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ド派手な香港犯罪アクション 『風暴』

 

文・写真=井上俊彦

ここ数年、興行収入急上昇の勢いは止まらず、ますます多くの作品が公開され、さまざまな話題が生まれている中国映画です。そこで、このコラムでは地元・北京の人々とともに映画館で作品を鑑賞し、新作や映画界の話題を紹介していきます。同時に、そこで見聞きしたものを通して、北京の人々の生活も感じ取っていければという姿勢で映画館通いをしていきますので、お付き合いいただければ幸いです。

 

国産映画にヒット作が続出する12月興行

このところ国産の大作が立て続けに公開され、いずれもヒットしています。先週末までの時点で、前回ご紹介した『無人区』が2億元、ラウ・チンワンとルイス・クーが麻薬取引組織に挑む『掃毒』が2億1000万元、ヒット武侠映画の続編『四大名捕2』も1億4000万元を突破しています。そして、12日に公開され4日間で1億2000万元を稼ぎ出したのがアンディ・ラウ主演の『風暴』です(数字はいずれも速報で未確定のもの)。

警察官の呂明哲(アンディ・ラウ)は、凶悪で尻尾を見せない曹楠(フー・ジュン)のために、目の前で一般市民を殺害されるという屈辱を味わいます。その時、曹に逃げられるきっかけとなったのが呂の幼馴染で出所したばかりの陶為贏(ラム・カートン)でした。呂は陶を疑いますが陶は事故だと主張します。しかし、恋人の燕冰(ヤオ・チェン)は陶がまた悪に手を染めていることを感じていました。そんな時、曹楠はさらに大がかりな襲撃を実行し、呂のために組織にもぐりこんでいた唐強と娘が犠牲になります。呂は怒りと絶望から、ついに警察官としての一線を超えてしまいます……。

香港映画の悪人はこうでなくちゃ!

このところのヒット作の中では『四大名捕2』と並ぶ3D作品ですが、私は2つの作品に3D技術の進歩を感じました。といっても、技術的にどんどん迫力が増しているだけではありません。3D作品が出始めた当初の「どうだ、すごいだろう!」式のシーンではなく、なかなかすごい迫力だなと感心していて、ふと「あ、そうか3Dだったね」と思い出すという感じです。それほど自然になっているのです。

3DやCGはとても自然になりましたが、その分ストーリーが思い切り不自然、いや思い切り自由になっている印象です(笑)。一般市民を巻き添えにしたり、路上の一般車両を破壊したり、大きなアパートを爆破したりと、香港映画らしく悪人がやりたい放題なのです。ポスターにあった「12月12日、香港を“戦場”にする」のキャッチは大げさではありませんでした。いやいや、これはもう警察対窃盗団の戦いのレベルではなく、軍隊のものかと思われるほどです。

私の隣にいた若い男性は、時々失笑をもらし「おいおい、そこまでやるかよ」というような突っ込みを入れていましたが、決して不満な様子ではなく、相当楽しそうでした。予想を超えたアクションに、あきれるやら圧倒されるやらというところだったのでしょう。

 天井の巨大LEDスクリーンで知られる世貿天階(ザ・プレイス)の広場もすっかりクリスマス気分

大陸部での公開が前提の合作が進み、香港映画は大陸部の比較的厳しい倫理コードに合わせるためいささか迫力を失っている面もあるのではと思っていましたが、この作品はまさに香港映画の面目躍如という迫力です。そして、正義の警察官が次第に追い詰められ、「目には目を」とばかりに冷たく爆発する変化を、アンディ・ラウが好演しています。正義漢を演じることが多いアンディの、目に宿る一線を超えた激情が印象的です。

さて、今週19日にはいよいよフォン・シャオガン(馮小剛)監督の新作『私人訂製』が公開になります。普段はあまり映画を見に行かない同僚もこの作品には強い関心を示していましたので、公開前からかなり幅広く話題になっているようです。果たしてどうなりますか。

北京はこのところ冷え込みも厳しくなり、什刹海や故宮博物院のお堀にあたる筒子河も凍結した 

 

【データ】

風暴(Firestorm)

監督:アラン・ユエン(袁錦鱗)

出演:アンディ・ラウ(劉徳華)、ヤオ・チェン(姚晨)、ラム・カートン(林家棟)、フー・ジュン(胡軍)

時間・ジャンル: 109分/アクション・犯罪

公開日:2013年12月12日

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星美国際影城・世界城店

所在地:北京市朝陽区金匯路8号世界城E座地下1層(世貿天階の北)

電話:010-85907677

アクセス:地下鉄6号線東大橋駅下車、A口を出て東大橋路を南へ進み景華北路を東に入り金匯路を南に行くと左手、徒歩9分

 

プロフィール

1956年生まれ。法政大学社会学部卒業。テレビ情報誌勤務を経てフリーライターに。

1990年代前半から中国語圏の映画やサブカルチャーへの関心を強め、2009年より中国在住。

現在は人民中国雑誌社の日本人専門家。

 

人民中国インターネット版 2013年12月16日

 

 

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