コレクションに見る追憶のEXPO
高鑫=文
一八五一年から二〇一〇年までの間に、万博は純粋な商品品評会である「万国産業製作品大博覧会」から、テーマを持ち人々に世界文明と精神文明の交わる舞台を提供するものへと変化してきた。万博の発展は世界の発展を記録してきており、過去の万博の主要な工業成果の展示品、記念バッジ、表彰メダル、切手、ポスターなど、かつての万博記念品はすでに単なる記念品ではなく、万博の歴史の発展の貴重な保存物になっている。
万博表彰メダル
一八五一年の第一回万博から最後の表彰のある万博が開催された一九五八年まで、万博表彰メダルは一区切りごとに万博の歴史を記録している。同時に当時の社会や政治、経済、文化の縮図でもある。毎回の表彰メダルは当時の各国トップのデザイナーがデザインしたもので、国家造幣局が鋳造し、メダルに大きな芸術的価値を持たせている。ほかのバッジなどとは違い、メダルには受賞者の名前が刻印されており、どのメダルも一点ものと言え、また逸品である。現在に至って、歴代万博の受賞メダルは世界のコレクターの関心と争奪の対象になっているのである。
|
万博記念バッジ
受賞者に与えられるメダル以外に、歴代万博で頒布された記念バッジ類があり、一枚一枚が重要な意義と価値を持っている。例えば、一八九三年万博の記念通用コインは米国造幣史上初の記念硬貨だった。その年はコロンブスのアメリカ大陸発見四百周年に当たっており、コインにはコロンブスと彼の帆船がデザインされている。一九〇〇年パリ万博の記念バッジは、表側は女神とセーヌ川の景色がデザインされ、裏側にはたいまつと月桂樹の枝を掲げる一対の天使が、パリの上空を飛んでいる図案となっている。この記念バッジは、万博とオリンピックの受賞メダルだった。万博とオリンピックに参加した人々を表彰するため、当時すべての参加者がこのメダルを一枚もらえたのだ。オリンピック、万博が完全一体になっていたのである。
万博記念切手
一八九三年五月一日~十月三十日、米国で行われた「シカゴ・コロンブス記念万博」は、また一組十六枚の記念切手セットを発行した。図案はスペインとイタリアの博物館収蔵の名画で、この切手セットは世界史上初の万博記念切手と考えられている。この切手の発売からすでに百年が経過しており、未使用セットで現存するものは極めて少なく、完全なコレクションには数万ドルの値がついている。一九〇四年米国で開催されたセントルイス万博では、一組五枚の記念切手が発行された。……その後、歴代万博では基本的に毎回万博記念切手が発行されてきた。例えば、一九九九年四月二十七日、ドイツでは「二〇〇〇年ハノーバー万博」記念切手が発行された。この切手にはスペースシャトル、高速列車、大型飛行機、緑の葉、絵を描く手などがデザインされている。二〇〇五年、日本の愛知万博では一組二枚の切手が発行されたが、地球を背景にすでに絶滅したマンモスが描かれていた。
入場チケット
万博のさまざまな記念品以外に、一般の入場者が使用する入場チケットも歴代万博の素晴らしい記念品になっている。全体を総合して万博を見ると、入場チケットもデザイナーの創意が盛り込まれたものであり、少なからぬハイテク・エレメントが盛り込まれてもいる。例えば、一九〇〇年という世紀の移り変わりの時期に、シャン・ド・マルス広場を開場に行われたパリ万博の古い入場チケットを見ると、それは少しだけ現代の切手に似ている。デザインを見ると、一人の花束を抱いた少女が陽光のもとまばゆいばかりのほほ笑みを見せている。一九三九年ニューヨーク万博のテーマは「明日の世界の建設と平和」で、入場チケットには八組の、当時の社会の姿と未来に対し想像を巡らせた情景が描かれている。二〇〇五年の愛知万博では、初めて入場チケットのなかにICチップが組み込まれ、表面には「モリゾー」と「キッコロ」が描かれた。〇・四ミリのICチップが偽造を防ぐとともに、電子メールを利用してユーザーの携帯電話にイベント情報などを送信することができるようになっていた。
万博パスポートとスタンプ
万博パスポートは一九六七年のカナダ・モントリオール万博で誕生し、初期には入場チケットの機能も兼ね備えていた。後に万博パスポートの入場チケット機能は分離され、各パビリオンの万博記念スタンプを収集する専門手帳となり、その後の万博では毎回広く人気を集めた。
それ以来、各パビリオンのスタンプを集めるのが万博の伝統となった。慣例として、各参加国と国際機構はそれぞれ独特の万博記念スタンプを用意し、万博パスポートを持参した観客に「入国スタンプ」を押し、観客の万博に訪れた足跡を真実に記録している。観客が収集した訪れたパビリオンの美しいスタンプは、万博と観客の素晴らしい相互作用の実現を表している。毎回の万博で、各国のパビリオンのデザインはそれぞれに特色を持ち、観客はこれらのスタンプの収集を通じて、各国の文化の神髄を体験することができるのだ。
万博記念品
歴代万博において、主催者及び各国パビリオンでは、ほとんどが当時として国家最高の工芸水準を持つ万博記念観光記念品を用意してきた。数が多いので、ここで一つひとつ列挙するわけにはいかないが、中国でも有名な万博コレクターのコレクションのなかに、一部を垣間見ることができる。
米国華人のコレクター喬文安氏が上海万博に寄付した「一九〇一年米国シアトル市開催・アラスカ‐ユーコン‐太平洋博覧会の絹織物記念品」は、長さ四十一センチ、幅三七・五センチの絹のハンカチである。ハンカチには当時の博覧会の情景と人物がデザインされている。特に絵柄の周囲には参加五十一カ国の国旗が配置され、そのなかには当時の清朝政府を代表する「龍紋旌旗」が含まれている。これは、中国が世界博覧会に参加していたという有力な物証である。絹の記念品は歴代万博記念品のなかでも数が少なく、保存価値の高いものである。
コレクターの蒋世瑋氏が収蔵する記念品は豊富で興味深い。蒋氏はメディアの取材に答えて「私のコレクションのなかには、多くの皮ベルトのバックル、大皿、花瓶などの実用品があります。みな当時の工芸の最高水準のものです」と話している。例えば、彼が収蔵するグラス・セットとミルク・ポットは、一八九三年の万博記念品である。どのグラスも精巧で美しいが、当時としては最も不思議で興味深いのが、万博に行ってこのグラスを買った人物が分かる点である。なんと、その人物はその場で自分の名前をグラスの一面に金色の文字で刻印させることができたのである。このグラスは当時のガラス産業の最高水準を表すもので、蒋氏は「工芸水準を代表している一方、実用的価値もあります。一般大衆は当然こうしたものが大好きです」と話している。
人民中国インターネット版 2010年9月17日