも「その場で足踏み」から始まる8項目です。各項目「8拍」は日中同じ。日本版は同じ項目を二度繰り返しますが、中国版は4度ですので、どちらも所要時間はほぼ5、6分でしょうか。伴奏は日本はずっとピアノですが、中国は変遷を経て、第9はオーケストラの伴奏で、曲は中国風と西欧風のミックスです。司会は男声から女声に変わりました。

国家体育総局によると第9はパソコンの前に座りっぱなしのサラリーマンのために考案したもので、下肢の運動を増やしたそうです。職場ではレコーダーを聞きながら、第8、第9を続けてしています。大昔、小学校の先生に「手足は真っ直ぐ伸ばして」とか「手を握る時は生たまごを持っている感じで」と注意されたことを思い出し、きっちり手足を動かすと、結構汗をかくほどの運動量です。日本でもラジオ体操ファンは多いようですが、筆者の職場にも欠かさず参加する常連がいますし、公園で携帯に録音した曲に合わせて、一人でしている人も見かけます。

高齢化が急速に進み、遠からず、日本を追い抜いて世界一の老人大国になる中国では、国民の健康づくりに必死で取り組んでいます。医療費増を抑えるためには元気な高齢者を増やすのが近道という考えで、全国各地の街角や小公園にはさまざまな運動器具が備えられています。ラジオ体操も小中学生はもとより、働き盛りのサラリーマンにも、自ら健康管理をする習慣を付けさせるのが狙いでしょう。

「身体を回す運動」は「飛んできた蚊をたたきつぶすつもりで」とか「全身運動」は「時代劇で臣下が皇帝にお辞儀をするように」など、ラジオ体操を普及するために動作の説明にもいろいろ工夫をしています。

中国のラジオ体操史を見ると、太極拳や伝統武道の動作を取り入れた時代もあったようですから、そのDNAが第9にも残っているのかも知れません。しかし、「太極拳のように見えるのは、8拍をだらだらやっているからそう見えるだけですよ」と、筆者の印象をあっさり否定する中国人の同僚もいます。そう言えば、だらだらやって、先生から「びしっとやれ」と怒鳴られたことがありました。

島影均

1946年北海道旭川市生まれ。

1971年、東京外国語大学卒業後、北海道新聞社に入社。

1989年から3年半、北京駐在記者。

2010年退社後、『人民中国』の日本人専門家として北京で勤務。

 

人民中国インターネット版 2012年11月7日

 

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