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日常で感じる美意識の変遷

2022-08-30 11:35:00 【关闭】 【打印】

植野友和=文 

中国の人々は派手好み? 

かつて日本で働いていた頃、懇意にしていた中国系企業の代表から贈り物をいただくことがしばしばあった。福建省出身のその方は日本生活が長いせいか、手渡す時に「つまらないものですが」といった謙遜の言葉を添えてくるのだが、実際にはつまらないものどころかいかにも高そうな箱に入っていて、受け取っていいものかどうか不安になったものだ。もっとも箱を開けてみると、入れ物が豪華な割に、中身はごく普通の手土産といったもの。「なぜ月餅を6個贈るのに、こんなにも派手な梱包が必要なのだろうか?」と当時は不思議に思ったが、それが中国では珍しくないことであると後に知り、今では気にならなくなった。 

「中国では一般的に派手で大きいものほど好まれる。商品の色は赤や金を多めに使っておけば間違いない」。これは長年中国ビジネスに携わる先輩が、かつて自分に言った言葉だ。確かにこの国では「目立ってナンボ」という意識が強い上、あらゆる事象がダイナミックさを備えている。 

全面が電飾で覆われた高層ビル群、新年を盛大に祝う花火、空港や博物館、モニュメントといった驚くべき巨大建築物……いずれも日本人の感覚からすると過剰とすら思える大きさだが、そこに中国ならではの魅力があるのもまた事実。万里の長城や故宮といった世界遺産から上海の摩天楼や北京大興国際空港などの近代的な建造物まで、いずれも中国ならではのスケールの大きな美しさを持っている。結局のところ、広大な国土に暮らす中国の人々の好みがわれわれ島国日本と異なるのはある意味当然で、どちらの審美眼が素晴らしいかという話ではないのである。 

  

多様化し洗練された中国の美 

ところが近年、筆者はそのような「重厚長大」を良しとする中国の傾向に明らかな変化を感じている。もっと言えば、人々の美意識が磨かれ、多様化しているように思われるのである。それを最も象徴するのが、今年2月に行われた北京冬季オリンピックの開会式だ。一輪の花を生けるかのようにともされた聖火は、「大きいことはいいことだ」といった感覚とは無縁の演出であり、世界に通用する普遍的な美しさを持つものだった。また、中国では最近、さまざまなアートスポットで売られている「文创产品」、すなわち文化クリエーティブ製品が人気を集めており、それらの多くは精緻な美的センスに満ちている。「神は細部に宿る」という言葉の通り、アクセサリーやオブジェなど、ちょっとした小物のデザインに中華文化の美が凝縮されているのである。 

  

河南省博物院が発売している考古学をテーマとしたブラインドボックス「唐宮小姐姐」のフィギュア(東方IC) 

自分が感じる中国の美的感覚の変化は他にもある。まず、キャラクターデザインについて言えば、かつて中国発の「萌えキャラ」「ゆるキャラ」は残念な感じのするものが多く、好意的に見ても「ダサかわいい」といった印象だったが、今では他国に見劣りしなくなった。直近で話題になった冬季五輪の氷墩墩(ビン・ドゥンドゥン)と雪容融(シュエ・ロンロン)がその代表格だが、他にも百貨店で売られている中国産のキャラクター商品やローカル企業のマスコットなど、いずれのキャラクターからも「卡哇伊(かわいい)」が感じられる。お世辞抜きに日本の若い女性にも受けそうだと思えるのである。 

さらに、人々のファッションセンスが大きく変わった。10年前、初めて中国を訪れた際には「なぜその色で髪を染めようと思ったのか」と思わざるを得ない人や、大阪のおばちゃんも顔負けの原色ファッションで町をする方にしょっちゅう出会った。広東省を旅行していた際に「杀马特」と呼ばれる珍妙なファッションの若者を見掛け、思わず足早に立ち去ってしまったこともある。しかし現在、北京や上海などの大都市で見掛ける若者の着こなしは、実に洗練されている。同僚の女の子に言わせると、やはり日本とはセンスが大きく違うそうだが、少なくとも中年男である自分には区別がつかない。おしゃれになった中国の若者たちを見て、筆者は思わず目を細めてしまうのである。 

  

世界とつながることで意識は変わる 

では、なぜこのような美意識の変化が起きたのか。これはあくまで推測だが、中国が世界各国と盛んに人的・文化的交流を行い、海外に向けて大きく門戸を開いていることが大きいのではあるまいか。日本では一般的に、中国のことを一種の閉じられた世界と捉える向きがある。実際には逆で、中国の人々は世界のさまざまな文化を積極的に包摂しようとする意識が強く、同時に自分たちの文化を世界に発信する力を持っている。 

互いに良い面を学び合う中で、中国の美的センスは独自の良さを保ちつつ、世界各国の人々の審美眼にかなうものへと進化している。つまるところ中国における美意識の変遷は、この国が世界と密接につながっており、グローバル化を推し進めている証しと言えるかもしれない。 

発展のスピードが速い中国で、10年後、20年後にどのような流行が生まれ、人々の美的センスがいかなる変化を遂げているか。経済やテクノロジーなどに注目が集まりがちな中国だが、ぜひ日本の皆さまにおかれては、この国の豊かな文化とその進化にも注目していただきたいと思う次第である。 

 

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