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お茶じゃない「お茶」?

文=ゆうこ イラスト=amei 監修=徐光

蒸し暑い夏がやってくると、茶館に来て涼を取る人が多くなります。おしゃれな上海っ子たちは、花を使ったお茶にちょっとしたお茶菓子をつまみながら、友だちとのんびりした午後を過ごします。

ふと隣の人が飲んでいるものを見てみると、透明なガラスのコップの中に菊の花がいくつか漂っています。色は透き通った黄金色。なんだかすごくおいしそう! というわけで、私も店員さんに同じ飲み物を注文したのでした。店員さん曰く、「菊花茶というお茶ですよ」。しばらくして店員さんが黄山貢菊という名前の菊花茶を持ってきてくれました。このお茶は、安徽省の有名な観光地、黄山でつくられるお茶で、上海から車でも、列車でも、そして飛行機でも行くことができます。車だと九時間ほどです。「貢菊」は、海抜の高いところに生える菊の一種で、明代に献上されたことが名前の由来となっています。このことからもおわかりいただけるように、黄山貢菊はとっても有名なお茶なんです。

「葉っぱのお茶だけじゃなくて、花だけを使ったお茶もあるし、花と葉っぱを合わせたお茶もあるんですね。う~ん、中国茶って本当に奥が深い……」と感嘆する私。とそこへ「実は花を使ったお茶はお茶じゃないんですよ。葉っぱを使ったものだってお茶とは言い切れないものもあるし、花と葉っぱを合わせたものも、一概にお茶とは言えないんですよ」という店員さんのお言葉。

「え? だって菊花茶っていうお茶じゃないんですか?!」と驚く私に、店員さんは笑いながら、「茶という文字が入っていますが、お茶じゃないんです」と教えてくれました。

完全にわからなくなっている私に、店員さんは「お茶」の定義を教えてくれました。中国で「茶」という文字を冠する飲み物はたくさんあって、その数は4000種以上にも上ると言われています。しかし実は、これらすべてが正真正銘の「お茶」というわけじゃないんです。

茶樹はツバキ科ツバキ属(学名はメリア・シネンシス)の常緑の灌木または高木です。茶樹の葉っぱには、茶ポリフェノールと呼ばれる成分が含まれており、私たちがお茶を飲んで感じるあの渋味は、この茶ポリフェノールに由来します。これはお茶特有の成分といえるので、茶ポリフェノールが含まれているか否かで、お茶であるかそうでないかの判断をします。

ちょっと抽象的でわかりにくかったでしょうか。例をあげて説明してみましょう。以前皆さんに紹介した西湖龍井や安吉白茶などは、カメリア・シネンシスの葉っぱからつくられます。この葉っぱの中には茶ポリフェノールが含まれているので、この二つはお茶というわけです。菊花茶は、キク科に属す菊の花からつくられるので、茶ポリフェノールは含まれていません。なので、お茶じゃないんです。他にも、日本人の間でも比較的よく知られている苦丁茶というお茶があります。飲むとすごく苦くて、薬みたいなお茶です。苦丁茶に使われる葉っぱは、冬青(ソヨゴ)と呼ばれる植物からつくられます。冬青はモチノキ科に属する植物で、茶ポリフェノールは含まれていません。なので、苦丁茶もお茶じゃありません。

では、ジャスミン茶はどうなんでしょう? ジャスミン茶は、ジャスミンと緑茶からつくられています。ジャスミンは花ですから茶葉ではありませんよね。でも、合わせる緑茶には茶ポリフェノールが含まれています。なので、ジャスミン茶はお茶の仲間に入るのです。

 

菊花茶は、草本茶という種類に分類されます。日本でも女性に人気のある、ハーブティーと同じ部類です。草本茶は、薬草にお湯を注ぐわけですが、それは、乾燥させた新鮮な花であったり、葉っぱ、種、根っこの部分などだったりします。これらは、ほとんどカメリア・シネンシス以外の植物を使ってつくられるんですよ。

と、ここまで、お茶じゃないと言ってはきましたが、お茶じゃなくてもあなどれないんです。菊花茶には、体内の熱を取り除く作用がありますので、炎天下、上海万博見学に挑まれた方などはぜひ茶館で菊花茶をどうぞ。熱射病予防にもってこいです。また、古来より中国では菊を薬の材料として使っていて、目にいいという効能があるとされています。なので、一日中パソコンに向かっているOLの方は、毎日菊花茶を飲むと目の保養になりますよ。また、起きた時に目の下にクマを発見してしまった時には、コットンを菊花茶で湿らせ、目の下にあててパックしてみて下さい。クマが緩和されますよ、きっと。

菊花茶以外にも、中国の茶館では、美容にいい薔薇茶や風邪を予防してくれる生姜茶など“茶外の茶”をよく見かけます。ちなみに生姜茶は体を温める効果が高いため、冷え性の女性におすすめです。これらは、お茶ではありませんが、中国茶ファミリーの中では、とっても重要な役割を果たしているといえるでしょう。

お勧めのお茶
菊花茶
重要産地 安徽省など
分  類 草本茶類
参考価格 500グラム約50~500元

 

人民中国インターネット版 2010年7月21日

 

 

 

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