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オンライン決済がブーム 物流の高コスト解決を急げ

 

陳言 コラムニスト、日本産網CEO、日本企業(中国)研究院執行院長。1960年生まれ、1982年南京大学卒。中日経済関係についての記事、著書多数。

中国最大のオンライン決済サービス「支付宝(アリペイ)」は、1月13日、昨年の決済報告書を発表した。7億人以上がアリペイを利用しているため、この報告書から中国における消費市場、具体的に言えば、中国の消費者の支出状況や生活事情などを把握できる。また、この報告書はオンライン経済のモデルチェンジ、社会生活•消費スタイルの転換の考察に新たな窓を開いたとも言える。

ただし、現在、中国のオンライン・ビジネスを著しく制約しているのは、物流システムであり、これをいち早く改善することが急務であろう。

1年間に1万元を超える

昨年、中国のオンライン経済は飛躍的に発展した。アリペイ報告書によると、この1年間に、利用者1人当たりの支出額(オンライン・ショッピング、振り込み、返済、各種料金支払いなどを含む)は約1万元(約17万円)を超え、「万元時代」に足を踏み入れた。

報告書によると、昨年、オンライン支出額ランキングのトップ5に入ったのは、広東省、浙江省、北京市、上海市、江蘇省である。地域別に見れば、昨年のオンライン支出は「東部は飛躍、中西部は台頭」という構造が示されている。沿岸部地域は依然としてオンライン支出の基盤になっているが、東部沿岸部よりも中西部の成長率がはるかに高かった。

過去1年間に、モバイル決済も飛躍的に進展した。報告書によると、昨年、モバイル端末のアリペイ利用者数は、前年同期比547%増加した。

モバイル決済の取引全体に占める割合を分析すれば、最も高いのは辺鄙な地域であることが読み取れる。中でも、地方別に見ると、青海省玉樹チベット族自治州のモバイル決済使用率は38.3%を超え、最も高い。チベット自治区のアリ地域が続き、3番目は青海省の黄南チベット族自治州だった。実際、モバイル決済使用率トップ10はいずれも青海省、チベット自治区、内蒙古自治区などの辺鄙な少数民族地域だった。

しかし、これまでと違って、昨年のモバイル決済はオンライン決済およびオフライン決済をともに本格化し、生活方式の変革を巻き起こした。この1年間に、モバイル端末のアリペイ・ウォレットはオンライン・ショッピング、振り込み、返済、各種料金支払いなどに使われているほか、生活におけるアシスタント的存在として、例えば、コンビニでスナックや軽食を買ったり、タクシー代を支払ったり、映画館でチケットを購入する時にも使用できる。

内陸都市の購買力が爆発

「中国において、昨年の1人当たりオンライン支出額が4万元(約68万円)を超えた県がある」と聞いて、信じることができるだろうか。ところが、浙江省義烏市で実際に起きたのだ。義烏のほかにも、1人当たりオンライン支出額が2万元(約34万円)、3万元(約51万円)を超えた県も数多く存在している。

今回の報告書は、初めてオンライン支出のトップ100県を盛り込んだ。データによると、その100県は主に江蘇省、浙江省、福建省に集中している。中でも、浙江省は36県で最も多い。全国約2800県の中から新疆ウイグル自治区のコルラ市が100県の最後に名を連ねたのは意外だった。

アリペイの紹介によると、その100県の利用者1人当たりのオンライン・ショッピング回数は80回に達し、県民はこれまでにはなかったオンライン・ショッピング•カーニバルを楽しんでいた。

報告書の担当者によると、その100県のインターネット経済に対する認識や強大なオンライン消費能力は、内陸部の3級都市、4級都市におけるアリペイ利用者数が過去1年間に引き続き膨張し続けてきたことを意味するだけでなく、中国における消費の力が、大都市から中小都市に速やかに浸透し、県レベルで内需拡大の潜在力が爆発したことも意味している。

世界平均上回る物流費用

ただし、ここまで順調に発展してきたオンライン支出は、中国の物流の高コストという壁にぶつかっている。

中国の物流コストが高いことは知られているが、商務部(部は日本の省)流通発展局の王選慶副局長が昨年末に商業貿易物流発展会議で明かにした一連の数字は、人々を改めて驚かせた。

王氏は、「商務部のデータによれば、2012年の中国の総物流費用は9兆4000億元(約160兆円)であり、国内総生産(GDP)の18%を占め、世界平均より6・8ポイント高く、米国(8・5%)、日本(8・7%)、ドイツ(8・3%)などの先進国を大幅に上回っているだけでなく、インド(13%)、ブラジル(11・6%)などのBRICS各国よりも明らかに高い」と述べた。また「GDPに占める物流費用の比率は先進国と比べて、輸送費用で1・7倍、保管費用で2・2倍、管理費用で6・9倍高い」と説明した。

王氏は、中国の物流コストが高い原因についても分析している。まず、中国経済の発展段階、産業構成にかかわりがある。現在、中国の主要産業は相変わらず重化学工業の段階にあり、エネルギーや資源のほとんどは西部と北部に分布しているが、加工業、市場の大部分は東部、南部にあり、長距離、低価格、大量の商品輸送が多く、必然的に貨物輸送量および取扱量が高くなる。2009年、中国の単位GDP当たりの貨物輸送量と回転量は、米国の5・1倍、日本の14・3倍、ドイツの16.4倍だった。

また、中国物流業の発展状況とも関係がある。王氏は、「中国物流業は参入ハードルが低く、企業の能力が劣る。中小企業が90%以上を占め、効率が悪い」と指摘した。米国における道路貨物輸送企業のトップ5は、シェアの60%を占めているが、中国のトップ20のシェアは2%未満であり、市場における集中度は低い。中国の道路貨物運送企業の所有車両は平均1・5台であり、わずか1台のみという企業が40%を占めている。物流企業は全体的に小さく、弱く、ばらばらであるため、輸送効率は悪い。

また情報化レベルが低いため、貨物を積載していない空荷トラックが非常に多い。中国で物流が最も盛んな上海地域においても、空荷の比率は37%に達し、先進国の3倍となっている。

「このほか、過剰な高速道路料金の徴収、むやみやたらな罰金などの体制による原因も、物流コストを引き上げている」と、王氏は指摘した。

物流の高コスト問題さえ解決できれば、中国におけるオンライン・ビジネスはさらに発展の余地があり、また中国の物流で日本のシステムが大きく展開していく可能性が見えてくると思われる。

 

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