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「中国通」を目指して

2012年夏、走れば走るほど仲間が増えたサイクリングの途中、雲南省瀘沽湖を望む(写真提供・筆者)

中山一貴 (なかやま かずき)1991年8月、東京生まれ。東京外国語大学外国語学部中国語専攻3年。昨年から今年2月まで北京師範大学に留学。日中交流学生団体「京英会」の日本側代表。ブログ「北京を学び、食す」は夢への懸け橋。

中国語の勉強を始めて3年目の昨年、北京師範大学の交換留学生として「中国通」への一歩目を踏み出しました。留学生活の後半は文学部で中国人学生と共に過ごし、論語を中国語で読みました。書き下し文でも日本語訳でもない論語は孔子の声そのもの。孔子が漢字一字一字に込めた思いを読み取らんとする戦いは、まさに時空を超えた交流です。そして音読する。漢文としての論語からは感じることのできなかった音、リズムの美しさにひたりました。さらに暗記する。中国人学生が当たり前のように暗記している文章を脳裏に刻み込んでいきます。以前は憧れだった漢文の一節を日常生活の中で引用し、友人にほめられた際の快感はたまりません。

快感と言えば、北京に来てから歌うことが好きになりました。というのも、 中国人は出し物を大いに好み、たとえ上手くなかろうと、私が日本の名曲や中国語の歌を披露すると、皆喜んでくれるので、楽しいからです。李玉剛という男性歌手が京劇風に女声で歌う『新貴妃酔酒』という曲が流行していますが、友人に勧められるままに、数百人の学生の前で壇上に立ち、この曲を歌うことになりました。およそ1カ月間、京劇専攻の学生の指導のもとで練習し、本番は何とか成功を収めることができ、中国文化に溶け込めたかのような快感に酔いしれてしまいました。

ここで太極拳の先生を紹介したいと思います。「現代風の太極拳で鍛えても健康にならないし、かえって膝を悪くする」と言い切る先生は、伝統的な楊式活歩太極拳を老若男女問わず教えています。先生の太極拳の効能は先生を見れば一目瞭然。50歳を超えてもなお若々しい髪と肌。若者が思いきり力を入れても、それをさらりとかわす護身術。白い中山服に身を包んだ姿は、ジャッキー・チェンをほうふつさせます。そんな先生と共に1年間、毎週1回2時間の練習を続け、曲がりなりにも人前で披露できるようになった頃、「一貴、俺の太極拳を東京で広めてくれ」。映画によくあるストーリーのような展開に戸惑う私を見つめる先生の瞳は本気でした。東京のとある公園で突然、太極拳を始める若者がいたら、それはきっと私です。

この1年間、私を夢中にさせた中国の魅力はこれだけではありません。店員や警官でもすぐ友達になれる人当たりの良さ。計3カ月に及ぶ独り旅で体験した各地方・各民族独特のグルメや言葉、風習。中国を訪れ、中国人と直接交流して初めて分かる中国の魅力を1つ残らず日本に伝えていきたい。心からそう思うようになりました。「中国通」への道のりがどれだけ遠く険しいものか分かりませんが、その道のりは私の生きがいとなるに違いありません。

 

人民中国インターネット版 2013年5月2日

 

 

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