中国社会科学院日本研究所所長補佐・研究員 張季風氏
日本を参考に住宅難解消
李明艶=聞き手
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張季風氏 1959年8月、吉林省伊通市生まれ。1999年3月、日本の東北大学大学院で経済博士号を取得。現在、中国社会科学院日本研究所所長補佐、研究員 |
中国の都市化について、中国社会科学院日本研究所所長補佐の張季風氏にうかがった。
――現在の中国の都市化水準はどのレベルだとお考えでしょうか。またどのような問題があるでしょうか。
張季風氏 都市化が急速に進んだのは改革開放後です。新中国成立初期に都市化率は7・3%でしたが、60年余を経た昨年には53・73%に達し、中国の社会構造と経済構造に歴史的な変化をもたらしました。
しかし、巨大な成功を収めたと同時に、歴史、体制などのさまざまな要因によって、中国の都市化は依然として、少なからぬ問題点と矛盾に直面しています。その中で、とりわけ突出している点は、都市化の大部分が都市人口の増大、あるいは都市規模の拡大という形で現れ、農民工(出稼ぎ労働者)の市民化には程遠い状態で、まだ達成できていません。
2012年の数字を例に挙げると、都市人口に基づいて計算した都市化率は52・6%でしたが、戸籍人口で計算した都市化率はわずか35・3%でした。両者の間に17・3ポイントの差がありました。これは2億5000万人の農民工が都市と農村の間を揺れ動いていることを示しています。現在、この膨大な人々が都市戸籍を持つ住民と同等の公共の福祉を享受できないということです。
もし中国の都市化率を毎年1ポイントずつ上げて行くと、2020年の都市化率は60%に達し、都市人口は8億人前後に増え、農民工は3億5000万人に増加します。「マイホームに住み楽しく仕事」と言いますが、如何にして彼らのマイホーム問題を解決するかが、すでに都市化の質の良し悪しを測る重要な条件になっています。
現状についてお話すると、都市の地価と家賃が高止まりして下がらず、圧倒的多数の農民工が「マイホームを思いため息をつく」状態で、都市に定住するというのはぜいたくな夢と言わざるを得ません。たとえ、解決方法を考えて行くにしても、そうしたことは各方面に、相対的に劣る都市周辺地帯に暮らすことになります。これは単に彼らに落ち着いた生活をさせないというだけでなく、強烈な階層格差を生み、深刻な社会問題を引き起こします。こうした難問をどのように解決すべきか、隣国日本の経験があるいは参考になるかも知れません。
――日本は都市化の過程でどのような方法でこの難題を解決したのでしょうか。
張 日本の都市化は明治維新の時期に始まり、第2次世界大戦後、特に高度経済成長期に急速に進みました。1955年、都市化率は56%に上昇し、1970年には72・1%に増加し、この15年の間に農業人口の農村から都市への移転を終えました。このように急速でしたので、工業化が都市化の原動力だったことを除いて、都市流入人口の住宅問題を比較的スムーズに解決したことも重要な条件でした。
当時、都市に入ってきた農民はローンで建て売り住宅を買うか、賃貸住宅に住むか選択でき、この点は現在の中国と同じです。ところが中国と違うのは、日本では企業が従業員の住宅問題解決に重要な責任を果たしたことです。住宅を買うか借りるかは別として、企業は正社員に住宅手当を支給し、これが日本の福祉の一部でした。同時に、企業は社員に量的に十分で、多種類の住宅を提供しました。入社するとすぐ「独身寮」があり、結婚すると「社宅」があり、社員は文字通り「マイホームに住み楽しく仕事」状態でした。
企業以外でも、日本は政府の公共資金を利用して「公団住宅」「公営住宅」などの公共住宅を建設しました。「公団住宅」は中間所得者層のための住宅で家賃は市場価格より安く、「公営住宅」は都道府県か市町村が低所得者向けに提供する住宅で、家賃は非常に安く、ただに近いところもあります。規定によって、そこで暮らしているか、仕事をしていて条件に合えば、身分、国籍に関わらず申請できます。私も仙台市で2DKの「市営住宅」を借りていましたが、月額1万円足らずで、もし市内で同じ程度の家を借りると10万円以上でした。
――中国の「経済適用住宅」や「低家賃住宅」は日本の「公団住宅」や「公営住宅」によく似ていますが、日本のどのような点を参考にすべきでしょうか。
張 確かによく似ていますが、違うところは中国は市級政府が中心で、上の省級政府や下の区級政府は全く関与していませんので、住宅の提供数が非常に少なく、都市住民でさえ住宅難ですから、農民工の住宅問題解決にはとてもなりません。そこで、日本のように各級政府が取り組み、政府と民間が協力するなどの多角的な方法で低家賃住宅を建設し、都市に入る農民工の住宅問題を解決するのが上策だと言えるでしょう。
国情、制度の違いがあり、中国は日本の方式をそのまま取り入れるわけには行きませんが、その中から多くの解決方法を求めることができると思います。
人民中国インターネット版 2014年6月30日