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高学歴生かし日本で活躍 鋳造部品の精密技術者

静岡県の富士山のたもとにある自動車部品加工工場で、1人の若い技術者が重さ5㌔ほどのエンジン外部鋳造部品を作業台に運び上げた。彼は各種の道具を慣れた手つきで使いこなし、部品を外観から内部まで細かく検査し、磨きをかけ、数分後、検査を終えたこの部品は、箱に詰められた。休憩室で、彼はマスクを外して、「于正丹と申します。この工場の中国人技術者です」と、はにかんだ笑顔で自己紹介をした。

日本のテレビドラマに魅了

于正丹さん(28)は大連工業大学機械学科を卒業した。大学1年の時、日本のアニメ・漫画や電子ゲームを知った。「日本に対する興味はどんどん深まり、その後、人気ドラマ『医龍』に魅了され、いつか日本へ働きに行き、人生経験を積みたいと思うようになりました」

製品チェックをしている于さん(写真提供・于正丹)

2011年3月、于さんはある日本の人材派遣会社の人材募集に応募した。ちょうど東日本大震災直後であったため、試験官は合格者に被災状況を説明し、日本へ行くことのリスクも教えた。「これには少しも動じませんでした。日本はすぐに元気を取り戻すと信じていましたから」と于さん。

ビザ発給待ちの間、同社の研修に参加し、半年間にわたって日本語と日本の企業文化について学び、2012年の春、とうとう日本にやって来た。1カ月の適応訓練を終えた後、静岡県の自動車エンジン部品鋳造の精密加工会社に派遣された。

言葉の不自由は技術でカバー

「この工場は自動車エンジン外部部品の精密加工を行っています。まず鋳物の外観を検査し、鋳ばりやまくれなど鋳造時の痕跡が残っていないかを確認し、計器で部品の穴などのサイズを測り、基準に達しているかをチェックします。不良品は廃棄され、合格品は道具で丁寧に磨きをかけて箱詰めします」と、于さんは自分の仕事を説明する。

毎日昼休みは50分。于さんは普段、宿舎に戻ってあらかじめ準備しておいた昼ご飯を食べる

正社員と待遇は同じで、中国人従業員も毎月20万円の基本給をもらい、残業代は別途支給される。毎朝8時に出勤し、午後5時に退勤だが、週4日は夜8時まで残業しなければならない。残業を減らしてほしいかと聞くと、于さんはあわてて「もっと増えてもいいくらいです。残業が多いということは、景気が良いということで、所得も増えますし」と答えた。

言葉では少し不便を感じるが、大学で工学を学んでいたため、普通の日本人新入社員より速く技術のコツをつかむことができた。「1日100個以上の部品の検査、箱詰めをすることができます。残業した場合には、200個前後にもなります」と彼は言う。

同世代の日本人との交流

作業は、通常3人1組で行われる。中国人技術者1人と日本人従業員2人の組み合わせだ。「日本人は僕とほぼ同じくらいの年齢で、最初は少し距離を感じましたが、すぐに打ち解けました。休憩中は、それぞれの家庭のことに始まり、各地の風土・人情、生活習慣に至るまで、さまざまなおしゃべりをしますが、最も多く出る話題は、日本と中国との違いです」と彼は語る。

年は同じくらいだが、日本人従業員の大部分はすでに結婚している。3人の子どもを持つ人もいるという。彼らは時折、3人の子どもを育てる大変さについて語るけれども、独身の于さんにはそれが少し羨ましい。「ここでは中国人女性と付き合い、結婚するチャンスはとても少ないですから」  会社は中国人技術者のために工場の近くに3階建てのアパートを用意してくれている。于さんはもう一人の中国人技術者と十数平方㍍の部屋を共用している。「暇な時には、よく廊下で富士山を眺めます。心も目も楽しめます。いつか車を買って、日本の各地を巡ってみたいと思います」  于さんはここで2年間働く契約を結んでいる。人材派遣を行っている遼陽国際株式会社の張超社長によると、今まではあまり学歴がない研修生が多かったが、現在では多くの日本企業が、大学卒業程度の学歴をもつ技術者を欲しがっているという。彼らは短期の研修をほどこせば即戦力になるからだ。そして、しばらく経験を積んだ後には、中国の工場へ派遣し、管理や経営を任せることもできる。于さんのような技術者は、将来、広いキャリアアップの可能性があると言えるだろう。

 

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