観戦と商戦でW杯に参戦
文=島影均
祭りの後の虚脱感―ちょっと大げさですが―に襲われています。33日間にわたってブラジルで開催されたサッカーワールドカップの烈風はただでさえ熱い北京の夏をさらに熱くしました。サッカー音痴の筆者も、中国人ファンの熱気、それ応える新聞各紙の別刷り特集、商魂たくましい便乗セールにあおられて、生まれて初めてサッカーの実況中継を本格的に見ました。
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連日、日本のスポーツ顔負けのW杯情報であふれた北京の地元紙(写真・井上俊彦) |
中国は2002年の日韓W杯に出場して以来、ずっと出ていません。中国版ツイッター「微博」に「負けることが残念だと言うけれど、出ていないのがもっと残念」というのがありましたが、それでも、北京の盛り場は大型テレビをしつらえた露天バーで普段の倍もするビールを飲みながら、夜明けまでフィーバーする若者であふれ返っていたそうです。
24年前のイタリアW杯の際も筆者は北京にいましたが、その当時もファンは多く、急速に普及し始めていたテレビ観戦で盛り上がっていました。当時、最高指導者の鄧小平氏が大のサッカーファンで保養地・河北省北戴河に大型テレビをトラックで運んだといううわさ話に興味を引かれたのを覚えています。
今回も中国は出場していませんでしたから、ファンはどこを応援するかと聞くと、「アジアのチームですよ。日本と韓国」と答える人が想像以上に多いのに感激しました。微博に「政治とサッカーは分けるべきだ。日本を応援しないことが愛国ではない」というのがありました。 また「『加油、日本(頑張れ、日本)』は日本語で何と言ったらいいの?」という質問にはさまざまな日本語、あるいは日本語もどきのアンサーが飛び交っていました。「頑張れ」の発音を「敢巴雷(カンパレイ)」と中国語の似た音で紹介したのもあり、「頑張って下さい」を「ganbadeiegudasayi」と音訳したのもありで、微笑ましく思いました。
ところで、W杯公式ボールは広東省深圳産でしたし、現地スタジアムや各国で販売されたユニホームやストラップなどのW杯グッズも中国産が圧倒的に多かったようです。ブラジルでは、W杯、五輪施設に絡む公共事業に中国企業がどんどん進出しているようです。 さて、サッカー強化論も盛んです。「各地のコミュニティーにサッカーをできる施設を作るべきだ」「ドイツが優勝したのは計画的に選手を育成してきたからだ」と新聞の社説で論じていましたし、微信には「日本に見習え」といううれしい声もありました。
決勝戦翌日の朝刊に「難忘今夏」というのがありました。筆者にとっても延長戦後半8分のドイツの劇的なシュートも見ましたし、サッカー王国ブラジルの1対7の惨敗も脳裏に焼き付いています。
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W杯セールは集客が肝心。大きなサッカーボールが人目を引く北京のショッピングモール |
人民中国インターネット版 2014年8月