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AKB48作曲家イン北京

 

文=島影均

『風は吹いている』という曲があり、AKB48 というグループが歌っていることも全く知りませんでした。そんな時代遅れの筆者の取材要請に応じて、北京秋天の夕暮れ時に、作曲家の河原嶺旭{みねあき}さん(25)が『人民中国』雑誌社までやって来てくれました。

7月に北京で開かれたM.Y.Comic遊園会には28000人のアニメファンが集合。「幻想神域」のテーマソングを歌っている永江理奈さん(中央)を囲んで(写真提供・河原さん)

『風は吹いている』を歌っているAKB48はピンクレディー、SPEED、モーニング娘についで、1000万枚を突破した史上4番目の女性グループだそうです。河原さんの曲は2000曲を超える応募作の中から選ばれました。

細身、細面で背は高からず低からず、カジュアルで決めたファッションの彼は東京の地下鉄に乗れば、1両に5、6人は間違いなくいそうな青年です。

「今、中国のオンラインゲーム『幻想神域』に日本語の主題曲をつける仕事をしているんですよ」「えっ、このご時勢に?」「ええ、ヒョンなことから頼まれまして…。曲だけでなく日本語の歌詞も書きました」。

彼はAKB48が2011年のNHK紅白歌合戦で披露した同年3月に起きた東日本大震災の被災地に向けた復興応援ソング「風は吹いている」の作曲家として、ブレークし、アニメやゲームの主題曲でも超売れっ子の若手作曲家です。

その彼が昨年の初夏にサラリーマン勤めをしていた音楽関連の会社を辞めて、フリーになって北京にやって来ました。「ところでなぜ北京に?」「ノリで来てしまいました」。日本の音楽産業が生き残るためにはグローバル化だと思い、どこか外国へ行ってみようと思ったのがきっかけだそうです。「それで何で中国ですか?」「たまたま北京で音楽関係の仕事をしている日本人の先輩を紹介され、遊びに来ているうちに、王府井の近くの四合院を安く貸してれるという中国人が現れまして…」

北京暮らしを始めて、胡同(フートン、路地)で中国象棋をしているおじさんたちと知り合いになり、初挑戦で勝ってしまったり、近所のおばさんと仲良くなったりしているうちに、「中国語が話せないと不便だ」と思い、午前中3時間の中国語授業を受けることにしました。まだ半年足らずですが、中国語のレベルはなかなかなもので、『人民中国』の女性記者にアニメ内容などを中国語で5分以上説明できる実力でした。

「今は日中関係の雰囲気は最悪と言われていますが?」と尋ねると、変なことを聞く人だという顔つきで「日本より優しくしてくれますよ」。北京で喫茶店やゲームセンターなどの若者が集まる所に行くと「風が吹いている」がBGMとして流れているようですので作曲家として楽しいのでしょう。

『人民中国』の女性記者にパソコンの画面を見せながら説明する河原さん

北京に長居する予定ではなかったそうですが、次の一手で北京駐在の日本人女性を口説き落としてゴールイン。「金のわらじを履いて探した」かどうかは聞きそびれましたが…。

口コミで「あの河原が北京に来ているそうだ」という情報が伝わると、アニメのコスプレイベントやトークショーに呼ばれたり、彼が日本の声優を呼んだり、ますます「ノリノリ」の状態になっているようです。

 

人民中国インターネット版 2014年10月

 

 

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