現代版の諸葛亮と交友
文=貫井 正
魅力的な諸葛亮の人形をかたわらににっこり |
貫井 正 (ぬくい ただし)1962年12月25日、東京生まれ。1983年9月から2002年7月まで、北京語言大学、北京師範大学大学院、中国社会科学院で学び、帰国後10年を経て、昨年再び中国へ。浙江大学寧波理工学院で日本語教師。准教授待遇・中国社会科学院文学博士。 |
1983年から9年間北京で留学生活を送り、その間に「諸葛亮の前出師表(まえすいしのひょう)」(北京語言大学学士論文)、「諸葛亮の後出師表(ごすいしのひょう)の真偽」(北京師範大学大学院修士論文)、「『三国志演義』の中の諸葛亮イメージ形成史」(中国社会科学院博士論文)など、日本人にも広く親しまれている三国時代の蜀の名宰相・諸葛亮(字は孔明)に関する論文を書きました。中国の大学で古代中国史を学んで以来、皇帝を敬い、信義に厚く、漢民族だけでなく辺境の異民族にまで心を寄せる諸葛孔明という天才的な政治家、戦略家、外交家に深く魅せられたからです。
現代に伝わる孔明の人物像は、必ずしも歴史的事実によるものではありません。後世の人々が描いた理想的な英雄という側面があり、好ましい中国人の姿の集大成と言ってもいいでしょう。私は長く中国社会に住む間に、多くの「ミニ孔明」に出会いました。大学の先生であり、学友であり、近所の店の主人といった人もいました。彼らがちょっとした交際の間に示す気遣いや好意は、孔明の精神を思わせる心地よいものでした。もちろん中国人の考えや行為に違和感を覚える面もあります。たとえば、公の場で発言している人をよそに、隣人との会話を楽しむ姿は日本人と比べて礼義や教養に疎い感じがします。しかし中国人には日本人にはない優れた人間性があります。
今から40年前の1972年9月29日、日本と中国は念願の国交正常化を果たしました。以来、歴代の国家指導者たちが日本訪問の際に、必ず田中角栄元首相や娘の田中真紀子元外相らを訪れるという話は有名です。それは両国の国交正常化のために尽力したパートナーや関係者を常に大切にして忘れない伝統的な精神に裏打ちされた義理と人情を重んじる中国人の国民性を表しています。我々日本人が中国人から学ぶべき面が多くあることを知らなければなりません。同様に日本人には彼らにはない優れた面が多々あります。真の日中友好とは、両国民が互いの長所や欠点を十分に理解しあった上に成立するものではないでしょうか。
私は日本に帰国以来、非常勤の国家公務員、地方公務員、中国語の通訳や翻訳などの仕事に携わってきましたが、日中友好のために本格的に働く場を得ておりませんでした。しかし、日中国交正常化40周年という記念すべき節目の年に、再び中国とご縁があり、河南省・商丘師範学院を経て浙江大学寧波理工学院に日本語教師として赴任してきました。日本語学科に在籍している中国人学生は日本語や日本文化などを一生懸命に学んでいます。彼らの高い学習意欲や能力、熱い気持ちにしっかり応えていきながら、日中両国民の相互理解を深める一助となれるよう、心から願っております。
人民中国インターネット版 2013年3月28日