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「みんなで渡って」も罰金!

 

「赤信号みんな渡れば怖くない」というギャグが流行ったことがありましたが、中国では5月から歩行者が赤信号を無視すると、10元(約160円)の罰金が取られることになりました。

歩行者・自転車用の信号は赤。それでも……

昨秋あたりから「中国式道路横断(中国式過馬路)」という言葉が紙面によく出るようになりました。赤信号無視、斜め横断など死亡交通事故につながる歩行者の行為に反省を迫るもので、各紙は繰り返しキャンペーンを展開しました。  さて、北京で歩行者の道路の横断、特に交差点の渡り方を観察してみると、進行方向の信号が赤でも、左右を見て車はまだ遠い、と判断すると渡り始める人が多いことに気付きます。よく見ると「みんなで渡れば」方式で、誰かが渡り始めると、後について行く人が多いようです。ただ身体能力に個人差がありますから、筆者の場合は、若くて元気いっぱいの女性が赤信号に挑戦していても自重することにしています。

北京の地元紙『新京報』が最近行った、赤信号の場合の行動に関するアンケート調査を見ると、31%が「待つ」、12%が「いつも無視」と答え、半数以上は「たまには無視する」でした。つまり、多くの歩行者が状況次第で赤信号でも、交差点や横断歩道を渡っていることを示しています。また、これから罰金を取られるなら信号無視は止めるという回答は60%以上でしたが、12%の人が「警官がいなければ赤信号無視」でした。

二十数年前の北京市内の信号機は日没とともに黄色の点滅に変わるか、全く消灯していました。車の台数は今とは比較になりませんでしたから、さほど不便はありませんでした。ところが、当時の通勤時間帯の道路は自転車の洪水。信号はきちんと機能していましたし、交差点の真ん中には交通整理のお巡りさんも立っていましたが、指示に従うのは車だけ。

今では、自転車は少数派になり、車が多数派に変わっています。自動車専用道路の開発が進み、ビジネスもレジャーも車で移動するのが普通になり始めています。半面、「車が威張っています」と不平を漏らす人も増えています。狭い生活道路にも車があふれ、住宅街のあちこちが無断駐車場になっているからでしょう。

「中国式道路横断」をなくすためにはどうすればよいか、というアンケートの問いに、半数以上の人が「歩行者が横断しやすいようにすべきだ」と、答えていました。

高齢化が急速に進んでいる中国はあと20年足らずで世界一の高齢社会になります。北京では、日本に比べて、何倍も広い道路を長い長い歩道橋がまたいでいる光景をよく見かけますが、信号無視の歩行者から罰金を取って秩序を守らせるのもひとつの手段でしょうが、「歩行者優先の車社会」を目指すべきでしょうね。 (題字・中野北溟)

 

島影均

1946年北海道旭川市生まれ。

1971年、東京外国語大学卒業後、北海道新聞社に入社。

1989年から3年半、北京駐在記者。

2010年退社後、『人民中国』の日本人専門家として北京で勤務。

 

人民中国インターネット版

 

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