「九九八十一」で春が来る
河北省のある農家が春節に豊作と多幸を祈願して壁に貼った年画。地方色のある言い方の「九九歌」が載っている。ところで年画の子どもは何人? |
今年の北京は高速道路が雪害で閉鎖されたほど雪が降り、最高気温が氷点下の真冬日が続きましたが、1月に「九九」の第5セット「五九」に入ると「冬は半分過ぎた。春遠からじ」と、元気が出てきました。ただ今年の1月はPM2.5というスモッグが北京生活を息苦しくさせ、深呼吸しても大丈夫な日はわずか5日しかありませんでした。
国営テレビの定時ニュースでは必ず旧暦の日付を言いますし、北京の市内紙には天気予報や立春から大寒までの二十四節気を話題にしたページがあり、旧暦は庶民生活に欠かせません。確かに、北京で暮らしていると、旧暦の季節感がぴったりなのです。20数年前、40代で北海道新聞の特派員として滞在していた当時は「北京には夏と冬しかないな」と大ざっぱな季節感しかありませんでしたが、高齢者になってみると、旧暦の季節感が実際の暑さ寒さによく合うのです。
今年の春節休暇は2月9日の除夕(大晦日)から15日まで7連休でした。法定祝日は3日間ですが次の土日の休みも寄せて合わせて「長期休暇」にしたわけです。春節と言えば花火と爆竹です。ところが北京の大気汚染は人ごとでありませんから、自粛ムードが定着したのか、花火、爆竹の販売高は昨年の半分程度に減ったと、市内紙には北京市幹部の謝意が掲載されました。
筆者は元日に当たる10日、道教の有名なお寺・白雲観に行ってみました。狭い敷地に30を超える祠があります。それぞれ違う神様がまつられ、分業しているらしく、人気があるのは健康の神様、金儲けの神様でした。新暦の正月には東京・浅草寺に初詣に行って来ましたが、ガードマンが参拝規制しているのを見て、筆者を含めて日常さほど信心深くない人々も初詣は特別らしいと感じました。北京の道教寺院に参詣に来ていた人々も年に一度の信者が多いように見えました。
さて、「九九」に戻りますが、「一九二九不出手、三九四九氷上走、五九六九沿河看柳、七九河開八九燕来、九九消寒」とうたう「九九歌」もあります。残念ながらフシ付きでは聞いたことはありませんが、「氷の上を歩く」最も寒い時期を乗り越えると「河岸のヤナギが芽吹き」、河の氷が解けると「ツバメが飛んで来て」寒い冬が「消えてゆく」。この実感が北京ではあるのです。近年は寒さよりもみなさんの関心は大気汚染情報に集まっていますが……。
今年の「九九」の最後の日「九九第九天」は3月11日です。この日は東日本大震災からちょうど2年になります。春到来を心待ちにしている中国の人々もあの日の衝撃を決して忘れていません。
島影均 1946年北海道旭川市生まれ。 1971年、東京外国語大学卒業後、北海道新聞社に入社。 1989年から3年半、北京駐在記者。 2010年退社後、『人民中国』の日本人専門家として北京で勤務。 |
人民中国インターネット版 2013年3月