中国で学んだ出会いと物の大切さ
内蒙古にて |
岩田惠実(いわた えみ)
1992年生まれ。早稲田大学社会科学部在学中。2013年9月より北京大学国際関係学院に留学。
高校時代のオーストラリア留学がきっかけで、私は中国に興味を持つようになりました。現地での中国人女子留学生との出会いが、初めてじかに「中国」と接した瞬間でした。当時は日中間の食品問題が深刻で、毎日のニュースで報道されている中国が、まさに私の中国に対するイメージでした。でも、この中国人学生との出会いによって、私は中国の新たな一面を知りました。一番驚いたのは、日本のアニメや漫画にとても詳しいことです。好きなアニメや漫画について話しているうちに互いの距離がぐっと近くなりました。当時中国語は話せませんでしたが、筆談で交流ができました。オーストラリアという全く異なる文化圏で感じたのは、日本と中国の文化的な結びつきの強さでした。
それ以来、中国に興味を持ち、北京大学への留学を決めました。留学のテーマは報道されていない「中国」を見ることです。
冬休みに、湖南省の山奥にあるハンセン病の隔離村でボランティアをしました。すでに病気は治っているにもかかわらず、差別を受け、社会に戻れない人々がこの村に住んでいます。この村は、小さな町から3時間ほど山道を歩いたところにあります。大都会の北京から来た私は、草木も枯れ、ただコンクリートの家が立ち並ぶこの村のモノクロの世界に戸惑いました。しかしこの村で、殺風景で冷たい村の佇まいとは対照的な、現地に住む人々の心の温かさに触れました。お菓子をたくさん用意して学生を家に迎えてくれたり、現地では非常に貴重な肉を調理して、温かい食事を作ってくれたりしました。彼らの役に立ちたいと思い、この村を訪れたのですが、むしろこちらの方が彼らに助けられ、多くのことを教わりました。彼らは「人の縁」の大切さを教えてくれました。彼らには家族から見放されたり、周りから差別を受けたりした悲しい過去があります。人に拒絶されることの辛さを知っているからこそ、彼らは私たちを優しく受け入れ、一つひとつの出会いを大事にしているのだと思います。
ある日、村人の家で食事の支度を手伝っていた時に、卵を床に落として割ってしまいました。彼は「没事、没事(大丈夫、大丈夫)」と言ってくれましたが、非常に大事なものを落としてしまったという気持ちになりました。一つの卵にここまで心が痛むのは、彼らが経済的に裕福でない上に、自分で買い物に行くことができず、月に数回の配達に頼っているからで、この村ではすべてのものが貴重だからです。
北京では多くの店が立ち並び、大勢の人々が行き交い、人と物であふれています。その中で、一つひとつの出会いや物にありがたさを感じることはとても少ないと思います。私はこの経験を通して、よく報道されるGDP世界2位の豊かな中国だけではなく、つづまやかで心の豊かな中国を見ました。
人民中国インターネット版 2015年1月