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時間厳守はアイデア勝負 宅配便の配達員

 

王焱=文・写真

技術が普及し品数が豊富になるにつれ、中国でもネットショッピングをする人が増えている。2012年、中国のネットショッピング利用者数が2億2000万人に到達し、市場規模は1000億ドルを突破したとされている。各大手家電量販チェーンによる年末商戦が繰り広げられ、市場はさらなる熱気に包まれた。それと同時に、多忙を極めるようになったのが宅配便の配達員だ。

大学構内で荷物を届ける曹さん(右)。彼の以前の仕事は、飲料水の配達だ。曹さんによると、「飲料水の配達は簡単な配送業務ですが、宅配便の配達員は集荷から配達まで、配達コースの全工程で業務があり、何か問題が生じるならすべて責任を負わねばなりません」

「速達」が宅配便のモットー 

曹中希さん(45)は北京師範大学に常駐している圓通速逓有限公司の配達員だ。彼は毎朝7時前には起床し、速達荷物のバーコードを読み取って荷積みし、午前9時には三輪電動車に乗って出発する。荷物の配達と集荷を午後9時まで行い、その後顧客から預かった荷物の梱包を済ませて、ようやく一日の業務が終了する。  

配達員の仕事について尋ねると、彼は即座に「時間です!肝心なのは時間です!時間はいくらあっても足りません」と答え、「速達、重要なのは速達です。この仕事はスピードが命です。もし時間指定がなければ、だれにでもできる仕事でしょう。でもそれでは速達とは言えません」と付け加えた。

もしも配達員が、遅れるならば、顧客が損失を被る可能性がある。曹さんは、「駆け出しの配達員がよく犯すミスは、書類型速達物の優先度を見誤ることです。ただの大型封筒に過ぎないと考えて、箱物や小包を先に配達しがちです。もちろんネットショッピングで購入した服や皮革製品なども貴重品ですが、重要書類や証明書などは、かけがえのないもので、もし時間指定に間に合わなければ、受取人の就職や昇進など、一生に一度のチャンスが失われることになるかもしれません」と語った。

1日の配達量は300個以上 

ではどうやって時間をコントロールするのか?この核心を突く質問に曹さんはこう答えた。「配達員になるには、物事をてきぱきとこなす能力を身につける必要があります。毎朝出発前に配達と集荷の両方を効率よく行える最適なルートを考えなければなりません。そして集配センターから出発した後は、漏れがないように注意深く集荷と配達を同時進行で行います。なので出発の時も戻る時も車はずっと荷物が満載です」  

事前の計画だけでは突発的な変更に対応できない。彼はいつも携帯しているメモ帳を見せてくれた。そこには、「送りたい物があるので来てほしい」「午後から外出するので、正午前に届けてほしい」など顧客からの依頼内容が書かれていた。「顧客から電話があるたびに、メモ帳に記録して、常に最新の状況下でルートを再考し最適なルートを選んでいます」

記憶力も見やすくて便利なメモには及ばない。曹さんがいつも携帯しているメモには、最新の状況が記されており、いつ何を受け取ったか簡潔明瞭に記録されている

2012年、曹さんの優れた働きが表彰され、全国五一労働勲章が授与された。速達宅配業界では初受賞という快挙だ

より速く配達するために、さまざまな時間帯の人や車の交通量からそれぞれの道にある減速帯の数まで、曹さんは熱心に研究している。また彼は受取人の携帯電話番号の末尾ナンバーに応じて、荷物を1から9まで分けて管理し、必要な時にすぐ取り出せるようにしている。 

「最も忙しかった日には、私1人で300個以上の荷物を配達したことがあります」と曹さんは述懐している。

温もりを込めて荷物をお届け 

原則として、配達員は各々の荷物を受取人の家の玄関まで届ける必要がある。しかし、中国では基本的に夫婦は共働きで、日中は不在の家が多いため、配達人が荷物を会社に届けることが一般的だ。また、オフィスビルや宿舎棟など、人が多いところでは速達物の取扱量も極めて多い。そこで配達効率を上げるために彼らは、建物の近くで待機し、受取人たちの携帯にSMSで荷物の到着を知らせて、取りに来てもらうことがある。しかし、一部の受取人は決まって配達人を待たせる傾向があるので、ある配達員は、「取りに来るのが遅れる場合は待たない」と注意を促したところ、かえって受取人の反感を買ってしまったそうだ。  

曹さんも同様の難しい状況に直面したことがある。このような学生の場合、催促してもダメだが催促しないのも良くない。そこで曹さんは思い切って、ユーモアに富んだ詩を作ってSMSで彼らに送ることにした。 

「忙しく頑張るのも大事だけど休憩も大事だよ。メリハリのある勉強と休憩が一番健康的さ。荷物が届いたから取りに来てね。曹が一階で待っているよ。慌てなくて結構、急がなくて結構、少し待ったってどうってことないよ。でもあんまり待たせすぎないでね」

「SMSを打つのに時間はかかりません。いつも気が向くままにSMSを送っています。見たことや感じたことをそのままSMSで表現しており、生活そのものがメッセージの題材になっています」と曹さんは語った。

数日おきに、曹さんは新しい詩を作っている。その人間味ある語り口とユーモアのある内容に、受取人は非常に温もりを感じ、曹さんは瞬く間に師範大学で最も有名な配達員となった。集荷や配達の時、みんな嬉しそうに彼に挨拶し、「曹さん」「曹おじさん」と呼んでいる。

顧客が荷物を発送したいときに、すぐに思い出してもらうため、配達員も名刺を準備し、配っている。曹さんの名刺の裏側には、「生活態度は幸せを量る物差し」という格言が印刷されている。曹さんによると、この言葉は40年にわたる人生で身を以て実感した至言だそうだ

受取人の携帯電話番号の末尾ナンバーに応じて、荷物を1から9まで分けて管理している荷物棚

曹さんは楽しみながら配達員の仕事を続けている。「人はみんな繋がっています。私に返信してくれる教師や学生もいます。中には詩を作って送ってくれる人もいますよ。その一つひとつの詩を大切に保存しています。彼らから返信をもらうとき、私も彼らに理解され尊重されていると感じます。これはサービス業ではまず味わえないことであり、この仕事を続ける動機づけにもなっています」

 

人民中国インターネット版 2013年3月21日

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