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朝までぐっすり寝るために

 

張北海=文

人生の3分の1が睡眠時間であり、人間にとって睡眠は、水と食物と同様に不可欠なものである。ある資料では、人間は食物を摂らずに20日間生存でき、水を飲まずに7日間生存できるが、睡眠をとらない場合は5日間しか生存できないという。そこからも、良質な睡眠の健康に対する重要性が十分うかがえるだろう。

しかし、生活のリズムが速まり、残業や夜を徹しての遊びが都会人の日常茶飯事となるにつれ、睡眠不足もよくある問題となっている。深刻な睡眠不足は精神疲労、だるさ、めまい、動悸・息切れなどの症状をもたらし、不眠状態が長く続くと、免疫力の低下につながり、高血圧、糖尿病、肥満症、心臓や脳血管の突発的異常および精神疾患などを誘発し、さらに突然死を起こすこともある。

「朝鮮人参を食すのは5更(夜の時間を計る単位、1更は約2時間)寝るに如かず」としばしば言われる。中国に現存する最古の医学書と言われる『皇帝内経』には、夜半の子の刻(夜11時から深夜1時)は陰と陽が出会い、水と火が調和する時間帯で、「合陰」とも言い、一日の中で陰の気が最も強い時間帯であるため、睡眠をとる最も良い時機であると記されている。夜の11時から3時の間は子丑の刻と呼ばれ、肝臓と胆嚢の経絡が最も活発になり、肝臓と胆嚢が血液を回流させようとする。「横になると血液が回流し、起き上がると血液が供給される」ため、毎晩10時前後に横になり、静かにしていると、夜11時までには寝着くことができ、肝臓と胆嚢が血液の回流を始め、毒素の入った血液がろ過され、新鮮な血液が生産される。このため、この時間に休むと胆嚢結石や肝炎、嚢腫などの病気にならない。この睡眠時機を失うと、細胞の新生が死滅にはるかに遅れをとるため、老衰が早く進行したり、病気になったりする。

安徽省亳州市にある愛迪爾幼稚園で、先生に正しい睡眠姿勢を教えてもらう子どもたち

睡眠障害がある場合、以下のようにすれば改善できる。

仰向けに寝て、手が温まるように両手をこすってから、手のひらでへそを押さえるようにして両手を重ねて置き、男性は時計回りの方向、女性は逆時計回りにマッサージする。しばらくすると、おなかが温まって、次第に睡眠状態に入る。このとき、ぐっすり寝入るまで両手はそのままにしておけばよい。

ベッドに入ってもいらいらしてなかなか寝付けない人に、とても効果がある。一般的に、おなかが温まると自然に眠気を催すようになる。寝付きが悪いとお悩みの方は、しばらく試みてみてはいかがだろうか。

 

メモ 睡眠改善に効果のある食品
 粟 粟でおかゆを作って、寝る前に食べると、快眠を促す効果がある。
 龍眼 寝る前に龍眼茶または龍眼に砂糖を加えて煎じて飲むと、睡眠改善につながる。
 ハスの実 ハスの実を水で煎じ、塩を少し加えて服用する。あるいはハスの実を煮て砂糖を加えて食べる。
 クワの実 クワの実を水で煎じ、その汁を取って、陶器の鍋に入れてトロトロになるまで煮込み、蜂蜜を適量入れて調合して保存する。1回1~2さじを取り、ぬるま湯に溶かして飲む。
 クルミ ウルチ米、クルミ、黒ゴマをとろ火でおかゆ状に煮込み、そのままあるいは砂糖を入れて寝る前に食べる。
 ナツメ 種を取ったナツメを水で煮込み、氷砂糖、阿胶(ロバやウシの皮を煮て作ったにかわ)といっしょにトロトロになるまで煮て、寝る前に1~2さじを食べる。
 蜂蜜 寝る前に蜂蜜5㌘をぬるま湯に溶かして飲む。
 ミルク 寝る前にコップ1杯飲むと、眠気を催す効果があり、特にお年寄りにお薦め。

 

北京軍区総病院の主任理療医師で、20数年にわたって高齢者医療保健活動に従事している。中国国学院大学客員教授、専門家委員、康寿養生専門家。

 1986年から人体の経絡(人体の気血・ツボの筋道)についての研究を始め、経絡による手診、面診、舌診、脈診、眼診、耳診などの漢方診断法、ツボ押し、民間食事療法の真髄を一体にし、短時間で人体の経絡を開き養生・治療効果を出す「張氏経絡管道快速開通法」を確立した。

 

 

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