プーアル茶でやせられる?
文=ゆうこ イラスト=amei 監修=徐光
蒸し暑かった夏も終わって、天高くさわやかな季節、秋の到来です。秋といえば、食欲の秋! 上海のグルメを味わう季節でもあります。毎日おいしいものに舌鼓を打っていた私ですが、ふとお腹のあたりについてきた脂肪が気になってきました。プーアル(普洱)茶といえばダイエット効果あり、これは、やせたい女性の間では、もう常識。というわけで、今日は本場中国のプーアル茶を味わうべくいつもの茶館にやって来ました。
「ゆうこさん、ついてますよ! ちょうど高級プーアル茶が届いたとこなんです」と言って店員さんは茶餅(円盤状に成型したプーアル茶のこと)が七つ入った竹のかごを持ってきてくれました。
「味が濃厚なものほど、ダイエット効果が高いんですよね」と早く飲みたくて仕方のない私。
私の待ちきれない様子を見た店員さんは、そのうちの一つをやおら取りだすと、小さなペンチのような道具を使って挟み割り、紫砂壺でお茶を淹れてくれました。ガラスの器に移されたお茶は、瑪瑙のような美しいつやのある赤色で、思わずうっとり。
「すごくきれい……」ため息がもれてしまいました。しかし、ん? 何かが違うような気がします。「……確かプーアル茶ってもっと黒いか褐色に近い色ですよね。このお茶、色はすごくきれいだけど、もしかしてダイエット効果が低いんじゃないでしょうか」と聞いてみました。
すると店員さんは「ゆうこさんがおっしゃっているのはプーアルの『熟茶』のことですね。あれは人工的につくられたもので、このプーアルの『生茶』には及びません。大切なお客様にそんなお茶はお出しできませんよ」とのこと。
日本では、プーアル茶に「熟茶」と「生茶」があるなんて聞いたことありません。プーアル茶自体はとっても有名ですが、まだまだ知らないことだらけ。やっぱり店員さんに色々教えてもらわなきゃいけないみたいですね。
まずは名前の由来から。漢字では「普洱」と書くプーアルとは地名で、現在でも雲南省普洱市にその名前が残っています。雲南で茶の栽培が始まったのは紀元前からと言われていますが、「普洱茶」は明代の記録に初めて登場します。
では、普洱という所で作られたお茶だから普洱茶と呼ばれたのでしょうか。実はちょっと違うのです。当時、雲南で作られていたお茶は、普洱を通って、北京やその他の地方に運ばれており、普洱は、雲南で生産されるお茶の重要な集散地でした。商売をするにあたって商標は欠かせないもの。雲南で生産されるお茶の名を広めるため、商人たちは普洱の名を取って「普洱茶」(プーアル茶)と名付けたのでした。こうして今では世界的にも有名なプーアル茶が誕生したのです。実は、普洱では茶葉の生産は行われておらず、茶樹の栽培や茶葉の生産は、現在のシーサンパンナ(西双版納)や大理といった辺りで行われていました。
さて、次は「熟茶」と「生茶」のお話。以前、皆さんに「鮮度は緑茶の命」というお話をしたのを覚えていますか。でも、プーアル茶はまるっきり逆で、古ければ古いほどいいお茶なのです。どうしてなんでしょう。
プーアル茶はポリフェノールが一番多く含まれているお茶です。しかし、このポリフェノールは、お茶の苦味成分ですので、どのようにしてポリフェノールを減らして、まろやかな味にするかがカギになります。この過程は、人工的にではなく自然にまかされますので、とても長い時間が必要になるんです。「おじいちゃんが作ったお茶は、孫の代になって初めて売ることができる」という言葉があるそうですが、これはつまり、おいしく飲めるようになるまで、少なくとも数十年はかかるということです。これが「生茶」です。
でも、そんなに長い時間待たなければいけないとあっては、大口の交易には向きませんし、ニーズを満たすこともできません。そこで、雲南の製茶工場では、人工的にポリフェノールを減らす工程が考え出され、速度を大幅に短縮することに成功します。こうして作られたお茶が「熟茶」です。でも、これは1973年のことで、千年以上の歴史がある「生茶」に比べると、「熟茶」は、まだまだお尻の青い若造といった感じ。また、歴史の浅さだけではなく、十数年かけてゆっくりゆっくりと成分が分解して出来上がったプーアル茶の方が、人工的に促成されたプーアル茶よりも価値があることは自明の理ですよね。
さて、お待ちかねのプーアル茶のダイエット効果についてのお話です。「プーアル茶にはダイエット効果がある」。実はこれ、ホントでもあるしウソでもあるんです。まず「ダイエット効果の原理」から説明しましょう。人が太るのは、体内に脂肪が吸収されすぎたため。脂肪は、消化器内の酵素によって分解され、体内に吸収されます。ポリフェノールには、この酵素の働きを阻止する役割があり、体内に吸収される脂肪の量を減らすことができるのです。
ということは、プーアル茶のいわゆるダイエット効果というのは、実は「脂肪の増加」を阻止または緩めてくれる働きがあるということなのです。なので、太った人がプーアル茶を飲んでも、それ以上太らないというだけで、やせるわけではないのです。やっぱりダイエットには科学的な根拠、つまり節食や運動にも心がけなくちゃいけないわけで、お茶だけに頼っちゃダメってことですね。
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七子餅茶 |
主要産地:雲南省 | |
分類:プーアル茶類 | |
参考価格:1つ200元~800元 |
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